トリプルチャレンジ
文字数 2,082文字
※R15とR18の中間ぐらいの性的表現があります。申し訳ございませんが、不快になりそうな方は閲覧をお避けください。
※センシティブな団体がでてきます。ご了承ください。
人生の先輩と敬愛する先輩に呼びだされたのは、まさに初秋の初めだった。これらは決して重複表現ではない。たまたま学生時代の一学年上の先輩が人生の先達になったわけだし、この日の気温や湿度がブレンドされた空気の質感は、初秋の初秋としか表せないからだ。言うなれば、晩夏の末と重なり合うような日であった。
休日のオフィスを尋ねると、先輩はコーヒーを飲みながらパソコンで小説を閲覧していた。
「なにを読まれています?」
「異世界転生です。くたびれた無職男性が某国将軍様に生まれ変わり、敵も仲間も惨殺しまくりミサイル撃ちまくり、女と好きなだけ乳繰り合える物語です。しかも男ともです。……うらやましい。私も国道に飛び込んでみようと思うときがあります」
先輩をそこまで思い詰めさせる小説が存在するとは。
「そのRは15ですか?」
「18です。もちろん投げ銭なしの無料サイトです。あとでアドレスを送っておきます」
「ありがとうございます」
先輩の見立てに間違いはない。その小説は、きっと五十代男性こそメインターゲットだろう。
先輩は保温したポットから私にもコーヒーを入れてくれた。
「夏と秋の境目である今日という日に、あなたを呼んだのは他でもない。知恵を拝借したいのです」
「私にですか?」
純粋に驚いてしまう。先輩に頼られるなんて初めてかもしれない。
「私が、あるセンシティブな団体とトラブルを起こしたのはご存知ですよね」
「はい」
「そこに妻を誘拐されました」
「先輩。それは私でなく警察に通報すべきです」
私はただの地方公務員だ。しかも年金課だ。行政書士である先輩のがおそらく対犯罪スキルはある。どっちにしろ110番するのが最善だ。
「もちろんそうすべきでしょう。しかし妻から警察沙汰にしないでと連絡がありました。彼女は怯えていました」
なんてことだ。若き三冠王とシルエットの区別がつかないあの女性さえも敵わないのか。
「彼らの要求は?」
「それはセンシティブなので口にできません。ただ『回避ルート。三つのお題を使った小説を書け』と、DMが届いています」
先輩が私をじっと見る。言葉を続ける。
「妻が帰ってこないほうが平和かもしれない。でも私が何もアクションを起こさずにいたら、彼女は怒り狂うでしょう」
私は、台風の日のリス園のリスのように縮こまる先輩を想像してしまう。
「協力させてください。して、三つのお題とは?」
「ひとつは『先輩』ひとつは『コーヒー』」
先輩は窓の外を見ながら言う。「そして最後のひとつは『官能小説』です」
脈絡なき三つのキーワード。それらをひとつにまとめ、物語を綴れというのか。至難だ。むしろ三つの試練と呼ぶべきではないか。
でも私は、お題のひとつを昭和の時代から収集している。ミスターフランス書院と呼ばれた日もある。だから私にすがったのだろう。
「一晩だけ時間をください」
私は先輩のオフィスを後にする。
*****
『後輩と放課後カフェタイム』
「先輩たいへんです! わ、わー、どて」
ミヨが三年生のクラスにまで押しかけてきた。入口で思いきりコケてスカートがめくれる。男子どもの真ん前でピンク色のパンツが丸出しになった。ミヨめ、私までドキドキさせやがって。
「あわわ、ミヨちん大丈夫ですか」
一緒に弁当を食べていたマホが動揺しまくる。注目されまくりの後輩はしれっと立ち上がり、私たちの机に来る。
「で、何がたいへんなんだよ」
「ここでは言えないぐらいヤバいっす」
ミヨがかわいい顔を寄せてくる。「なので放課後、おうちカフェしましょう。そのときに教えます」
「あわわ、私は用事があるでし。ご一緒できないでし」
つまりミヨと二人きりだ、よっしゃ。
「だったら私の部屋に集合な」
「了解です。でもエロは無しですよ」
「馬鹿野郎」
聞き耳を立てていた男子の鼻血が噴出したじゃないか。お前らはネットのエロ小説を読んでろ。
*
「実はですね、んっ」
噂話など聞いていられるか。コーヒーにミルクも入れぬまま、ベッドに押し倒す。あっという間にミヨの唇は唾液まみれ。制服のボタンに続いてブラもはずす。
「先輩、鼻息荒いです」
「うるせえ」
舌を転がしたらぽこっと立った。かわいいな。ミヨは耐えられず声を漏らす。後輩の下着に手を伸ばす。まったく抵抗してこない。
「あわわ、用事が済んで来てみたら、何しているですか~」
なんてことだい。マホが来やがった。
私はこほんと咳払いする。仕方ない。こうなったらこれしかない。
「よっしゃ、女子三人で三人プレイだ」
「あわわ、重複表現でし」
*****
私が徹夜で仕上げたこの作品は某投稿サイトの文学賞で、まさかの優秀賞に即日選ばれた。その功績により先輩の妻は解放された。
「ありがとう、ミスターフランス書院」
先輩の妻が私へと微笑む。「お礼に三人プレイはいかがですか?」
