第31話 竹内栖鳳

文字数 817文字

 毎回こんなこと言ってしまうのだが、竹内栖鳳展は絶対行こうと思っていた。だって竹内栖鳳だし……。もう名前聞いただけで期待大。もの凄い安定感。
 全体的な印象は「この人はセピア色が好きなのかな?赤の印象は少なく、あっても暖色系は淡いオレンジが多い。淡くてパステルのような繊細な色使いで、西洋的な影響も受けている感じがする」
 もちろん『散華』のような、赤、白、オレンジ、緑青などを使ったヴィヴィットな絵もある。しかし私の印象では上記のような感じだ。
 そして筆遣いの緩急が素晴らしいと思った。例えば、『狸狐図』の場合、狸と狐はものすごく繊細に描かれているが、周囲の竹や木はごつごつしている。
 また絵になる一瞬を捉えるのがすごく上手い。狐(全然かわいくない)が噛み合いをしているのだが、それがもの凄くリアルだ。ちなみに狸はまるっとムチムチしてて、かわいい。
 触れなきゃダメだろうなって絵についてもコメントしておこうと思う。今回の展覧会の目玉の『虎・獅子図』については、まさにゴージャス。動物を描かせても超一流。大迫力。『大獅子図』も毛の手触りまで伝わってくる。ぐるるって唸り声まで聞こえてきそう。
 そして今回のお気に入りの絵は二つ挙げたいと思う。
 まず、『鯖』。魚籠の上に、鯖が何匹か乗っていて三匹ずり落ちているところが描いてあるのだが、驚いたのは目のゼラチン質まで巧みに描かれていたこと。鯖の青と黒の紋様、魚の身にのった脂のテラテラした質感まで、実に生々しい。
 そして『秋興』は蓮池に浮かぶ三匹の鴨。身を寄せ合っていて目を閉じている。見た途端、あまりの美しさに感嘆の声が出た。鴨はセピアの茶と黒、白で描かれ、黒い鴨の首はちゃんと実物のように群青に光って見える。そして硬柔両方の毛の質感まで伝わってきた。はみ出した毛の白い線が生きている。蓮の葉は緑青と淡いオレンジで描かれており、実に清々しい。
 
 今回も行って大満足でした。さすが抜群の安定感。

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