第3話 明倫館
文字数 2,573文字
成瀬川るるせ
2023年6月14日 02:29
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そう言えば、地ビールを3本ほど、桐乃さんからいただいたのであった。萩市から新山口に戻ってすぐにコンビニに入って、つまみを買って、それから宿へ、と。一人で少し酒盛りしてから、このひとつ前の、松陰神社の記事を書いた。そして気づけば寝落ちしていて、日付が変わった頃、起きたので、トマトジュースとジンジャエールをフロントで買って、飲みながらこの更新に挑もうと思っているのだった。
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さて、藩校であった明倫館である。今、ちょうど、日本の産業遺産と萩展、と、長州ファイブ展を企画としてやっていて、とても興味深く見学した。………見学、大人しく解説を聞いてりゃいいものの、もちろん口を出してしまうのである。まったく僕は迷惑極まりない(以下略)。
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明倫館は四号館まであるが、一般開放されているのは無料である本館と、有料である二号館である。二号館は有料だけあって、断然面白かったし、あとで本館のお土産屋で書籍を数冊購入したりして、いい感じであった。ちなみに、松陰神社でも何冊か書物を購入している。全てが読み応えがありそうだ。
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館内をNPO法人の方が解説していたので、捕まえて話を振ってみたところ、話が噛み合っていそうで噛み合わず、だが企画展を観終えたあとで、謎は解説の方とはほぼ無関係に氷解した。何故氷解したかというと、「企画展のそもそもの趣旨」が理解出来たからであった。どういうことか、プレイバックしよう。
攘夷で外国船の打払をしたい、ということで、全国各地に大砲をつくるための、「反射炉」というものが作られた。現存するものは少ないのだが、そのうちのひとつがこの近くにはあるということで、遺産として登録されたのである。そこまではいい。ただ、館内解説ビデオを見ても、「燃料を燃やし〜」って説明するばかりで、燃料がなにかを全くもって省いて喋らない。
なので僕は係員のNPO法人の方に「燃料がなにか喋らないんですが、大砲をつくるための反射炉って高熱が必要だから石炭じゃないと無理ですよね。宇部市の石炭でも使ったんですか?」と、訊いてみた。すると、係員は「たたら製鉄と同じく、木炭を使ったのですよ。反射炉と言えば木炭です」と言う。「木炭だと失敗しますよね」と僕。「ええ、大砲をつくるのに失敗しました」と係員。僕は「失敗するのはわかってるなら反射炉は石炭使いますよね。わかってなかった、という理解でいいですか。水戸藩の、今ではひたちなかと呼ばれる土地にも徳川斉昭がつくらせた反射炉がありましたが、石炭を使っていたみたいですよ、木炭だと断言は出来ないのでは?」と訊いてみると「水戸には反射炉は存在しない」と断言してきたので「現存はしてないですがレプリカが作られていて、当時どうだったかの研究はされています」と言うと「現存していないので遺産登録されていないですね」と言う。「遺産の話じゃなくて、燃料の話をしているのですが」と返したら「だから木炭です」と、こちらの質問の意図を汲み取る気がないのがわかったので、それはそこで終えることにした。それに木炭ていうのもその通りでもあるのだろう。だからなのか、ほとんどの反射炉では大砲つくりに失敗している。なお、たたら製鉄も遺産登録されているので、木炭での、昔からの製法で外国に立ち向かったという美談ぽくなっているので、たたら製鉄を「推している」ので、遺産…要するにジオパークと関係ないことを喋る気はさらさらなさそうなのだったことが、展示を見終わったあとにわかった。
そして。長州では庚申丸という軍艦が作られたことが有名らしく、その経緯を説明した展示があった。
ペリーが浦賀に黒船でやってくるわけである。で、この黒船、黒い煙を吐く蒸気船の軍艦に危機感を覚えたので、技術を手に入れ、作られたのが庚申丸である、という。ただこれ、木造帆船だ、と書いてある。あたまにはてなマークが浮かんだので係員にさっそくこの謎を質問してみる。「蒸気船に危機感を覚えてつくった軍艦なのに、木造帆船って、これ、蒸気船ではないですよね?」と。係員さんは「蒸気船ではおそらくないですねぇ」と、完全にトートロジーで返すだけになったので「ありがとうございました」と挨拶をして、とにかく展示を自分で観ることにした。すると、これもすぐに氷解したのと、なぜ「長州ファイブ」がそう呼ばれるほどに至ったか、にたどり着く。
