第二幕!後ろめたさと現実と
文字数 7,751文字
ロータリーに着くと、先生が新聞を広げて珈琲を飲みながらベンチに腰をかけ、俺が来るのを待っていた。これから旅に出ると言うのに、相変わらずスーツを着ていて、まるで通勤前のサラリーマンみたいだ。
挨拶をすると、先生が振り向いた。
「おはよう。気分はどうだ?」
「クソ会社をバックることができて、最高の気分です。」
彼は、あくび1つせずに尖った発言を言ったのける俺を見て静かに笑う。
「君がこの計画のリーダーだ。どう進んで行くかは君が決めなさい。私はそれを支え動かす役に徹しよう。」
「覚悟はできています。ご指導の程、何卒よろしくお願いします。必ずやり遂げます。」
熱のこもった決意を述べると、先生はよろしいと言ってまた新聞を読みだした。俺もコンビニで新聞と珈琲を買い、ベンチに座って一緒に読み始める。情報は時に敵を打ち破る刀になり、時に敵から身を守る防具となる。読んでいて損はないだろう。
それにしても紙の新聞というのは、このネットニュースや電子新聞が定着した時代では、レトロで風変わりなある種ファッション。時代という何かに争っている姿勢が素朴な革命家っぽくて良い。
2人で意見を交わしていると、紗宙さん、続いてカネスケが到着。彼らは、まるで旅行にでもいくかのような服装をしている。
カネスケに関してはそれだけではなく、髪を黒から金に変えて、イメージチェンジをしている。
「どうしたそれ?」
「カッコいいっしょ!大学生に戻った気分だぜ!」
確かに彼は、数年前に金髪にしていたことがあった気がした。
「懐かしいな。」
彼は、セットした金髪を触り、乱れている所を直しながら束を作り直す。
「こっちのが俺っぽいだろ?」
「悔しいけどカッコ良い。」
そう褒めると、照れくさそうにしていた。彼は昔から、何故かわからないが金髪が様になる男だ。初めて出会った第一印象が金髪だったからなのだろうか。理由などわからないけど、ただただ黒より金が似合う。
ドヤ顔のカネスケは置いておき、3人に向けて語りかける。
「朝早くから集まって頂いたことに感謝しています。我々の挑戦はすでに始まっています。急ぎ北へ向かい事を成し遂げましょう!」
彼らは、微笑を浮かべながら返事をする。きっとまだ、心の底ではリーダーだなんて思われてないのだろう。しかし、いつかは必ず上に立てるような男になって見せる。心の底を悔しさとモチベーションが入り乱れた。
そんな心境の中で最初の目的地を大宮に定める。大宮には先生の弟が住んでおり、弟の家に先生の車も停めてあるのだという。4人は経費削減の関係で、新幹線ではなく京浜東北線を使い大宮まで向かうことになった。
◇
電車に揺られ、移りゆく景色を見ながら考え込んでいた。
あのまま普通にサラリーマンをしていたら、どのような将来が待っていたのだろうか。後輩から舐められ職場の窓際族。一生平社員で、40過ぎくらいに人生諦めて趣味に没頭。誰からも必要とされない独り身。何かちょっとしたら楽しみを見出したと思えば、テレビの取材をたまたま受ける。そして、平のまんまでも充実してますよ、とか言っている大人になるであろう過酷な運命から逃げ出したかっただけなのだろうか。
いや、確かにこの国を変えてみたい、という強い野望はあったはずだ。でもそれは、惨めな人生から逃げる為の言い訳か。このご時世。いや、いつの時代も普通の人生すら送れない人達がたくさんいる。その中で惨めではあるが、普通の生活ができているだけでまだマシではないか。でも、もう見下されるのは限界だ。誰かの上に立ちたいし成功したい。そんな欲の為に俺は3人の人生を背負い、安定を捨て、修羅の道を突き進む現実を選んだのか。ただ1%にも満たない光を求めて。
