皐月   木漏れ日

文字数 779文字

「舞、廊下行かない?」

昼休みを告げるチャイムが

教室に響き渡ると

間を開けずに

ワンレンボブの女子が

私の席の横に現れた

「行きますか麻都佳」

相づちを打った私は背伸びした

「ったく、こんな数式習ったって、この先役に立つとは思えないんだけど」

「言えてる」

ノートをしまいながら愚痴る私の机を

麻都佳が両の小指で

小刻みに音を鳴らす

他のクラスメイトも

各々の仲間の元へ集まり

私語が入り乱れ始めた



「北里、もう俺らの名前覚えてくれた?」

二つ隣りの机に乗っかりながら

グループ同士で会話してた

円らな瞳の短髪男子が

突然話しかけてきた

「バスケ部の西島くんでしょ」

「栗澤は知ってるよな俺の事」



本命はそっちでしょ……



私はそっぽを向きながら

小声で呟いた

「いつも、梅おにぎりを買ってくれる常連客の西島 剛志様でしょ、これで満足かしら?」

名前の部分を

わざとらしくゆっくり言いながら

麻都佳が歩き出した



「おっ! 下の名前知ってんだ」

「頑張ってね」

麻都佳の後を追う私は

笑顔の西島にエールを送り

手を振ったが

彼は何の事かわからず

困惑した表情を浮かべていた



麻都佳の制服の着こなしは

Yシャツの襟首を緩め

スカートは私より短く

紺のハイソックスを身に付けていた

制服越しから見ても

スタイルがいいのが分かる

男子が彼女にしたがりそうなタイプのひとつだ

現に

廊下に出てから彼女に話しかけてくる男子が

三人もいた

彼女と友達になってから

一週間くらい経つが

周囲がやたら騒がしく感じられるようになった

意外にも私に話しかけてくる男子もいたが

どうしても

麻都佳と比較されてるようで

素直に喜べない



「麻都佳って、バイトしたお金何に使うの?」

廊下窓に寄りかかりながら私は尋ねた

「まだ、お給料貰ってないけど、原付が欲しいの」

「バイクって、もう乗れる年齢だっけ?」

「来月、誕生日だからさ、一応クリアなんだけど、けっこう高いのよね」

「なんか凄いね、麻都佳ってさ」

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登場人物紹介

北里 舞 


本作の主人公  

地方住宅街に越してきた 

普通の高校一年だが 

自分の感受性を大事にしている


新田 俊 


舞が買い物帰りに旧住宅街で遭遇する  

バスケをこよなく愛する同級生  

クラスの女子にそれなりにモテる

栗澤   麻都佳 


学校近くのコンビニでバイトする 

舞の同級生にして親友


月成 


麻都佳経由で知り合う事になる

舞の宿敵の同級生 

可愛らしい外見の男子で 

女装してもバレない

織原   香月 


秋冬編から登場 

舞の中学時代の親友だった 

同じ高校に通うも...... 


常磐     景織子 


秋冬編から登場 

香月の親友の美人 

人とあまり関わりたがらない

柏木 

 

どうも景織子が好きらしい別クラス男子


基宏 


舞の中学生時代の思い出に 

出てくる男子

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