真なる趣味の延長線上Ⅲ

文字数 2,919文字

※縦読み推奨



1年以上前に、某アルファポリスで挿絵入りで公開した残骸たちです。挿絵数が限られていたので部ごとに分割しておりました。
第1部のお気に入りは多かったけど、『他サイトで完結済』と記したためか、第4部後半で0になったので撤収しました。
ここのチャットに流れたかな、だったらここでならと妄想して、挿絵の

を公開してみます。

需要ありなら『いいね』を御押しください。『お気に入り』でもよいです。『いろいろ置き場予定地』の星が10を越えたら嬉しいな。どうせ反応ないけど。事前にいじけ。





 トンネラーが腕のドリルをイエローにおろす。彼女が絶叫をあげて目覚める。尻を押さえながらのたうちまわる。

「変態め!」



「やめてよ、私だよ」
 白色のオウムがイエローの頭にとまる。「与那国司令官がまだだから、モスプレイが登場しない。指示も分からない」



「アメシロがモスプレイに乗っていないならば司令官不在か。指示は届いているのか?」
 いきなりブルーが姿勢よく横を歩いていて驚かされる。



 丸太棒に縛られた一般人はちょっと年上ぐらいの女。気絶しているようだ。トラックで連れてこられたらしき若い男性も、抵抗しながら縛りつけられる。



 他の敵は二手に分かれる。一方は丸太棒へと女子高生を引きずる。若い男は持ち上げられて運ばれている。



「俺は男でもかまわない。そもそもバイだしな」
 運転席から降りたエリートが近づく。ベレー帽の下のマスクから好色な目が覗く。



 お蘭さんの簪から発した紫色のビームが光弾をかき消す。俺のもとへやってくる。



「お待たせです。彼女がレッドですか? ……やっぱり擬態した雄?」
 北風のように、俺たちの前に巫女が現れた。



 その体からスカートがずり落ちる。セーラー服がはだけ落ちる。



 じつは俺、正義の味方になったんだ。きれいな女性に転生して、二夜続けて悪を成敗してきた。この制服は、手助けしてくれた魔法少女から預かったものだよ。桧の兄ちゃんが変態であるはずないだろ?
 こんな説明、誰もが鼻くそが飛びでるほどに鼻で笑うよな。でも妹は信じないまでも受けいれる。



「だって、レッドに選ばれた(ひと)ですもの!
私の本名は陸奥柚香(みちおくゆか)柚子(ゆず)の香りです。相生さんと同じ歳です。梅雨の盛りに生まれた相生さんと違い私は冬至生まれですから、まだ十代ですけど私も大学生です……。
深雪っぽい口調になっていたね。ヘヘヘ」



 茜音は隣に座る柚香を睨むが、見つめかえされて顔を戻し唇を噛む。
 柚香は俺の隣も無表情に見つめる。違和感だけが強まっていく。



 須臾(しゅゆ)にして久遠(くおん)――。
 祖父の葬式で坊さんが言った言葉を思いだす。人の出会いは一瞬であって永遠らしい。
 竹生夢月はまだ俺の目を見つめている。



「あんな化け物に惹かれちゃ駄目だろ」
 和的露出ゴスロリの柚香が目の前に来る。



「君がレッドか……。私は清見涼(きよみりょう)。相生君、初めまして」
 眼鏡をかけてこざっぱりした縞柄シャツの背高い男が会釈する。
「初めてではないけどな。私がいわゆるブルーだ」



 モスガールジャーの初代レッドの名はヤマユレッド。燃えるような毛をたなびかせて敵をなで斬る、戦いの女神の具現だった。



 カラオケボックスの部屋には、受付が勘ちがいしたのか先客がいた。



 俺の体が裸になる。胸がふくらみ、そこに赤いコスチュームが――。
 延髄への衝撃



「どっちの姿でも、蘭にたっぷりとしごがれた。死なない程度にね。でもライフは一桁。お前に譲ったから、コンディションもきっと一桁。だがらボロボロ」
 柚香が疲れた顔で言う。頬に(あざ)があった。