そんな事を考えていると、1番大切な門出の日なのにどこか憂鬱な気分になっていた。
先生は書物に没頭している。カネスケと紗宙さんは、早起きで寝たりなかっただろう。また夢の世界へ落ちている。
俺は、スマホの画面を見つめながら考えた。これからの資金はどうするか。恐らくこのスマホも捨てなくてはならない。所持していれば、GPSで居場所が特定されてしまう。いずれにしろ資金源がないので、来月あたりに自動解約されているとは思うが...。
勢いだけで飛び出してきたが、今後はどんな試練が待ち受けているのかな。そんな憂鬱な気分に落ちていると、紗宙さんが寄りかかってきた。とてもいい匂いがする。俺は、しばらくこのままで居たいと思いながら、夢の世界へ落ちていった。
◇
大宮に到着して、車内アナウンスが響きわたり、俺達は夢から目を覚ました。
駅が人で埋め尽くされている。元々主要な駅であるということ。そして、北関東、東北地方での騒乱から逃れて来て、自宅へ帰れなくなった人達が難民として住み着いてしまったからであろう。
俺たち4人は、人混みを掻き分けながら、繁華街を抜けて諸葛亭まで足を進めた。家に着くと、先生の弟である諸葛俊が出迎えてくれた。
諸葛俊の家は立派な邸宅だ。両親から引き継いだというのだが、諸葛俊25歳とその仕事仲間2人の計3人が生活してもまだ余裕があるくらいだ。ちなみに彼は、会社を経営しながら仲間達と動画配信をしている。
「兄さん!成功したら俺も呼んでくれよ!新国家の宣伝は俺がやってやる!」
彼のチャンネルの登録者数は100万人を越えていて、やってくれたら良い宣伝にはなるだろう。先生は頼んだぞと言うと、鍵付きの引き出しから車のキーを取り出した。
「北海道へ渡り、アイヌ独立運動軍と合流する為に、えりも町までの船が出ている仙台へ向かいたい。
そこで2つのルートがある。
1つ目は、宇都宮公国の領内、そしてマッドクラウンの勢力圏である福島を突破し、そこから奥羽列藩連合暴走神使の襲撃をかわしつつ北上するルート。
2つ目は、まだ比較的平穏な群馬、新潟を通過し、山形から奥羽山脈を超えて仙台に入るルート。ただこちらの方が遠回りになる。
どちらにしたいか?」
近道の方が良いに決まっているが、比較的平穏という言葉に魅力を感じてしまう。万が一のことを考えると急がば回れが正解だろう。
「2つ目のルートにしましょう。遠回りではありますが、比較的安全な道を進んだ方がリスクは少ない上に、早く着く可能性だってあります。」
「では新潟方面へ向けて出発するとしよう。だがその前に、必要な物を揃えておこう。」
「あまり検討つきませんけど、食料、衣服、水、テント、寝袋、文具、医薬品、その他生活用品があればとりあえず旅は成り立ちそうですね。」
「あと、何が起こるかわからないし、武器になるような物も必要じゃないか?」
先生がカネスケの鋭い意見に答える。
「そうだな。カネスケの言うとおり、武器になりそうな何かは必要だ。だけども、国が傾いているとはいえ法律は法律だ。あまり堂々と武器を所持していて、警察にでも捕まれば計画もお陀仏となる。いずれアイヌ独立運動軍と合流すれば武器は手に入る。それまでの繋ぎの護身用として何か買っておくのが良い。」
俺は、本格的な計画の始まりに気分が高まり、いてもいられなくなって立ち上がった。
「そうと決まれば買い出しへ向かいましょう!」
こうして3人が買い出しへ向かい、先生は車の準備をすることになった。
◇
買い出し組は、カネスケが武器を買う為にホームセンターへ。俺と紗宙さんは、その他諸々を買う為に大型ディスカウントショップへ向かう。
