第10話

文字数 499文字

 リビングで楕円形のウエハースに噛り付く。妻も嬉しそうだ。娘はとっくに自分のキャラメル味を食べ終え、妻の抹茶味を狙っている。すでに歯形がついたこちらの苺味を奪いに来るかは分からないが、今更半分弱を割っておく。文句を言われないよう、予防線を張っておくことにも慣れた。

 その半分を娘は何も言わずに奪い去り、更に割って大きな方を自分の口に放り込み、リビングから出ていった。まったく、と思いつつも、キブンまで買いに行ったことは突っ込まれず、ほっと一息だ。四分の一弱の苺味を手にしながら、妻が言う。

 なんか、最近サービス良いわね。臨時収入でもあったの?

 そんなものがあれば苦労しないのだが、なんと答えるべきか。君への感謝と家族団欒のためだよ、と茶化しつつ応じたが、一瞬できた間を妻がどう感じたのか、冷や汗ものだ。その気持ちは本当であり、何もやましいことはないのだが。

 自室に籠ってパソコンを立ち上げ、ブックマークをつけていたビジネス記事を読む。が、広告記事が集中力を削ぐ。ついクリックしていくと、おでんの記事に行き着いた。大根、ちくわ、牛筋、きんちゃく。実に旨そうだ。

 おおっ! 今夜はおでんがいいのでは!?
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