第39話 冷やし飴の思い出

文字数 687文字

 大切な人や家族と美味しい食べ物の記憶は密接に繋がっていることが多いのではないだろうか?つくづくそう思うようなことがあった。
 この間、京都に出掛けお昼を食べた際、セットドリンクメニューに冷やし飴が入っているのに気が付いた。京都らしいなと思い、注文してみた。
 思えば、私は小さい頃から冷やし飴が大好きだった。甘いのと塩分は入っていないのにしょっぱいようにも感じる複雑さと鋭い生姜の味で、幼い子供は敬遠しがちになると思うのだが、私に限ってそんなことはなかった。理由は分かっている。何故なら冷やし飴はある記憶に繋がっているからだ。
 夏の暑い盛り、父と京都の街を歩いていた。京都の夏の暑さは半端ではない。じっとしているだけでも体力を奪われそうなくらい……。幼い私は疲れ果てていた。そんなとき、父が通り掛かった店で冷やし飴を買ってくれたのだ。何屋さんだったのかも覚えていない。甘味処とかではなかった。何か他に主力商品があって、それとは別に冷やし飴を作って売っているという印象だった。「ここの冷やし飴は美味しいねんで。飲んでみ?」とそのようなことを言われたと思う。
 飲んでみると、本当に美味しかった。キンと冷えた甘じょっぱい冷やし飴に生姜が効いていてパンチのある味だった。そのときの感動を期待して、ランチドリンクの冷やし飴を飲んだのだが、残念ながら程遠い味だった。
 誰と、どこで、どんな環境下で味わうのか、そういう要素も味に多大な影響を与えるのだろう。
あのとき以上に美味しい冷やし飴に巡り合うことはきっともうないだろう。
 そんなことを思いながら、今年の父の日は何を贈ろうかと考えている。
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