第12話

文字数 499文字

 夜の外出は諦め、日曜の朝を迎えた。妻も出勤せず、のんびりできる唯一の日。昨晩のクリームシチューを二人で食べ、まだ起きてこない娘の分は皿に移し冷蔵庫へしまった。
 そして妻に言ってみる。

 今日、久しぶりに料理をしてみたい気分なんだけど。

 へー。それは楽しみだわ。何作るの?

 スパゲティかな。シンプルだけど、旨いのを、ね。

 ただ一つ、心配なことがあった。それは父の作る料理を娘が食べない可能性だ。彼女からは時に汚い、臭いと罵られるのだが、それを考えると、十分有り得る訳だ。それを覆す見栄えと匂いを作り出す必要がある。そのためには是非とも買い物に行かねばならない。

 今からキッチンは自分の城になる。朝食で使った皿は食洗器に入れ、シンクを洗う。スパゲティのストックは棚にあった。そして冷蔵庫を確認した。敢えてここにないものを買うよう、メニューを組み立てる。しかもそれは、コンビニで入手できるものでなければならない。仕事とは違う緊張感を保ちながら、頭が高速回転する。おっ? 粉チーズが切れている。鷹の爪もないようだ。よし、ペペロンチーノ風だ。今回はマイバックもばっちりだ。


 じゃあ、ちょっと買い物に出てくる!
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