第5話 山口県山口博物館

文字数 1,384文字

成瀬川るるせ
2023年6月15日 07:47




 宿に戻って、お風呂に入る。
 そのあと、眠い身体をこらえて、洗濯機を回す。下着の替えのストックがもうないのだ。洗濯機の横の洗剤自販機で洗剤買って、服、下着、靴下を、ともにぶち込む。お金をジュースの自販機で崩して出来た硬貨を入れると、洗濯機は回り始める。
 部屋に戻って旅行記を書いたりなんかして時間を過ごす。


 それからランドリーに戻って乾燥機を回す。「ああ、明日で山口県での用事が終わるなぁ」なんて思いながら。

 6月14日は、桐乃さんに案内してもらい、うろちょろしていた。湯田温泉へ行ってから山口博物館へ行き、それから夜は桐乃さんの職場で夕飯をご馳走になって別れて宿に戻ってきて。そして洗濯機を回してたってわけ。













 山口博物館の庭には、大きなSLが静態保存されていた。SLには動態保存という、実際に運行させながら保存させるのと、静態保存という、モニュメントとして保存させる二種類があり、山口博物館にあるのは後者である。しかし、D601って、D51を傾斜地走行に対応させたモデルの蒸気機関車で、馬力も相当なものだぜ。観て「うっひゃー」と眺める僕と、「中に入れるみたいだから入りましょう!」という桐乃さん。僕らはSLの機関室に入り、また感嘆の息を漏らした。
 桐乃さんは電車に乗るときも車掌室を眺めていることが多いし、「乗り鉄」の素質があるように思う。だが、「電車に乗ることが少ないから観てるんですよー。子供が電車好きなのと同じ理屈です。めずらしがっているんです」とのことだ。ふーむ、そういう言い方も出来る、か。
















 山口県博物館に桐乃さんと入る。いろいろな分野が目白押しで、矢継ぎ早で変わるので大変だった。
 入って最初は電動機、すなわちモーターの話である。日本初の国産モーター実用化は茨城県日立市の、日立製作所の小平波平がさせた。いきなりで僕が住んでるところの情報が出てきたのでびっくりである。
 地質コーナーでは無煙炭が飾られていた。無煙炭とは、一番カロリーが高い石炭のことを指す。
 動植物のコーナー、天文学のコーナーなどもあり充実。
 歴史コーナーでは、山口県を治めていた毛利氏が皇族の血脈であることはあまり知られていない、ということが書いてあった。実は松下村塾の至誠館で萩は尊攘思想があった、という記述はここにかかってくる。そもそもが治めているお殿様の毛利氏が皇族の系譜に連なっているなら、尊王的な思想を藩全体が持っていても驚くには値しない。日本は朱子学で儒家思想があることを考えると、ごく自然だったのではなかろうか。

 博物館で喋る僕を呆れた顔で観て桐乃さんはひとこと「守備範囲広いですね、るるせさん……」と。流石にそれはなく、常識的範疇のことですらものごとを知らないので、必死に否定する。

 博物館を出たら、サビエル記念聖堂(ザビエルとは呼ばないんだなぁ、これが)から鐘が鳴らされていた。ナイスタイミングである。
「あー、もうこんな時間かぁ」
 暮れゆく空を見上げて、僕は言う。この日は午後に入るまで二人で足湯に浸かってとりとめのない会話をしていたのである。ときが過ぎるのはそりゃ早い。それについては、項を改めて書こう。

 今日は午後からオンラインチェックインを済ませなければ明日飛行機に乗れないのである。最後まで気を抜かないで頑張りたい。
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登場人物紹介

桐乃桐子:孤高の作家

成瀬川るるせ:旅人

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