第30話 長沢芦雪 もふもふだけじゃないぞ!

文字数 644文字

 私のなかでは「日本画でもふもふの人」というイメージがついた画家である。円山応挙の弟子らしい。それくらいの知識しかなかった。でも芦雪は只者ではないと思っていた。だから今度の展覧会は絶対に行くと決めていた。
 「もふもふ」で小品のイメージが強いけれど、大作も描いている。
 『龍図襖』は圧巻の出来。向かって右の龍は雷を帯びながら、前足で雲を切り裂き、素早い動きを感じさせる。鋭い表情も人間っぽい。近くで鑑賞していた小学校低学年くらいの女児が怖がるくらいの迫力。一方、左の龍は身体全体をおおらかにくねらせている。全体像が描かれているのは珍しい。
 花鳥図の色使いはパステルっぽい色も入っていて日本画には珍しい気もした。
 そして、今回の私の一番のお気に入りは『瀧に鶴亀図屏風』。これも大作。向かって左の屏風の鶴たちは至近距離から、右の亀たちは周りの水場も描かれ遠くから俯瞰で捉えている。亀たちの表情がユーモラスで全然飽きない。いつまでも観ていられる気がする。
 また、同時代に活躍した伊藤若冲と蘇我蕭白の絵もあり、蕭白激LOVEの私はハイパーな状態に。
 蕭白は本当に奇才だ。『虎渓三笑図』なんて人物以外に月、雲、断崖、滝、木々、山道、山荘、橋、川のせせらぎなどを詰め込んでいてごちゃごちゃしそうなのに、実にスタイリッシュ。迷路みたいなエッシャーの絵を連想させる。これだけでも来た甲斐はある。まあ今回芦雪を観に来たのに、蕭白への愛を再確認してしまった。
 最後に一言。
 長沢芦雪 もふもふだけじゃないぞ!
 
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