 むさ苦しい男どもは白人黒人アジア系と、総勢八名だ。こいつらは口うるさいし下品だが、役になりきっているだけだ。



 肩にアメシロを乗せた司令官がやってくる。



「スカシバレッド見参!」
 地獄へと突入する。
 ……でも、そこは物質的天国だった。



「私たちは前座だ。鼻息たてずに、こそ泥を逃さぬ程度にやるさ。むしろ黒岩(くろいわ)様の食い分を残しておかないと、私たちがとばっちりを受ける。命を大事にいこう」
 その声に巨大な顔がうなずいて、異形の大トンボが飛んでいく。



「「「スパイラルレインボー!」」」
 三人の声が重なる。
「私がみんなを守…………」

 何も発せられなかった。佐井木とかいうおばさんが振りかえる。



 頭部から流血して、うつろな目。……でも。
「女だったら耐えろ!」
 手を離し立ちあがる。



「ぎゃああああ!」
 レベル100越えの絶叫が盆地を揺らす。その手から機関銃が消える。



 衝突した灌木が倒れる。クワガタが落ちてきた。
 こいつはもう肉弾戦だけ。俺はまだまだ余裕……。そう思いこんでも立ち上がれない。



 サイキックが跳ねる。見あげるほどに。「リノメガトン!」
 巨体が真上から落ちてくる。もう逃げられない。
 お前がな!

「「「スパイラルレインボー!」」」
 仰向けに横たわるスカシバレッドの胸が奥から燃えた。



 モスプレイは20メートルほどの高さまで降りていた。その下で傭兵たちが銃を空へ向けて右往左往している。
 あざ笑うように、巨大なトンボが飛ぶ。



 女三人が宙に浮かんでいようが誰も気づくはずない。結界で身を隠す必要もない。隠すべくは、じきに聞こえだす断末魔の悲鳴だ。



 かぐや姫の姿でバイクに乗ってきた馬鹿の機嫌を取る。



 続いて茜音と清見さんが、ピンクの野球帽をかぶった隼斗を連れてきた。自分の足で歩く隼斗は見るからに体調がよさそうだ。頬もうっすらピンクだった。



 さらに十分後、生身である司令官が到着した。三十代ぐらいの黒づくめの男に車椅子を押させて現れる。こっちの世界でのボディガードだ。



たまたま聞いた話によると、あのくそは一般人のときから視力が9.5あって、対岸で子供たちが亀を苛めているのをいましめるために、制服の下に着ていたスク水で、台風で増水した荒川に飛びこんで、くそでもさすがに流されて、流木にしがみつき海ほたるで保護されたらしい。



そんなくそ化け物がスカシバレッドを狙っていると、本部に誇張して報告してあるから心配しないでね。



 スカシバレッドだけのも撮ってもらった。ポーズを変えて三枚。顔だけのアップも。早くしろとブルーに怒られる。



 戦闘員服に着替えた子分たちとピチピチ跳ねる巨大ミジンコを制して、ハゲが両手をあげる。
 もうちょっと待て。



「「「「かわいこ戦隊モスガールジャーだ!」」」」
 四人の声が重なる。



以下予告編


「申し訳ないが私は逃げる。軟弱者臆病者卑怯者と並べたててくれ」
 エリーナブルーがすっきりとした尻を向けて去っていく。
 俺とシルクイエローだけが、深夜二時をまわり更にゴーストストリートと化した大阪府西成区のモール街に残される。



 夢月のフォークが止まった。
「ほんと?」
 口からはみ出た麺を吸いながら逆に聞かれる。「……今から本宮をぶっ潰しにいこう」



「蛾は自力で転生できないから怯えるな。テロリストは精霊の盾をまとわない。加減しないと死ぬ」
 助手席から制服でツインテールの女の子が乗りだしてくる……。



 白い深雪がよろよろと俺のもとに来る。ひざまずく。
「あっという間にひどい傷ですね。でも、あの人の言うとおりフォローしません」
 ぼろぼろの深雪が微笑み――。
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