幕末、アメリカやヨーロッパから黒船が続々と日本に現われたのだが、そう、いろんな国の、なのであり、長州が軍艦・庚申丸をつくるに際して手に入れた設計図はロシア製の木造帆船だったのである。蒸気機関を教える気が向こうになかったのか、木造帆船なら日本の技術力でも作れると踏んだのか、それはわからないが、とりあえず、蒸気船の設計図ではないのだから、そりゃ蒸気船が出来るわけないわな。なお、木造帆船の木材の繋ぎの部分にたたら製鉄の技法が使われているので、またしてもこれが美談みたく取り扱われていた。
で、長州藩は五人の人材を密航させて、工業技術をしっかり学んで来る。帰国したのは明治に入ってすぐの頃。その人材たちこそが長州ファイブと呼ばれるひとたち。メンバーで特に有名なのは伊藤博文と井上馨だろうか。で、実はこの長州ファイブが、製鉄や紡績の技術なんかを運んできた、と館内ビデオでは説明しているのだが、そのなかで解説なんてまるで一ミリもなかったが、製鉄には石炭であり、紡績も蒸気機関であり、蒸気機関は石炭と水で蒸気タービンを回すことで出来る、ということなのである。
これで謎のミッシングリンクが繋がった。石炭という高火力燃料を使う技術を日本に持ち帰って成功に導いたのが長州ファイブであり、日本の産業革命がこの時点で始まる(蒸気機関の実用化で、それまでの家内制手工業から工場での大量生産に切り替わったことを、今僕はここで産業革命だ、と名指している)。この企画展は要するにそういう話だったのである。
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あー、書いていて疲れた。エキサイティングだったよー!! 観光を忘れてガチで勉強した!! 否、そのために僕は山口県へ来たんだから、これでいいんだけどな!!
さてさて、旅行1日目からこれだぜ。さて、今日はどうなることやら。楽しみすぎるぜっ!!
2023年6月14日 02:29
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そう言えば、地ビールを3本ほど、桐乃さんからいただいたのであった。萩市から新山口に戻ってすぐにコンビニに入って、つまみを買って、それから宿へ、と。一人で少し酒盛りしてから、このひとつ前の、松陰神社の記事を書いた。そして気づけば寝落ちしていて、日付が変わった頃、起きたので、トマトジュースとジンジャエールをフロントで買って、飲みながらこの更新に挑もうと思っているのだった。
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さて、藩校であった明倫館である。今、ちょうど、日本の産業遺産と萩展、と、長州ファイブ展を企画としてやっていて、とても興味深く見学した。………見学、大人しく解説を聞いてりゃいいものの、もちろん口を出してしまうのである。まったく僕は迷惑極まりない(以下略)。
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明倫館は四号館まであるが、一般開放されているのは無料である本館と、有料である二号館である。二号館は有料だけあって、断然面白かったし、あとで本館のお土産屋で書籍を数冊購入したりして、いい感じであった。ちなみに、松陰神社でも何冊か書物を購入している。全てが読み応えがありそうだ。
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館内をNPO法人の方が解説していたので、捕まえて話を振ってみたところ、話が噛み合っていそうで噛み合わず、だが企画展を観終えたあとで、謎は解説の方とはほぼ無関係に氷解した。何故氷解したかというと、「企画展のそもそもの趣旨」が理解出来たからであった。どういうことか、プレイバックしよう。
攘夷で外国船の打払をしたい、ということで、全国各地に大砲をつくるための、「反射炉」というものが作られた。現存するものは少ないのだが、そのうちのひとつがこの近くにはあるということで、遺産として登録されたのである。そこまではいい。ただ、館内解説ビデオを見ても、「燃料を燃やし〜」って説明するばかりで、燃料がなにかを全くもって省いて喋らない。
