第6話

文字数 499文字

 土曜日の朝はのんびりできる。が、妻は出勤だ。作り置きの朝食を済ませた頃、娘が起きてきた。難しい年頃であり、会話がない。今朝も寝ぼけ眼のくせに一瞥しただけで去って行った。二度寝するつもりだろうか。注意しても言い合いになるか無視されるかのどちらかであり、放っておく。「パパ、どっか連れてって!」と言われまくり、辟易していた頃が懐かしい。

 昨日コンビニで買った酎ハイの空き缶を洗って、食器立てで乾かす。早く帰って妻と飲んだが、近所や職場の愚痴を聞かされる時間が大半だった気がする。こっちの話には関心がないのかもしれない、と不安になる。昔のように居酒屋で同僚や部下に不満をぶちまける機会がないこともあり、実はちょっと辛い。まあ、そんなもんかな、と思い壁の時計を見つめた。

 ふとスポーツドリンクが飲みたくなった。軽い二日酔いだろうか。冷蔵庫の中身は確認せずに部屋を出た。階段を降り、駅の方向へ。自然と早足になっていることを自覚する。

 そういえば土曜の午前に来たことはあっただろうか? と期待が高まる。そしていつも通り、自動ドアが開いた。

いらっしゃいませ!

 あの娘だ! 妻が帰るまで、まだ一時間はある。
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