シン・ドンキ
文字数 2,000文字
青である俺と妖魔である『幼女ぽい何か』。その終わりなき戦いの断片を、よりリアルに、よりダイナミックに――。ヒューマニズムを排除したストーリーが始まる。
***
「お待ちしておりましたミスター」
サングラスに黒スーツなどと陳腐なスタイルの男がこめかみに指先を当てる。
「青と呼んでもらおう」
かくいう俺もサングラスにデニムだ。待ち合わせに指定されたトーキョー駅の地下街では目立つ二人だ。
「このキャラクターストリートにショップをだすのが夢です」
男が笑う。
「でも無駄話はできません。あの方がお待ちです」
俺は男のあとに続く。
*
「君がカラフルアーミーの生き残りか。ミエ戦役での活躍は中央にも届いている」
目が笑わぬ背高い老人が立ち上がり手をつきだす。
握りかえすほど、俺は愚かでない。
「お目にかかれて光栄です、総理」
非常時における国防軍最高司令官である男へ敬礼をする。
「私が呼ばれた理由は分かっております。巨大化した『幼女ぽい何か』がトーキョー湾を北上している。その上陸を阻止する」
総理は大儀そうにうなずいた後に。
「それも大事だが、君にはもう一つ任務を与えたい。……おい」
首相官邸の窓にカーテンをかけさせて小声になる。
「2000字以上と言うことは、掌編も20万字も同じ土俵で評価するのか? それを探ってくれ」
「総理。時間がございません。彼には『幼女ぽい何か』を倒すことに専念してもらうべきです」
美人秘書が助け舟を出したあとに、俺へと微笑む。
「私があなたをサポートします」
彼女ならば知っている。通り名は『スパイシーエロス氷室』、略してスエヒロだ。その名の通りに、クールでスパイシーでエロそうだ。
「ならばさっそく最前線に移動しよう」
「オダイバに宿がとってあります」
さすがは筆頭秘書だ。先の先まで読んでいやがる。
*
スエヒロは夜も有能だった。
「『幼女ぽい何か』を倒すのに必要なのは三種の神器。すなわちロングヘアー、ミステリアス、ツンデレ……。いずれも現在ニホンでは枯渇してしまった」
スエヒロがささやく。
「ツクバ大学の研究であらたな神器が見つかったと聞くが」
「さすがね青。それはトップシークレットよ」
スエヒロが笑いながら俺の首を指で横になぞる。シーツで体を覆い起きあがる。
「『幼馴染』『ヒーロー』『始発』……。タカサキ市では通用した」
彼女はホテルのベランダに向かう。俺も半裸のままで続く。……グンマ県民を倒せたならば相当な威力だろう。だとしてもぶっつけ本番は避けられない。
夜景が美しい。傍 らには漆黒の海――そのどこかに『幼女ぽい何か』すなわち『違法だけど合法のふりをしたロリの真似』がいる。
いずれトーキョーは炎上する。
「猶予をくれ。仲間を見つけだす」
青である俺はシャワールームに向かう。
*
二日後、俺はヴー母娘とシナガワの水族館で落ち合う。オーラ漂う連中を連れてきていた。
「私が契約したのは『エイセスデューク 』」
ユカリが七十近い四人組を紹介する。
「「「「青いレモンの味がしますね」」」」
男たちがハモる。
「ヴヴヴ……、私がお願いしたのは『山梨バンド』です」
ヴーも七十近い四人組を紹介する。
「「「「ヒーローになるのは、それは今ですよ」」」」
男たちがハモる。
「「そして私たちが『狩人 』だ」」
二人組の男がハモる。
「「八時ちょうどは始発でないがな」」
危険なだけで役に立ちそうにない連中だ。
「彼らには退去してもらえ――」
ゴオオオオ
埋め立て地を埋め尽くすコンテナ群が爆破炎上した。
「あ、あれは……」
ユカリが慄 く。
巨大化した『幼女ぽい何か』がついに上陸を果たした。
「「「「「「「「「「うわぁ……」」」」」」」」」」
十人の六十代男性が瞬殺される。
「ヴヴヴ……私たち三人で戦いましょう」
巨大類人猿であるヴーが言う。
「青は、幼馴染であるユカリの子どもの頃からのヒーロー。なんだかんだラブコメしていた二人はついに結ばれる。始発電車で朝帰りする娘を待つ私」
「うわああ」
なんてことだ。そんな設定 だけで『幼女ぽい何か』が苦しみだした。
「とどめをさしましょう。それは、ヒーローであるあなたからのプロポーズです!」
四十近いユカリが叫ぶ。
「おばさん」
緊張しまくった俺は、子どもの頃から見知った呆れ顔の類人猿へと。
「ユ、ユカリちゃんを僕のお嫁さんに――」
「不要です」
背後から声がした。
「妖魔は逃亡しました。深追いは禁物です」
スエヒロが言う。
***
「肩透かしの展開に気落ちしたかな?」
翌朝、官邸で総理が笑う。
「リアルな設定ではよくあります」
俺の回答は及第点でないだろう。
「それに、真なる戦いはこれからですよね?」