お店についた頃、紗宙さんの顔色が悪かったので心配になった。俺は、彼女の気を和らげようとヘラヘラしながら力を抜いた感じで気持ちを打ち明けた。
「やっぱり無茶苦茶ですよね。俺の目標。」
「無茶苦茶なだけなら良かった。でも、さっきの直江君の話を聞いて気づいた。私たち、誰かと戦うことになるんだってこと。」
彼女の口調が明らかに不機嫌だ。俺は、とりあえず勢い任せに答える。
「戦うことは覚悟してます。」
すると彼女は、冷たく尖った目でこっちを睨む。
「戦うってどういうことかわかる?!人を殺すかもしれないってことだよ!蒼だけじゃない、直江君、先生、そして私も。」
俺は、今更それに気づき、現実を甘く見すぎていたことを自覚する。自分で選んだ未来には、誰かを守る為、何かを得る為に、誰かと刺し違えなくてはならない日が来るはずだ。そんなことできるのだろうか。
それだけじゃない。戦争の事は、祖父や祖母から聞いた事があるだけだ。実戦すらしたことない俺達が戦場に行ったら、その現実と向き合うことができるのだろうか。
俺は何という道を選び、選ばせてしまったのかと後悔して、つい塞ぎ込んでしまう。でも、後戻りはできない。前に向かうしかないのだ。そう心に言い聞かせて、溢れ出る後悔を押し殺した。
「紗宙さん。紗宙さんだけでも戻ってください。俺は人殺しと呼ばれようが前へ進みます。戦場に出て、気がおかしくなるかもしれませんが前へ進みます。誰かがやらないと何も変わりませんから。」
紗宙さんは、横に並ぶ生活雑貨を見つめながら黙り込んでしまう。そして沈黙と気まずい時が過ぎ、コーナーを出ようとした辺りで彼女が振り向いた。
「帰りたいのはやまやまだけど、やっぱり帰らない。3人に押し付けて、自分だけ逃げるってなんかダサい。それに行くと決めたからには、最後まで行く。」
そう言うと彼女が歩き出す。俺は、不安を隠し通すのに必死でだった。そして心のどこかで、今ならまだ間に合うと考えている自分が居た。
◇
紗宙さんは、あの会話以降ディスカウントショップを見て回っている最中、気を紛らわす為であろうか過剰に明るく振る舞っているように見えた。
テント等を購入するべく、アウトドアコーナーに差し掛かると彼女が言う。
「この計画にかかる、資金はどうなってるの?」
「とりあえず、4人の自己資金から折半。アイヌ独立軍と合流するまでに資金繰りについて取り決めを行い、合流後はそれを運用しようかと考えてます。」
すると彼女は、何かに閃いたように手をポンと叩き、目を見開いていた。
「どうせ遠回りするなら、道中で企業とか団体に交渉してスポンサー探してみるのどうかな?面白そうじゃない?」
「確かにそれは有りですね。でも上手くいきますかね?」
彼女は、ムッとしてからしれっと言う。
「やってみないとわからないんでしょ?」
そう言って、彼女が再び売り場へと吸い込まれて行く。俺はその姿を目で追いかけてから、自分の胸に手を当てる。そうだ、やってみないとわからない。挑戦あるのみだ。
こうして、俺達は必要な物資を購入した。しかし、思ってた以上の大荷物な故に、先生へ電話をして車で迎えに来てもらうことになった。
◇
しばらくすると、先生はバンに乗ってやってくる。頭脳派インテリ系の先生には似つかないどでかい車だ。トランクへ荷物を積み込むと、次はカネスケのもとへ向かう。
カネスケは、公園の駐車場で周りをキョロキョロ確認しながら待っていた。先生がクラクションを鳴らすと、焦った顔でこっちを見た。そして俺が手を振ると、車まで駆け寄り後部座席に飛び乗ってきた。
彼は、大きなバックパックに物を詰め込んでいて、両手で竹刀のようなものが入った長い袋を持っていた。
