第44話   きちんとすること。

文字数 609文字

私は自宅から最寄りの駅まで、おおむね20分ほどをあるいている。
経路は2系統ほど。いつも同じ道だとつまらなくなるが、遠回りするほど
朝は時間が無い。
そして、その2通りの通勤路の景色も、同じようなものもあるし、ときに
発見があったりする。
 帰宅時には、一昨年の夏の夜。一匹のカブトムシを助けたこともある。
そんな道に、ある日「牛乳パック」が捨てられていた。この日は「牛乳パック」
回収の日だった。今までも数百回と、その牛乳パックの日に歩いていたはず
なのに、その日だけ、発見してしまった。
 数十枚と重ねられた牛乳パックは、四隅がきちんとそろえてあり、ナイロン紐で
きちんと結ばれたた。
飲み終わりの牛乳パックは「ゴミ」だが、それは、ペーパークラフトのようだった。
私はその朝、紙袋に雑多に破られた「牛乳パック」を入れて、玄関先に出してきた。
 (しまった、悔しい)四隅が揃えられて、背筋がピンと伸びているような、牛乳パック。
回収する清掃担当の方も、きっと気持ちが良いはずだ。それに比べて、私の牛乳パックは
どう見えるのだろう。
 翌日から、飲み終わり、キッチンで乾かされた牛乳パックを、私はきちんと鋏を使い
平面に開いて、一時保管をすることにした。
まだ「牛乳パックの日」はめぐってこないが、次回は「ペーパークラフト」のように
きちんと縛って玄関先に飾っておくことにする。
                                    (了)



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