第二十一幕!奥州の龍
文字数 7,544文字
もし捕まったら、どんな拷問や虐待を受けることになるのだろうか。そんなマイナスなことが頭をよぎるたびに頭を振った。それから思うのだ、いつかあいつらを絶滅させなければ、枕を高くして眠ることができないだろうと。
◇
しばらく走ると、前方に眩い光と轟音が渦巻く交差点が見えてきた。500mくらい離れていてもはっきりとわかるそれは、もちろん暴走族の陣営だ。
車の所有者の住民から、突っ込んでも良いから暴走族をやっつけてくれと言われている。許可と任務を貰った以上、遠慮や容赦をする必要なく戦うことができる。俺は、渾身の力でアクセルを踏み、うんこ座りでたむろしている暴走神使の後続部隊に突っ込んだ。
奴らは何人か吹っ飛び、壁や電柱と衝突して死亡。近くにいた敵が、包丁やスタンガン、鉄パイプを手に、一斉にこの車めがけて襲いかかってくる。俺は、車を行ったり来たりさせたり、交差点をぐるぐる回ったりしながら、敵を蹴散らしつつ敵将がいると言われている場所に目を向けた。
そして、そこには先生の言う通り、特徴的なバイクに乗ったいかにも強そうな奴がいた。 そいつが部隊長であると確信すると、その一団に向かって車を突っ込ませる。
しかし、脇からバイクが3機くらい飛び出してきて側面を思い切りタックルされ、それにより軌道がずれたので、側近を数名吹っ飛ばして車は停車する。車の片側は損壊したが、突っ込まれた側に座っていた和尚と結夏は、軽い切り傷と打撲で済んだ。
俺達が車を降りると、暴走族のバイク部隊に取り囲まれる。奴らはみんな団旗を所持していて、先端には槍の穂が付いていた。あれで突かれたら、ひとたまりもなさそうだ。俺は、恐怖心を掻き消す為、そして去勢を張るべく叫び散らす。
「この部隊のリーダーは名を名乗れ!!!」
すると、囲んでいたバイク部隊の一部が道を開き、さっきの特徴的なバイクにまたがっていた者が入ってきた。そいつは、スケバンの格好をしていていかにも強そうな女といった感じだ。
「ムフフフ、よくも私の可愛い部下達を虐殺してくれた、わ、ね。」
俺と結夏は、なんとなく気づいていた。こいつは、いわゆる男の娘になりきれていない男であると。そのニューハーフは続けてほざく。
「私は哀子、暴走神使七雄の1人である大崎蔦馬が1の舎弟よ。蔦馬さんの名に置いて、あんたらおよび加担した住民を処刑するわ。」
「青の革命団代表の北生蒼。この国を作り変える男だ。国家の名において、お前をここで殺害する。」
「ふーん、反抗的〜可愛くなーい。」
哀子の気持ち悪い声の前に、俺の機嫌はすこぶる悪くなる。
「降伏するなら今のうちだぞ?!」
「みんな、この男を調理しちゃいなさい!」
哀子が手をあげて合図を出す。すると、バイク部隊が一斉に襲いかかってくる。俺は灯恵を守りながら、襲い来る暴走族の攻撃をうまくかわし、銃で対抗する。暴走族が乗り回している特殊バイクは、銃弾すらも通さない鋼鉄の装甲が施されている。故にバイクを破壊するという戦法を取ることが難しい。だから、本人達をうまく狙っていく必要があった。
灯恵はというと、奴らの中から例の女の子の兄貴がいないか探していた。話によると兄貴の名前は泉ルイ。年齢は21歳で茶髪の地毛、それと額の傷があるのだそうだ。それから、いつも付けているトリコカラーのネックレスが特徴だという。俺もなんとか隙を見つけては、周りを見渡して探してはいたものの、この混乱した状況では中々見つけることができない。
典一と和尚は、相変わらず無双状態を繰り返していた。特に和尚は、今まで実戦に使えてこなかった必殺技を試す時だと言って、はしゃぐ子供のように戦いを楽しんでいる。
