第23話

文字数 491文字

 リビングで缶ビールを開けた。ツマミはゼラチンに包まれた焼鳥の缶詰。本当に焼いたものなのか疑わしいが、これはこれで旨い。これも以前、キブンで買ったものだ。感慨にふける父の前で、その存在がないかの如く、娘は妻としゃべり続けている。あ、妻は「お帰り」と言ってくれたか。
 否が応でもその話は耳に入る。韓流アイドルの話は聞きたくないと思っていたが、話題は昨日越してきた若夫婦だ。俄然、清聴する。

 うちのマンションって、実は安い?

 突然娘が話を振ってきた。正直に「三千万はした」と答える。もう高校生だし、隠すことはない。

 じゃあ、ミズキのお姉ちゃんのとこ、若いのに凄いんだね。

 やはりミズキのお姉さんは、あのヤンキー女なのか。

 でも、下の階ほど安いのよ。あと、ローンの年数も考えないと。

 妻、ナイスフォローだが、娘にはまだ響かないようだ。あの年齢だとローンは三十年で組んでもおかしくない。こちらは十五年で返す。頭金も違う。

 そう言いたいところだが、変に勘繰られても困るだけなので、黙っておいた。そして、部屋番号と名前を知ることができる機会を伺う。

 目の前の会話に聞き耳を立てる。何とも滑稽だ!
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