第18話

文字数 499文字

 空き瓶で重いゴミ袋を所定の場所に置き、キブンイーブンへと急ぐ。昨日見た「や○○ち」。思いつくのは山口、山内くらいだが、そんな文字を見た記憶がない。あのイクセルシートを確認せねばならない。右レジのベトナム人が今朝も笑顔で迎えてくれる。いや、君。ちょっと体をずらしてくれないか。相手の意思を読み取る機械を持っていてほしいと思ったが、本当にそんなものがあったら、あの娘が客の下心に気付いてしまう。欲しくもないガムを出し、目線だけで壁をうかがう。

 先週と同じシートではないようだ。全部で十人くらい載っている。「や」で始まりそうな名前……。谷田部、八代、矢口、藪内。なんで四人もいる? 下の名前までは覚えられないが、矢口さんは最後に「子」が付いていたので、女性だろう。「やのくち」とも読める。これだっ。「やぶうち」さんも有り得るが。

 吊革につかまりながら考えた。「たかは○」さんが、矢口さんに変わったとすれば、これは結婚だろうか。きっとそうなのだろう。自分とは全く関係ないし、どうこうなりたいということも全くなかったはずだが、何故か寂しい。

 えっ、新婚でコンビニバイト継続か? なんだか可哀想になってきた。
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