なので僕は係員のNPO法人の方に「燃料がなにか喋らないんですが、大砲をつくるための反射炉って高熱が必要だから石炭じゃないと無理ですよね。宇部市の石炭でも使ったんですか?」と、訊いてみた。すると、係員は「たたら製鉄と同じく、木炭を使ったのですよ。反射炉と言えば木炭です」と言う。「木炭だと失敗しますよね」と僕。「ええ、大砲をつくるのに失敗しました」と係員。僕は「失敗するのはわかってるなら反射炉は石炭使いますよね。わかってなかった、という理解でいいですか。水戸藩の、今ではひたちなかと呼ばれる土地にも徳川斉昭がつくらせた反射炉がありましたが、石炭を使っていたみたいですよ、木炭だと断言は出来ないのでは?」と訊いてみると「水戸には反射炉は存在しない」と断言してきたので「現存はしてないですがレプリカが作られていて、当時どうだったかの研究はされています」と言うと「現存していないので遺産登録されていないですね」と言う。「遺産の話じゃなくて、燃料の話をしているのですが」と返したら「だから木炭です」と、こちらの質問の意図を汲み取る気がないのがわかったので、それはそこで終えることにした。それに木炭ていうのもその通りでもあるのだろう。だからなのか、ほとんどの反射炉では大砲つくりに失敗している。なお、たたら製鉄も遺産登録されているので、木炭での、昔からの製法で外国に立ち向かったという美談ぽくなっているので、たたら製鉄を「推している」ので、遺産…要するにジオパークと関係ないことを喋る気はさらさらなさそうなのだったことが、展示を見終わったあとにわかった。
そして。長州では庚申丸という軍艦が作られたことが有名らしく、その経緯を説明した展示があった。
ペリーが浦賀に黒船でやってくるわけである。で、この黒船、黒い煙を吐く蒸気船の軍艦に危機感を覚えたので、技術を手に入れ、作られたのが庚申丸である、という。ただこれ、木造帆船だ、と書いてある。あたまにはてなマークが浮かんだので係員にさっそくこの謎を質問してみる。「蒸気船に危機感を覚えてつくった軍艦なのに、木造帆船って、これ、蒸気船ではないですよね?」と。係員さんは「蒸気船ではおそらくないですねぇ」と、完全にトートロジーで返すだけになったので「ありがとうございました」と挨拶をして、とにかく展示を自分で観ることにした。すると、これもすぐに氷解したのと、なぜ「長州ファイブ」がそう呼ばれるほどに至ったか、にたどり着く。
幕末、アメリカやヨーロッパから黒船が続々と日本に現われたのだが、そう、いろんな国の、なのであり、長州が軍艦・庚申丸をつくるに際して手に入れた設計図はロシア製の木造帆船だったのである。蒸気機関を教える気が向こうになかったのか、木造帆船なら日本の技術力でも作れると踏んだのか、それはわからないが、とりあえず、蒸気船の設計図ではないのだから、そりゃ蒸気船が出来るわけないわな。なお、木造帆船の木材の繋ぎの部分にたたら製鉄の技法が使われているので、またしてもこれが美談みたく取り扱われていた。
で、長州藩は五人の人材を密航させて、工業技術をしっかり学んで来る。帰国したのは明治に入ってすぐの頃。その人材たちこそが長州ファイブと呼ばれるひとたち。メンバーで特に有名なのは伊藤博文と井上馨だろうか。で、実はこの長州ファイブが、製鉄や紡績の技術なんかを運んできた、と館内ビデオでは説明しているのだが、そのなかで解説なんてまるで一ミリもなかったが、製鉄には石炭であり、紡績も蒸気機関であり、蒸気機関は石炭と水で蒸気タービンを回すことで出来る、ということなのである。
これで謎のミッシングリンクが繋がった。石炭という高火力燃料を使う技術を日本に持ち帰って成功に導いたのが長州ファイブであり、日本の産業革命がこの時点で始まる(蒸気機関の実用化で、それまでの家内制手工業から工場での大量生産に切り替わったことを、今僕はここで産業革命だ、と名指している)。この企画展は要するにそういう話だったのである。
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あー、書いていて疲れた。エキサイティングだったよー!! 観光を忘れてガチで勉強した!! 否、そのために僕は山口県へ来たんだから、これでいいんだけどな!!
さてさて、旅行1日目からこれだぜ。さて、今日はどうなることやら。楽しみすぎるぜっ!!