第23話 The Pied Piper of Hamelin

文字数 920文字

 スマホにしたのはすごく遅くて、去年の夏だった。それまでは使いこなせる気がしなかったのと、時間を浪費してしまいそうで、ずっと躊躇していた。周りには連絡とるのが不便なのでLINEを使えるようにして欲しい、スマホじゃなくてもLINEを使えるガラケーにして欲しいとまで言われた。確かに他の人は皆LINEで一斉に連絡できるのに、私だけにはショートメールをしなくてはならず、相手に面倒をかけるとならと、思い切ってスマホに変えた。
 ある知人は私がスマホに変えたことが、ここ一年で一番嬉しかったらしい。それを聞いたときは、よほど迷惑だったのだなと思った。
 自分としては、語学アプリやYouTubeやtverなどを気軽に見れるようになったのは良かった。ただ、別に明確な目的もないのにスマホを触ってしまうようになり、非常に時間を浪費している。
 スマホは非常に便利だが、欠点も大きい。飽きないオモチャだからだ。他にやるべきことがあるのについスマホを触ってしまう。
 この間、仕事に行く際、家にスマホを忘れてしまったが一日何の支障もなかった。
 そのことでスマホについて色々考えさせられた。そして、そもそもスマホの何が嫌だったのか、思い出したのだ。
 電車の中でふと気づくと、見渡せる限りの乗客全員、それも結構な人数、同じようにスマホの画面を凝視している。この光景の異様さ。それが嫌だったのだ。
 そして私は何故か、ハーメルンの笛吹の一場面を想起する。魅惑的なメロディを奏でる笛吹男のあとを子供たちがついていくあの場面を。
 スマホはまるで現代のハーメルンの笛吹男ではないか。
 老若男女、大多数皆スマホの画面を凝視して、前方不注意なまま歩いていく。いや前方どころではなく周囲がまるで見えていないようだ。イヤフォンをして他に何も聞こえない者も大勢いる。自分の歩いていく方向に何があるのか注意を払う者はいない。ズブズブと川に浸かっているのに気づかず溺れる者もいるのに、皆スマホに夢中だ。
 こんな光景を思い浮かべ、ゾッとする。スマホとの付き合いをもっと考えなければいけないと思った。
 でも、私はこの文章をスマホを使って書いている。それもまたどうなのかなと思うし、ある意味怖い。

 
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