第12話  みんなトモダチ。

文字数 778文字

人に会えない。
親しい人に会えない。会社でも飲み会ができないから
本当は親しくない人の、本当の姿を見る機会も無い。

けれども、これはコロナの前から始まっていたことだ。
知らない人とリアルで出会えない。出会うことをしてはいけない。

朝、通勤時間には近所の小学生と一緒になる。
車が通る歩道のない場所で、信号を待つ交差点で。
危ない場面もあったり、声をかけてあげたいこともある。
なのに、学校では「知らない人と話しては行けません。」と
教えている。
「おはよう!」と言ったとたんに不審者になる可能性を
日本の社会は自ら作り出している。

その通勤時間に、毎朝すれ違う人も大人もいる。
毎朝、同じ時間の赤信号で見かける車がある。
もちろん運転席には、同じ人が乗っている。
たまに目が合ったりして、会釈をするべきか、視線をそらすべきか
お互いに迷ったりする。

こんな風にして、外を歩けば多くの人と触れているのが現実だ。
ならば、みんなトモダチにしてしまえば良いというのが
2021年の私の答えだ。
勝手に自分のトモダチにしてしまう。相手にとって迷惑か、それとも
相手もほんのり同じような気持ちを抱いているか。
不安げな小学生も、私の鞄をみて「なにが入っているの?僕のお父さん
は毎日、家にいるよ。」と話したいかもしれない。

スマホの先の世界では、多くの人が出会いを求めて「登録」したり
呟いたり、動画をアップしている。
以前の合同コンパと出会い系サイトの違いを明らかにする意味を
あまり感じないが、出会いはいつだって、ドキドキするものだ。

ソーシャルネットワークという世界でなく、真逆の自分だけの
世界で、勝手にトモダチを増やす。それが目的ではなくて
実は本当にトモダチになりたいのだ。
だから、目があってどちらかが勇気を出して、
話しかける瞬間になったときの
はじめの一言は用意しておかなくてはならない。


【エッセイ賞】 <完結>






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