結夏は、力の強いヤンキーどもの攻撃を可憐にかわして、隙をついてナイフで相手を仕留める。この人の運動神経や手先の器用さ、それから飲み込みの早さは、先生の天才的な頭脳と並ぶくらい恐ろしく凄い能力だと感心させられる。そのうえ可愛いくてモテるのだから、俺は少しばかり嫉妬してしまう。
結夏の戦いぶりに気をとられていると、灯恵が俺の方を指差して叫んだ。
「後ろ!!」
背後には、金属バットで俺の顔面をフルスイングしようとしているヤンキーがいた。素早く振り向いたが、奴はバットを振り出した後だった。遅かったか。どうしようもないがここまでかもしれない。俺は、死を覚悟する。
でも、天はまだ俺を見放してはいなかったようだ。結夏が投げたナイフがヤンキーの頭部を見事貫き、俺の命運が断たれることはなかった。
それから俺は、この戦いにおいて、なんども市ヶ谷義母娘に助けられることになる。
◇
しばらく善戦を続けると、あることに気がついた。戦場に哀子の姿が見当たらない。ヤンキーどもを蹴散らしながら周囲を見渡すと、遠く愛子(あやし)駅方面に奴らが逃走する姿が確認された。
俺は、典一と和尚に哀子を追いかけることを伝えてから、奪い取った特殊バイクにまたがった。それを見た灯恵と結夏も後ろに飛び乗る。
正直言って、バイクの運転は殆どしたことない。その上に3ケツなんて危なすぎるので、彼女らに待っててくれと伝える。しかし、早くしてとしか言ってこないので、仕方なくバイクのアクセルを全開にして走り出した。
暴走神使の特殊バイクは、その名の通りで特殊な改造が施されている。その為、MAX 300キロまで速度を上げることができる。でも、そんなことをすれば即死確定だ。俺は、哀子を見失わぬ範囲でバイクを走行させる。
奴らは、細い道を利用して俺たちを巻く戦法に出た。バイクの運転に不慣れな俺は、途中で奴らを見失ってしまう。それから狭い住宅街を探し回っていると、そこを抜けるあたりで奴らの一団が待ち構えていた。見失った以上は聞き出すしかない。そう考えた俺たちは、奴らの元へ向かう。
奴らが俺たちに気づくと、その集団のリーダーらしきリーゼントヘアー立ちはだかる。
「哀子はどこへ向かった?」
「知らねえな。」
リーゼントが質問に対してスッとぼける。俺は、彼を消すことに決めると拳銃へ手を伸ばす。
「力づくで吐かせてやる。」
それから、そのリーゼント男へ有無を言わさず発砲。しかし奴は、金属バットで軽々と銃弾を打ち返す。
「なんだ?お前はその程度の力で暴走天使に喧嘩を売ったのか?」
「悪いかよ。」
苛立つ俺を見て、リーゼント男がため息をつく。
「辞めておけ。死に急ぐだけだ。」
そんなこと俺もわかっている。けど、やらなきゃいけない時というものがあるのだ。そう考え、バイクを降りて警棒を構えると、リーゼント男に向かって殴り掛かった。リーゼント男もすぐにバイクを降りる。そして、金属バットを振りかぶり俺を迎え撃つ。
警棒と金属バットが激しくぶつかり合い、まるで映画の剣闘士が一騎打ちしているような感じになっていた。後で灯恵からそう聞いた。
俺は、暇な時に喧嘩の訓練を典一から受けていたので、敵の荒々しい攻撃に付いていくことができた。だが、相手の力が思いのほか強く手が痺れ始め、いつまで耐えていけるのかわからない。
リーゼント男が容赦なく金属バットを振り続けてくる。俺は、何としてもこの状況を抜け出さねばと考え、バットを受け流すと思い切り相手の腹に蹴りを加えた。しかし、相当鍛えているのであろう。全くもって動じる気配を見せない。それどころか、隙を付いてバットで俺の脛を強打してきた。