それについて尋ねると、彼が竹刀のようなものを隠すように横へ置き、まずはこちらからと言わんばかりにバックパックのチャックを開ける。
「木刀、スタンガン、ライター、鎌、鉈、ナイフ、エアガン、ロープ、警棒、鋸、ドライバー、金槌。どうだ色々あるだろ!」
バックの中には、本来の使い方と違う方法で利用される運命の工具や護身用の道具が乱雑に詰め込まれている。俺が目を見開いてバックパックを漁っていると、彼が自慢げにさっき横へのけた長い筒の中身を取り出す。
「そして極め付けにこれよ!」
それを見た俺と紗宙さんは驚愕した。彼が筒から取り出した物は、紛れもなく猟銃だ。バックパックから出てきた物騒なだけでも常軌を逸しているのに、極め付けにとんでもないものが飛び出てきた。
紗宙さんは、恐れながらも興味深そうに尋ねる。
「こんなのどこで手に入れたの?」
カネスケは、これについて喋りたかったらしい。もったいぶりつつも自慢げに語る。
「知り合いの猟師が近くに住んでてさ、ハンターと熊狩りに行くって言ったら譲ってもらえた!」
よくもそんな嘘をついたもんだ、そして騙されて譲る方もどうかと思うが。紗宙さんは、しばらく猟銃へと目が釘付けとなっていた。
まあそんなことはさておき、俺は先生に声をかける。
「物は揃いました。一旦諸葛亭に戻り、これからの事について会議しましょう。そして、本日中には大宮を出ましょう!」
先生は頷くと、住宅街を安全運転で通り抜けながら諸葛亭へと向かう。まるでこんな凶器を所持していることを隠すかのように。
◇
その日の午後。諸葛亭の2階には、4人の姿があった。部屋の空気がどこか非日常的で、結成からまだ半日しか立っていないのに気持ちは既に革命家になってきている。
会議の内容は主に2つ。
1つめは資金の事。
2つめは、計画を進める上での決まりの事だ。
会議が始まると、意外にも初めに意見を出したのは紗宙さんだった
「まず資金に関してですが、行く先々の地域の企業や団体に営業をかけ、スポンサーを募るというのはどうでしょう?」
先生が顎に手を当てながら頷いている。
「なるほど、良い考えだ。私の知り合いの政治家や経営者で、脈がありそうな者に連絡してみよう。」
カネスケもそれに便乗する。
「それなら、俺も新潟にツテのある社長いるので聞いてみます。」
そして彼は、更に続けて提案した。
「それと現実的ではないですが、クラファンやってみるのもありじゃないですか?」
「それも面白いな。出来ることは全て手を出してみよう。」
俺は、人脈もツテもないので、ネット記事で見た話題を咄嗟に出した。
「どうせなら知名度も上げた方が、応援してくれる人も増えるかもしれません。ブログやSNSなんかも活用しましょう!」
先生が浅く頷く。俺は、リーダーのくせに大した意見を言えないことを悔やむ。しかし、そんなこと気にしないといったように話は前へと移り変わっていった。
まだ仮定ではあるものの、こういう計画を立てている時間が1番面白かったりするのだ。
1つ目の議題に関しては、先生やカネスケの人脈が功を奏し、計画がトントン拍子で決められていった。
そして、2つめの決まり事の話へ移ると、先生が俺に提案する。
「君がリーダーなのだから、ここからは私や紗宙にも敬語は止めなさい。その方が立ち位置がしっかりします。」
俺は、違和感を感じつつ、気まずそうに頷く。
「そ、そうですか。では今後は、先生、そして紗宙で統一します。」
紗宙さんは、俺がリーダーということへ違和感を覚えているのか、微笑を浮かべている。
「まあ、リーダーだし仕方ないか。」
先生は、念を押してくる。
「私達も責任を押し付けたりはする気はありません。ですが、最終的な責任者があなたである事を忘れないでください。」
