皐月 木漏れ日
文字数 807文字
「あの、いちゃついてるところ悪いんだけどさ新田」
私はぎょっとして
掠れ声のする方に顔を向けた
ベンチ横の幹の前で
規則正しく直立している男子の存在に
今の今まで気が付かなかった
おそらく
一部始終見られていただろう
私らより一回り背が高く
枯れ木のように痩せていた
顔も細長で
肌が青白く
垂れ目にはうっすら隈ができていた
猫背も手伝って
見てるだけで
身を案じてしまいたくなる
「ちゃんと、ご飯食べてるの? うちのクラスだっけ?」
なんとか話を逸らそうと
初対面でありながらも私は懸命に
話題を探し話しかけた
思い出すだけで
恥ずかしいし
それを第三者に見られてたとなれば
この場からもう逃げ出したくなる
「ああ、すいません豪田先輩」
「えっ……先輩?」
「そうだよ北里、バスケ部のキャプテンで、中学の時からお世話になってる」
「キャプテン!?」
私は耳を疑った
「新田の彼女?」
私と彼は大袈裟に首を振った
「俺、先に行くわ、今日はシュートの練習付き合ってくれてありがとな新田」
豪田先輩は
うつむきながらよたよたと
私の横を素通りした
同学年だと勘違いしたせいで
気まずい空気だった
「ああ、そうだ、やっぱバスケ部には入らないのか?」
先輩が唐突に振り返り
彼の目を鋭く見つめる
「いえ、自分は……」
「あの最後のシュートの事は気にするな、誰も責めちゃいない、ちょっとクヨクヨし過ぎだぞ」
豪田先輩の表情が急に厳しくなり
彼の肩を軽く拳で叩く
しかし外見に似合わず
違和感が半端ではなかった
パンチも威力が弱々しい
「でもやっぱ、自分が許せなくて」
彼は下唇を噛み締め拳を固めていた
「その気になったら、いつでも入部届けもってこい、西島達も待ってるぞ」
「まあ、同じクラスですから」
私と彼は肩を並べながらも
先輩の背中を見送るまで
互いに目を向けようとはしなかった
ようやく先輩が
校舎玄関に入っていくのを確認すると
いっせいに振り向く
「お前、先輩に失礼だぞ」
「どうして私の名前知ってるの?」
タイミングよく同時に喋る
私はぎょっとして
掠れ声のする方に顔を向けた
ベンチ横の幹の前で
規則正しく直立している男子の存在に
今の今まで気が付かなかった
おそらく
一部始終見られていただろう
私らより一回り背が高く
枯れ木のように痩せていた
顔も細長で
肌が青白く
垂れ目にはうっすら隈ができていた
猫背も手伝って
見てるだけで
身を案じてしまいたくなる
「ちゃんと、ご飯食べてるの? うちのクラスだっけ?」
なんとか話を逸らそうと
初対面でありながらも私は懸命に
話題を探し話しかけた
思い出すだけで
恥ずかしいし
それを第三者に見られてたとなれば
この場からもう逃げ出したくなる
「ああ、すいません豪田先輩」
「えっ……先輩?」
「そうだよ北里、バスケ部のキャプテンで、中学の時からお世話になってる」
「キャプテン!?」
私は耳を疑った
「新田の彼女?」
私と彼は大袈裟に首を振った
「俺、先に行くわ、今日はシュートの練習付き合ってくれてありがとな新田」
豪田先輩は
うつむきながらよたよたと
私の横を素通りした
同学年だと勘違いしたせいで
気まずい空気だった
「ああ、そうだ、やっぱバスケ部には入らないのか?」
先輩が唐突に振り返り
彼の目を鋭く見つめる
「いえ、自分は……」
「あの最後のシュートの事は気にするな、誰も責めちゃいない、ちょっとクヨクヨし過ぎだぞ」
豪田先輩の表情が急に厳しくなり
彼の肩を軽く拳で叩く
しかし外見に似合わず
違和感が半端ではなかった
パンチも威力が弱々しい
「でもやっぱ、自分が許せなくて」
彼は下唇を噛み締め拳を固めていた
「その気になったら、いつでも入部届けもってこい、西島達も待ってるぞ」
「まあ、同じクラスですから」
私と彼は肩を並べながらも
先輩の背中を見送るまで
互いに目を向けようとはしなかった
ようやく先輩が
校舎玄関に入っていくのを確認すると
いっせいに振り向く
「お前、先輩に失礼だぞ」
「どうして私の名前知ってるの?」
タイミングよく同時に喋る