俺が呻き声をあげながらその場に倒れ込む。奴は、そのまま大きくバットを振り上げ、トドメを刺そうとしてくる。もはや恐怖でしかないこの状況に対して、がむしゃらな蹴りを相手の脛に入れた。リーゼント男もまた、脛を抑えて必死に耐えている。どんな強い奴でも脛は弱点である。弁慶の泣き所というヤツだ。
今度は俺が、警棒をつきの姿勢で構え、リーゼント男の顔面に思い切り突き出す。だが彼は、それを素手で受け止めた。
それからというもの、リーゼント男と俺は素手で殴り合う。もちろん、喧嘩の経験が圧倒的に多いリーゼント男の優勢が続いた。それでも俺は、奴のペースに食らいついていく。しかし時間が経つにつれ、経験値の高い彼の勝利が目に見え始める。俺は頑張ったが、最後にアッパーをもろに食らって吹っ飛ばされた。
地面に叩きつけられ這いつくばる俺に、結夏と灯恵が駆け寄ってくる。リーゼント男が俺にとどめを刺そうと、金属バットを手に向かってくる。その時、彼の側近であろう茶髪の男前が、彼の利き手を掴んで抑えた。
「待て龍二!こいつらは生かしといてやらないか?それに女子供も怯えている!」
リーゼント男は、勢いを挫かれて若干苛立っている。
「なんだズミール。この男は、いつ暴走神使に残酷な殺され方をするかわからない。だからせめて、俺の手で楽にさせてやろうと考えただけだ。それに女と子供には手を上げる気はねえよ。 」
「いや、そうだけどさ。俺思ったんだよ。龍二の喧嘩にあそこまで付いていく根性がある奴、久々に見たなと。だからもしかしたら、こいつなら暴走神使を壊滅させてくれんじゃないかって。」
龍二は、彼の考えに納得がいっていないようだ。
「あ?そう簡単に暴走神使が滅びるかよ。」
「けどな、少しでも可能性があれば。」
ズミールが必死に説得を試みた。すると龍二は、面倒臭そうに背後へ金属バットを放り投げる。
「仕方ねえな。今回はズミールに免じて見逃してやるよ。」
ズミールが龍二に深々と頭を下げると、龍二はズミールを睨む。
「あんまり見逃し過ぎて、哀子に見つかったらどうなるかわかってるのか?」
「ああ、わかってるよ。想像もしたくない。」
龍二が俺たちの方へ身体を向きなおした。俺と結夏は、龍二をガン見する。すると龍二は、先程とは変わり静かな口調で話す。
「絶対に死ぬんじゃねえぞ。」
俺は何も言わない。龍二の中でこの喧嘩は終わったようだが、諦めが悪い俺の中ではまだ続いている。彼を殺し、哀子も殺すまで。
俺が執念深く龍二へ火花を散らしている時、灯恵がズミールに尋ねた。
「もしかして泉ルイさん?」
「え、なんで本名知ってるの?どこかで会ったかな?」
「あーやっぱり。錦ケ丘で仲良くなった女の子が言ってた特徴と一緒だったから。」
ズミールの顔が、動揺から解き放たれるように明るくなる。
「茉里に会ったのか?」
彼の妹は、茉里という名前らしい。灯恵は頷くと、なんの抵抗もなくスラスラと交渉を切り出した。
「あのさ。哀子を討ち取るのも目的なんだけど、泉ルイを連れ戻すのも私たちの目的なんだよね。暴走族なんて辞めて、錦ケ丘に戻ってあげてよ。」
ズミールは、少し戸惑ったように見えたが、首をゆっくりと横へ振った。その態度に疑問を抱いた灯恵が説得しようと話を続ける。
「なんでだよ?妹さんすごく悲しんでた。それに家族を守るためなら、なおさらそうするべきじゃん。」
ズミールは、口を瞑りながら俯いている。そんな彼へ灯恵が追って尋ねる。
「なんか他に理由でもあるの??」
すると彼は、押しの強い灯恵に対して、少しイラついたようだ。
「戻りたいけど戻れねえんだよ。」