俺は、責任という重圧に耐えられるか不安だったけど、やると決めたのだからやり抜かなければならない。
「わかった。」
それから先生が付け足すように言う。
「あと、私はリーダーに対して、これから敬語を使わせていただきます。」
俺は、さっそく敬語を破棄しようとタメ口を使おうとした。でも、今まで敬語を使っていた相手で、かつ歳上の人間にタメ口を聞くのは勇気がいる。これが憎き会社の上役どもならどんな暴言でも吐きつけてやれるが、相手は尊敬する先生だ。ついつい口をもごもごさせてしまった。
「なんかなれないです、だな。」
「ははははは。徐々に慣れてきますよ。」
そのぎこちない俺を見て、先生はういういしい後輩を見るように笑った。それと同時に、この時から彼が俺にタメ口を使うことはなくなった。
すると、そのやり取りを見ていた紗宙さんが尋ねてきた。
「ねえ、蒼。私も敬語使った方が良い?」
俺は考えた。先生に敬語を使わせておいて、紗宙さんやカネスケはそのままなのはどうなのか。仲間内で待遇の違いが生じてしまうのではないのだろうか。
俺はわからなくなり、慣れないタメ口に噛みまくりながら先生に尋ねた。
「統一で敬語にした方が宜しいですか、いや、良いか?」
「私は、リーダーに指図する権限はございません。貴方様が思うように進めてください。」
彼は答えを教えてくれない。俺は考えた末に結論を出す。
「紗宙とカネスケは、無理して使わなくても良いよ。別に部下でも後輩でもないのだから。」
すると、紗宙の顔が明るくなる。
「ほんと!じゃ、今まで通りでいかせてもらうね!」
カネスケも安堵の溜息をついた。
「堅苦しいの苦手だから良かったぜ。」
俺は思っていた。仮にこの2人でなかったら、暴力をチラつかせてでも敬語を使わせただろう。だが、親友と憧れの先輩に敬語は使われたくない。
こうして多くの議論を重ね、3時間程続いた会議が終わり、4人は出発の準備に取り掛かった。
◇
支度を整えると庭に出る。この家の庭は、ごく普通の一般家庭の庭を少し広げたくらいでなんの変哲もない。小さな倉庫と、洗濯物を干すスペースが設けられている。
これを見て、まだ自分達は帰れるのかも知らないと弱気になりながら、遠くで真っ赤に染まる空を見つめる。太陽がだいぶ傾いてきたようだ。
「日が暮れるまでには、高崎へ到着したいな。」
そんな事をぼやきながら、さっきの話を思い出した。
先生に紗宙か。違和感ありすぎだ。でもこれからは、自分の判断で3人を導いて行かねばならない。できるかできないかではない。やらなくては行けないのだ。
思えば、リーダーといえるリーダーなんてやった事がない。基本的に他人任せな人生だった。言い出しといてあれだが、こんな俺に務まるのだろうか。
どうしようもなく悩んでいると、紗宙が庭へ出てきた。彼女はこんな状況の中、落ち着いた表情で空を見上げていた。
「立ち止まってる時間なんてないんでしょ?もう動き出してるんだから。尻尾巻いて逃げ出したりしないでね。」
そう言うと部屋に戻っていく。紗宙は、ああやってさりげなく俺の気持ちを奮い立たせてくれる。あのクールな優しさには、よく助けられていたものだ。
俺は、震える心を押し込め、部屋に戻ることを決めた。
◇
それから皆に出発することを伝えた。だが、伝えるまえからすでに心の準備ができていたのか、俺が引っ張られる形で家を出る。
そして4人は、バンに乗り込み諸葛亭を後にした。車窓から見える夕暮れ時の雲は、夏の足音を感じさせるような温風に流され、俺たちと同じく北へと北へと追いやられていっていた。
もう動き始めている。過去の事を引きずったり、まだ起きてもいない被害妄想に執着している暇など無いに違いない。
(第ニ幕.完)