第33話 ユトリロ展

文字数 570文字

 そういえばユトリロの絵って、何人かの画家と抱き合わせの展覧会で観たことはあるけれど、ユトリロの絵だけの展覧会は今回が初めてだった。
 今回60点ほどの彼の絵を観た。
 街の建物と道、そして教会。快晴の空はない。道の先がどうなっているのか気になる。そして教会の尖塔部分ばかりに視線が行く。人物が描かれていても、蜃気楼みたいに実体がないか、同じポーズのおもちゃの人形みたい。あくまで建物が主役。
 色合いは可愛い。一般にユトリロといえば白っぽいイメージだが、緑、黄、オレンジ、藍色なども使われている。 
 可愛い街角と建物のメルヘンの世界なのに、空はいつも曇った感じで、人物は実感がない。何か違和感がある。だから私にとってユトリロは「ちょっと陰鬱なメルヘン」 
 今回のお気に入りの絵は、『教会、ヴィルタヌーズ』だった。二股に別れる道の真ん中に教会がある。尖塔屋根の暗めの色や左脇の店の屋根等、茶色の部分が絵を落ち着いた印象に見せている。全体的にスッキリした印象の絵だ。教会の白壁の色が貝の肌の光彩のように美しく、紫掛かった青空にマッチしている。壁の下半分の淡い紫と道の黄土色の取り合わせもいい。
 
 ユトリロの非凡さは分かった。でも俺の絵を見ろ的な感じは一切感じられなかった。ユトリロを嫌いだという人に会ったことがないのはその辺が理由かもしれない。
 
 
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