ドンキでGO!2
文字数 2,000文字
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ここまでのあらすじ
青である俺はアプトとともに露天風呂付客室で捕らわれ、アマガサキへ連行された。そこの裏市長である『幼女ぽい何か』すなわち『違法だけど合法のふりをしたロリの真似』から逆さ磔の刑を受けるが、旧知であるコーヴェの者の手助けでアマガサキ城を爆破炎上させて脱出する。
ィヴィ川のほとりでヴー母娘と合流した俺は、難敵であった謎の男を倒す。再びグンマを目指し、その属国であるトチギ共和国から潜入する。点在する名湯に罠を張り巡らせていたイバラギ五人衆との死闘のすえにウスイ峠へたどり着く。しかしそこでグスタフに乗り待ち構えていたのは『幼女ぽい何か』だった。巨大な列車砲が――
***
ウスイ峠のメガネ橋。その上にひろがる虚ろな巨大な穴。グスタフの巨砲が俺たちへ照準を合わされようとしている。
「ここまでだね、青」幼女ぽい何かが笑う。
「お母さん、はやく列車砲を破壊して!」
アラフォーの独身女性であるユカリが、母であり巨大類人猿であるヴーへと叫ぶ。
「だめ! グスタフを攻撃してはいけない」
ドイツ人とのクォーターであるアプトが悲鳴を上げる。「私は祖父の村で、いつもあの列車砲を眺めていた。よじ登って遊んだりもした。グスタフは私の幼馴染……忘れられるはずない友だちよ!」
一夜をともにした程度の他人の感傷など、生死の境目では知ったことじゃない。
「ヴーよ、破壊光線だ! グスタフを鉄屑と化せ!」
俺は『条件によっては婿入りするかも』とかすかな期待を匂わせている。その気は皆無だが、一縷の望みにすがる母親であるヴーが口を広げる。
「
巨大な光がグスタフを……光線が跳ね返された!
「ヴギャアア」
「ギャアア」
なんてことだ。ヴーがおのれの発した破壊光線に飲み込まれて消滅した。巻き添えで娘のユカリも消滅してしまった。
「これは第二次セカイ大戦末期にドイツが作りあげたバリア……。第三帝国の滅亡とともに失われたはずなのに」
アプトが慄いている。
「ふふふ。ドイツ工業都市であるアウクスブル区。そこのギルドでバリアは密やかに事業承継されてきた」
幼女ぽい何かが大人びた笑みを浮かべる。「そしてそこの姉妹都市がアマガサキさ。その力をまずグスタフで試してみたけど及第点だ。ゆくゆくはアマガサキ全体をバリアで囲もう。コーヴェどころかニホン政府も手をだせなくなる」
都市を滅ぼすほどの巨砲といかなる攻撃も効果ない防御壁。その暁には北関東連合共和国とアマガサキの同盟に、某国のミサイルも某国の気球も太刀打ちできなくなる。
気づけば巨大列車砲は寸分違わず俺たちに向いていた。
「終わりだよ。発射!」
幼女ぽい何かの残酷な一言。巨大列車砲から破壊神のごとき弾が発射されて、バリアに当たって内側で爆発する。マグニチュード9.0に値する振動にメガネ橋が瓦解していく。
「グスタフ!」
アプトが悲痛に叫ぶ。しかし巨大列車砲はおのれが発した巨弾により消滅していた。
「巻き添えになる。逃げるぞ」
俺はアプトの手を引く。支えがなくなったバリアが宙に浮かぶのが見えた。ゆっくり渓谷へと落ちていく。
「あそこに飛び降るぞ」
俺はアプトともに崩れゆく橋からジャンプする。バリアに包まれる。人にやさしい技術だ。
「ああ」
アプトが絶望の声を漏らす。そこには血みどろになりながらも、なおも幼女ぽい何かが存在していた。
「青……またも君の奇策に乗せられたようだね」
勝手に自滅した妖魔が笑う。「でも詰めが甘かったな」
ふわふわと落ちていくバリアのなかで、幼女ぽい何かの手に火炎放射器が現れる。
「そんなものを閉ざされた空間で使ったら、酸欠になるぞ」
俺は一般常識を口にする。
「僕に酸素はいらない」
妖魔がトリガーを――
「伏せて!」とアプトが叫ぶ。彼女の手には大きな歯車があった。
「これはグスタフが急峻な峠を登るためのもの。……悪の手先のように使われた
アプトがアプト式ラックレールに使われるピニオンギアを投げる。火炎放射器のノズルにジャストフィットする。
行き場のない燃料が暴発する五秒前でないか。
「……もう一息だったのに残念だな。さすがの僕も致命傷になりかねない」
またも幼女ぽい何かが笑う。「じゃあね青。また会える日を楽しみにしているよ」
違法だけど合法のふりをしたロリの真似が笑いながら消える。
***
バリアに防水機能はなく、渓流で溶けて俺たちは解放された。
「グスタフは消滅した。任務は完了しました」
ずぶ濡れのアプトが言う。「私は戦いに私情を挟んでしまった。あなたの命までも危うくした」
「古い友は大事さ。いつまでも心に残してやってくれ」
涙目のアプトがうなずく。
俺たちにはグンマから脱出という面倒が残っている。そうだとしても。
「とりあえず一緒にホテルで休んでくれるかな?」
「んだんだ」
いいともと言ってほしかった。