「「やめておきましょう」」
先輩と私の声が重複した初秋二日目。
※センシティブな団体がでてきます。ご了承ください。
人生の先輩と敬愛する先輩に呼びだされたのは、まさに初秋の初めだった。これらは決して重複表現ではない。たまたま学生時代の一学年上の先輩が人生の先達になったわけだし、この日の気温や湿度がブレンドされた空気の質感は、初秋の初秋としか表せないからだ。言うなれば、晩夏の末と重なり合うような日であった。
休日のオフィスを尋ねると、先輩はコーヒーを飲みながらパソコンで小説を閲覧していた。
「なにを読まれています?」
「異世界転生です。くたびれた無職男性が某国将軍様に生まれ変わり、敵も仲間も惨殺しまくりミサイル撃ちまくり、女と好きなだけ乳繰り合える物語です。しかも男ともです。……うらやましい。私も国道に飛び込んでみようと思うときがあります」
先輩をそこまで思い詰めさせる小説が存在するとは。
「そのRは15ですか?」
「18です。もちろん投げ銭なしの無料サイトです。あとでアドレスを送っておきます」
「ありがとうございます」
先輩の見立てに間違いはない。その小説は、きっと五十代男性こそメインターゲットだろう。
先輩は保温したポットから私にもコーヒーを入れてくれた。
「夏と秋の境目である今日という日に、あなたを呼んだのは他でもない。知恵を拝借したいのです」
「私にですか?」
純粋に驚いてしまう。先輩に頼られるなんて初めてかもしれない。
「私が、あるセンシティブな団体とトラブルを起こしたのはご存知ですよね」
「はい」
「そこに妻を誘拐されました」
「先輩。それは私でなく警察に通報すべきです」
私はただの地方公務員だ。しかも年金課だ。行政書士である先輩のがおそらく対犯罪スキルはある。どっちにしろ110番するのが最善だ。
「もちろんそうすべきでしょう。しかし妻から警察沙汰にしないでと連絡がありました。彼女は怯えていました」
なんてことだ。若き三冠王とシルエットの区別がつかないあの女性さえも敵わないのか。
「彼らの要求は?」
「それはセンシティブなので口にできません。ただ『回避ルート。三つのお題を使った小説を書け』と、DMが届いています」
先輩が私をじっと見る。言葉を続ける。
「妻が帰ってこないほうが平和かもしれない。でも私が何もアクションを起こさずにいたら、彼女は怒り狂うでしょう」
私は、台風の日のリス園のリスのように縮こまる先輩を想像してしまう。
「協力させてください。して、三つのお題とは?」
「ひとつは『先輩』ひとつは『コーヒー』」
先輩は窓の外を見ながら言う。「そして最後のひとつは『官能小説』です」
脈絡なき三つのキーワード。それらをひとつにまとめ、物語を綴れというのか。至難だ。むしろ三つの試練と呼ぶべきではないか。
でも私は、お題のひとつを昭和の時代から収集している。ミスターフランス書院と呼ばれた日もある。だから私にすがったのだろう。
「一晩だけ時間をください」
私は先輩のオフィスを後にする。
*****
『後輩と放課後カフェタイム』
「先輩たいへんです! わ、わー、どて」
ミヨが三年生のクラスにまで押しかけてきた。入口で思いきりコケてスカートがめくれる。男子どもの真ん前でピンク色のパンツが丸出しになった。ミヨめ、私までドキドキさせやがって。
「あわわ、ミヨちん大丈夫ですか」
一緒に弁当を食べていたマホが動揺しまくる。注目されまくりの後輩はしれっと立ち上がり、私たちの机に来る。
「で、何がたいへんなんだよ」
「ここでは言えないぐらいヤバいっす」
ミヨがかわいい顔を寄せてくる。「なので放課後、おうちカフェしましょう。そのときに教えます」
「あわわ、私は用事があるでし。ご一緒できないでし」
つまりミヨと二人きりだ、よっしゃ。
「だったら私の部屋に集合な」
「了解です。でもエロは無しですよ」
「馬鹿野郎」
聞き耳を立てていた男子の鼻血が噴出したじゃないか。お前らはネットのエロ小説を読んでろ。
*
「実はですね、んっ」
噂話など聞いていられるか。コーヒーにミルクも入れぬまま、ベッドに押し倒す。あっという間にミヨの唇は唾液まみれ。制服のボタンに続いてブラもはずす。
「先輩、鼻息荒いです」
「うるせえ」
舌を転がしたらぽこっと立った。かわいいな。ミヨは耐えられず声を漏らす。後輩の下着に手を伸ばす。まったく抵抗してこない。
「あわわ、用事が済んで来てみたら、何しているですか~」
なんてことだい。マホが来やがった。
私はこほんと咳払いする。仕方ない。こうなったらこれしかない。
「よっしゃ、女子三人で三人プレイだ」
「あわわ、重複表現でし」
*****
私が徹夜で仕上げたこの作品は某投稿サイトの文学賞で、まさかの優秀賞に即日選ばれた。その功績により先輩の妻は解放された。
「ありがとう、ミスターフランス書院」
先輩の妻が私へと微笑む。「お礼に三人プレイはいかがですか?」
「「やめておきましょう」」
先輩と私の声が重複した初秋二日目。