10-3

文字数 559文字

 大粒の雨が体を打ち付けてくる。まるで、お前は最低最悪のごみ人間だ、と軽蔑し責め立てているかの如くである。

 うるさい、黙れ。

 感情のままに駐輪場へと向かい全力で自転車を走らせる。
 それなりに気に入っていたリーズナブルなコートが瞬く間に水分で重みを増す。やがてその水分は自分の皮膚にまで浸透し、全身がずぶぬれ状態となる。
 そんな体が凍える中でも軽蔑と非難はやまない。それにまた感化されて、激情に駆られて、俺は、

「あああああああああああああああああああああああああっっっっっ!!」

 人目もはばからず咆哮するのだった。

 その直後のことはなにも覚えていない。気が付くと俺は自転車を押しながらただただ呆然と帰路の道を歩いていた。冷やされた頭の中で軽蔑と自責と激しい後悔が押し寄せ、耐え切れなくなったからかもしれない。
 自宅までもうしばらくとなったころ、ふと俺の歩みが止まる。

「帰ろう」

 そう確かめるように小さくつぶやき、またゆっくりと歩き始める。
 ほぼ無心の状態で十分が経過し、ようやくアパートの駐輪場に到着して自転車と別れる。
階段を上り、自室へと向かい、震える手でカギを開け、中へと入っていく。

「お風呂に入らないと……」

 その言葉と同時に俺はばたりと倒れこみ、気を失ったのだった。
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