「気づいていたの?」
スエヒロが挑発的に見つめかえす。
「追加ミッションです。月末までに二十万字の溺愛小説を書いてもらいます」
「寸評は期待しないでくれ」
やれやれ。休む間もないか。
***
「お待ちしておりましたミスター」
サングラスに黒スーツなどと陳腐なスタイルの男がこめかみに指先を当てる。
「青と呼んでもらおう」
かくいう俺もサングラスにデニムだ。待ち合わせに指定されたトーキョー駅の地下街では目立つ二人だ。
「このキャラクターストリートにショップをだすのが夢です」
男が笑う。
「でも無駄話はできません。あの方がお待ちです」
俺は男のあとに続く。
*
「君がカラフルアーミーの生き残りか。ミエ戦役での活躍は中央にも届いている」
目が笑わぬ背高い老人が立ち上がり手をつきだす。
握りかえすほど、俺は愚かでない。
「お目にかかれて光栄です、総理」
非常時における国防軍最高司令官である男へ敬礼をする。
「私が呼ばれた理由は分かっております。巨大化した『幼女ぽい何か』がトーキョー湾を北上している。その上陸を阻止する」
総理は大儀そうにうなずいた後に。
「それも大事だが、君にはもう一つ任務を与えたい。……おい」
首相官邸の窓にカーテンをかけさせて小声になる。
「2000字以上と言うことは、掌編も20万字も同じ土俵で評価するのか? それを探ってくれ」
「総理。時間がございません。彼には『幼女ぽい何か』を倒すことに専念してもらうべきです」
美人秘書が助け舟を出したあとに、俺へと微笑む。
「私があなたをサポートします」
彼女ならば知っている。通り名は『スパイシーエロス氷室』、略してスエヒロだ。その名の通りに、クールでスパイシーでエロそうだ。
「ならばさっそく最前線に移動しよう」
「オダイバに宿がとってあります」
さすがは筆頭秘書だ。先の先まで読んでいやがる。
*
スエヒロは夜も有能だった。
「『幼女ぽい何か』を倒すのに必要なのは三種の神器。すなわちロングヘアー、ミステリアス、ツンデレ……。いずれも現在ニホンでは枯渇してしまった」
スエヒロがささやく。
「ツクバ大学の研究であらたな神器が見つかったと聞くが」
「さすがね青。それはトップシークレットよ」
スエヒロが笑いながら俺の首を指で横になぞる。シーツで体を覆い起きあがる。
「『幼馴染』『ヒーロー』『始発』……。タカサキ市では通用した」
彼女はホテルのベランダに向かう。俺も半裸のままで続く。……グンマ県民を倒せたならば相当な威力だろう。だとしてもぶっつけ本番は避けられない。
夜景が美しい。
いずれトーキョーは炎上する。
「猶予をくれ。仲間を見つけだす」
青である俺はシャワールームに向かう。
*
二日後、俺はヴー母娘とシナガワの水族館で落ち合う。オーラ漂う連中を連れてきていた。
「私が契約したのは『エイセス
ユカリが七十近い四人組を紹介する。
「「「「青いレモンの味がしますね」」」」
男たちがハモる。
「ヴヴヴ……、私がお願いしたのは『山梨バンド』です」
ヴーも七十近い四人組を紹介する。
「「「「ヒーローになるのは、それは今ですよ」」」」
男たちがハモる。
「「そして私たちが『
二人組の男がハモる。
「「八時ちょうどは始発でないがな」」
危険なだけで役に立ちそうにない連中だ。
「彼らには退去してもらえ――」
ゴオオオオ
埋め立て地を埋め尽くすコンテナ群が爆破炎上した。
「あ、あれは……」
ユカリが
巨大化した『幼女ぽい何か』がついに上陸を果たした。
「「「「「「「「「「うわぁ……」」」」」」」」」」
十人の六十代男性が瞬殺される。
「ヴヴヴ……私たち三人で戦いましょう」
巨大類人猿であるヴーが言う。
「青は、幼馴染であるユカリの子どもの頃からのヒーロー。なんだかんだラブコメしていた二人はついに結ばれる。始発電車で朝帰りする娘を待つ私」
「うわああ」
なんてことだ。そんな
「とどめをさしましょう。それは、ヒーローであるあなたからのプロポーズです!」
四十近いユカリが叫ぶ。
「おばさん」
緊張しまくった俺は、子どもの頃から見知った呆れ顔の類人猿へと。
「ユ、ユカリちゃんを僕のお嫁さんに――」
「不要です」
背後から声がした。
「妖魔は逃亡しました。深追いは禁物です」
スエヒロが言う。
***
「肩透かしの展開に気落ちしたかな?」
翌朝、官邸で総理が笑う。
「リアルな設定ではよくあります」
俺の回答は及第点でないだろう。
「それに、真なる戦いはこれからですよね?」
「気づいていたの?」
スエヒロが挑発的に見つめかえす。
「追加ミッションです。月末までに二十万字の溺愛小説を書いてもらいます」
「寸評は期待しないでくれ」
やれやれ。休む間もないか。