第17話 ミエさんのレシピ

文字数 761文字

 この頃、トマトと生バジルの葉とモッツァレラチーズのサラダをよく作って食べている。これはKさんの奥さんのミエさんに教えてもらった。Kさんは私の英語のメンターと呼べる人、社会人になってから英語の勉強をやり直そうと思うきっかけをくれたのはKさんで、ミエさんはその奥さんで、のちに私の英会話の先生になった。
 ご夫婦お二人とも英語が堪能で、私の憧れの存在だった。時々、私は英会話クラスの後に、晩御飯をごちそうになったり、私の母も参加して一緒に外食したり、家族(うちの犬も含め)で交流していた。血の繋がった父と母の他に、英語のお父さんとお母さんができたと思っていた。
 目指していた英語の資格が取れたときは、嬉しくてKさんご夫妻に電話で報告した。(その頃にはお二人は子供さんのいらっしゃる別の地域に引っ越しておられた)よく頑張ったねと誉めてくださり、本当に喜んでくださった。お二人に直接会って、お礼を言いたいと思っていたのに、ミエさんは突然この世を去ってしまった。
 私は喪中葉書でそれを知り、Kさんに電話をした。Kさんにとっても予想外の出来事で、急な発作だったと聞いた。途中、我慢しきれず私は泣いてしまった。なぜもっと早く会いに行かなかったのだろうと後悔した。また会えると思っていた。またいつでも。でもそれは当たり前のことじゃなかった。大事な人には会いたいとき会いに行かなきゃダメだ。思ったとき、気持ちを伝えなきゃ。
 
 モッツァレラと生バジルの葉とトマトのサラダ、オリーヴオイルと塩のドレッシングで食べると本当に美味しい。赤、緑、白の色合いもとても美しい。ミエさんのレシピ。私と家族はそれを食べる度、ミエさんを思い出す。
 あなたのレシピは私に受け継がれています。そして、私はこれからも英語の修行を続けていきます。生前のあなたのように。
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