第19話

文字数 500文字

 あれから数日、コンビニには寄れなかった。例の案件は順調で、その仕上げが立て込んだ。また別に、クレーム対応があった。これは若手だけでは心もとない。まだまだ必要とされていると思えば、残業も楽しい。いや、残業だけが寄れない理由ではない、との自覚もあった。

 土曜日の午後、スーパーの海苔弁当をつつきながら妻が言う。

 最近、キブンには寄って来ないの? プリンとか食べたい気分。

 それを聞きつけ、娘が部屋から出てきた。

 あそこのキブン、ミズキのお姉ちゃんがずっとバイトしてんのよね。結婚しても辞めないって。凄いよね。

 妻にキブン通いを気付かれていた。そして、今娘が言った「ミズキのお姉ちゃん」は彼女だろう。恐る恐る娘に尋ねてみる。

 ミズキって、高橋さんって子だったかな?

 なんで? ミズキは高畑(たかはた)。前の家には何度も来たことあるじゃん?



 娘と同性の友達など、顔と名前が一致するはずがない。名前を覚えようと思ったことすらない。でも確かに、高畑瑞希さん、どこかで見たことはあった。そうか、その姉か。これからプリンを買いに行こうかとの思いは急速にしぼんでいった。が、妻は期待しているようだ。


 仕方が無い。久々に、行くか!
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