皐月 黄昏
文字数 762文字
最初
どうしてクラスメイトが
カウンターの向こうで
レジを打っているのか理解できず
カエルのがま口から
お札を取り出す動きが硬直してしまった
彼女が着こなす
コンビニの制服を目にし
ようやく事態が飲み込めてきた
「栗澤さん。バイトやってるの!?」
仕事という概念は
大人がするもので
自分らの世代には
まだずっと先の話だと思っていた
それだけに
彼女が働く姿は
違和感があり新鮮でもあった
バイトとはいえ
自ら収入を得る手段を持ち
社会の一員になっている様子は
同世代に
先を越されたという嫉妬と羨望を
植え付けさせるには
十分過ぎる効果があった
急にクラスメイトが
大人な女性に見えてくる
「高校入ったら、ずっとやりたいと思ってたんだ」
「すごいね」
「でも、まだ覚えるのにいっぱいいっぱいで。毎日、店長に注意されてるよ」
「レジ打てるの?」
「ん、まあね」
『栗澤 麻都佳』と私が
同じクラスだという事以外
共通項は何もなかった
彼女が
どこの中学出身かも知らないし
実際
会話するのは
これが初めてかもしれない
しかし
知人が少なく心細い
入学したての頃は
いわば
無人島に漂流したようなものだ
そんな時
同じような境遇の子と出会ったなら
ここは協力して
生活の場を築き上げようとする行為は
ごく自然な成り行きであり
言葉に出さずとも
互いが望んでいる事を
読み取れてしまうものである
二人で意味のない笑いを上げると
暗黙の了解が交わされたのを実感した
勿論
確証はないし自信もないが
「さっき根津に話かけられてなかった?」
「うん、今も他クラスの女子に近寄って、一生懸命好感度下げてるよ」
「根津、ざったくない?」
栗澤 麻都佳は
随分と慣れた手つきでレジ操作をしていた
謙遜もいいとこだ
「うん、根津うざったい……『ねざったい』わ。『ねざい』よ『ねざい』!」
「その表現ウケる!」
私は彼女が手際よく牛乳を袋に
入れる過程を見てうっとりとなった
どうしてクラスメイトが
カウンターの向こうで
レジを打っているのか理解できず
カエルのがま口から
お札を取り出す動きが硬直してしまった
彼女が着こなす
コンビニの制服を目にし
ようやく事態が飲み込めてきた
「栗澤さん。バイトやってるの!?」
仕事という概念は
大人がするもので
自分らの世代には
まだずっと先の話だと思っていた
それだけに
彼女が働く姿は
違和感があり新鮮でもあった
バイトとはいえ
自ら収入を得る手段を持ち
社会の一員になっている様子は
同世代に
先を越されたという嫉妬と羨望を
植え付けさせるには
十分過ぎる効果があった
急にクラスメイトが
大人な女性に見えてくる
「高校入ったら、ずっとやりたいと思ってたんだ」
「すごいね」
「でも、まだ覚えるのにいっぱいいっぱいで。毎日、店長に注意されてるよ」
「レジ打てるの?」
「ん、まあね」
『栗澤 麻都佳』と私が
同じクラスだという事以外
共通項は何もなかった
彼女が
どこの中学出身かも知らないし
実際
会話するのは
これが初めてかもしれない
しかし
知人が少なく心細い
入学したての頃は
いわば
無人島に漂流したようなものだ
そんな時
同じような境遇の子と出会ったなら
ここは協力して
生活の場を築き上げようとする行為は
ごく自然な成り行きであり
言葉に出さずとも
互いが望んでいる事を
読み取れてしまうものである
二人で意味のない笑いを上げると
暗黙の了解が交わされたのを実感した
勿論
確証はないし自信もないが
「さっき根津に話かけられてなかった?」
「うん、今も他クラスの女子に近寄って、一生懸命好感度下げてるよ」
「根津、ざったくない?」
栗澤 麻都佳は
随分と慣れた手つきでレジ操作をしていた
謙遜もいいとこだ
「うん、根津うざったい……『ねざったい』わ。『ねざい』よ『ねざい』!」
「その表現ウケる!」
私は彼女が手際よく牛乳を袋に
入れる過程を見てうっとりとなった