第10話 延長戦→やぶからスティック【1】

文字数 1,707文字

   湖上
     中原中也

ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。

沖に出たらば暗いでせう、
(かい)から滴垂(したた)る水の音は
昵懇(ちか)しいものに聞こえませう、
――あなたの言葉の杜切(とぎ)れ間を。

月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われら接唇(くちづけ)する時に
月は頭上にあるでせう。

あなたはなほも、語るでせう、
よしないことや拗言(すねごと)や、
洩らさず私は聴くでせう、
――けれど漕ぐ手はやめないで。

ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう、
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。










 さて。旅行記の延長戦の始まりである。なにから書いていこうか、悩む。とりあえず、連載に先駆けて書いたNOVEL DAYSの、僕の「活動報告」を写し取ろう。



活動報告
『修羅街挽歌 山口県るるせトリップ』連載スタートしました(๑˃̵ᴗ˂̵)و

 僕の旅行記である『修羅街挽歌 山口県るるせトリップ』が本日スタートしました。数日間は毎日更新しますが、その後、ゆっくりと論考などの追加を予定しています。よろしくお願いします。僕が山口県から茨城県へ帰宅した6月16日にちょうど、僕が宿を取って滞在していた新山口駅で、いつも通っていた〈新山口駅北口駅前広場「0番線」〉と〈南北自由通路〉がタイムリーに、東京都の「公共建築協会公共建築賞」で優秀賞を受賞しました、めでたいです(๑˃̵ᴗ˂̵)و 「南北自由通路」は『垂直の庭』というものがあり、現代アートのコンテクストで語られるべきものであり、実はポスト構造主義哲学を最初に応用したのは建築の分野だったりするし、この通路も現代アート最前線!! なので、滞在期間中、一日何回も通っていたのに、通るたびに見惚れていました。その『垂直の庭』を、『修羅街挽歌』の表紙にしました。今回の旅は一人旅と言いながら、各地で学芸員さんを捕まえて話をしたり、そしてゲストとして山口県在住のNOVEL DAYSの作家さんである桐乃桐子さんにもお会いして、この作品でも登場していただいています。本当に人々との出会いに感謝する旅となりました。ぜひ、この旅情をお読みいただいて、感じ取っていたければな、と思います。これはそういう作品です。では、作品でお会いいたしましょう!! 成瀬川るるせでした!!

2023年 06月17日 (土) 11:55



 ……と、こんな感じに書いたのだが、本編第一話に登場する『垂直庭園』が、なんと僕が帰宅した2023年6月16日に、東京都でやっている建築賞の優秀賞を受賞したのであった。これには僕もびっくりだった。本編で『垂直庭園』で、活動報告で『垂直の庭』と表記がブレているのは、正確には名前が『VERTICAL GARDEN』で、つくったアーティストがパリ生まれのアーティストのパトリック・ブランという方で、ほかに世界中で200もの数の垂直庭園をつくっているが、作品名が英語で、その日本語訳なので表記がブレることがある、ということである。新山口駅の南北自由通路には『垂直庭園』として書いてあるが、『垂直の庭』とリーフレットなどには表記されている。どちらが正しいわけでもなく、英語名が正しい。
 約100メートルの壁面に、約140種類の植物が彩るここは、人々の憩いの場でありつつ、新幹線の連絡口でもある。
 もともと、小郡(おごおり)駅こと、現山口駅の方が出来たのが早く、桐乃桐子さんがNOVEL DAYSの『キリモドキ』で書いている通り、ここはいろんな電車の路線を繋ぐための駅であり、また、山口県各地へ行くための路線バスやシャトルバスの連絡口なのである。

 僕は一日何回もこの垂直庭園を歩くことになったのだが、通るたびに見惚れていた。また、桐乃さんと初めて会った場所が新山口駅ならば、また、お別れしたのは、この垂直庭園の中、改札口で、であった。
 今回の旅は、僕が新山口の宿にずっと滞在していたこともあるけど、この垂直庭園とともにあった、と言えるだろう。

 では、やぶからスティックに、旅の〈延長戦〉のスタートだ!! ゆっくり更新になるかもしれないけど、そこはそれ。よろしくお願いしますね。


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登場人物紹介

桐乃桐子:孤高の作家

成瀬川るるせ:旅人

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