爽やかで男前の容姿とはかけ離れた冷たい声。灯恵が怯むと、彼が悔しそうな声を漏らす。
「龍二の一家が殺されるから。」
龍二が何も喋らず、ズミールから顔を背けている。何か事情があるようだ。灯恵は、それについて聞かせてくれとズミールに頼んだ。
彼は、寡黙な龍二を横目に見ながらも、その件について語ってくれた。
◇
龍二とズミールは地元の友人で、2人共喧嘩が強いことで有名だった。特に龍二は『奥州の龍』という異名が付くほどだ。
ある日、地元が大崎蔦馬率いる暴走神使によって侵略され、彼の友人や恋人、それに家族も囚われの身となる。
大崎蔦馬は、2人が強いことを知っていた。その為、囚われた人々を人質にして、彼らへ軍門へ下ることを迫った。
2人は元々暴走神使関連の人間とは仲が悪かったのと、族の方針も考えと真逆だったことから、入る気などさらさらなかった。しかし、人質を取られていたので嫌々加入したのだと言う。
それからというもの、人質をダシに様々な悪事に加担させられた。一度だけ龍二が反発した時は、彼の恋人が八つ裂きにされて殺され、更には焼いた死肉を食べることを強要されたのだ。もちろんそこで従わなければ、また彼の親しい人間が同じことをされることは目に見えている。
だから、2人は心を鬼にしてそれを食べたのだと言う。
◇
その内容があまりにも壮絶だったことから、結夏が嘔吐してしまう。大切な人を殺され、おまけにその死体を食べさせられる。胸糞悪いにも程がある話だ。
語りの後、彼が辛辣な表情で言った。
「人質の処刑は連帯責任だ。俺が裏切ったことで、友達が酷い目にあう姿を見たくない。だからお前達に付いていくことはできない。」
灯恵は何も言えず、ただズミールの顔を見ていた。ズミールの目が酷く充血していた。
「茉里に伝えてくれ。兄ちゃんは生きている、そしていつか必ず迎えにいくと。」
声を震わせながら想いを口にする彼を見て、灯恵もついもらい泣きをしてしまう。ズミールは、暴走族とかいう鬼畜集団に加入させられてからも、家族への愛は変わらず健在だったのだ。
「ズミール。もう、いいよ。」
そう言ったのは、隣で黙って話を聞いていた龍二だ。ズミールが彼の顔を見ると、彼は話を続ける。
「お前は死んだってことにすっからさ。早く妹に会いに行ってこい。」
「は、何言ってんだよ。そんな無責任なこと俺にはできねえぞ。」
すると龍二は、彼を静かに諭す。
「もし、哀子や蔦馬にお前の妹を殺害しろって言われたら、お前はできるか?」
ズミールは、引き下がろうとしたが、友達の真剣な表情を見て黙り込む。
「あいつらは、そんなことを平然とやる奴らだ。親友がそんなことをさせられている姿を、俺は見たくない。」
「けど、俺が裏切ったことがわかればまたあいつらは...。」
龍二が背を向けてバイクの方へ歩き出す。
「もう言うな。あとは俺がなんとかするから、お前はこいつらと一緒に行け。守るべき何かが見つかった以上、親友としてそれを邪魔することはしたくない。」
ズミールがまだ納得していないようだ。それを感じ取った龍二は、振り返るとズミールの目をまっすぐ睨む。それから一瞬のことである。彼がズミールの腹へ拳を入れた。ズミールは気を失い、その場に倒れ込む。
龍二は、彼を丁寧に地面へ寝かせると、俺の目を見て言う。
「こいつも連れて帰ってくれ。」
イズミルが戻らなければ、彼の家族がどうなるかもわからない。それでも親友を救いたかったのだろう。言葉の節々からその覚悟が垣間見れた。
「お前はどうする?」
「上手くやるから心配はするな。それからさっきも言ったが、お前らは早く身を引いた方がいい。暴走神使の恐ろしさを目の当たりにする前に。」
冷静に考えればその通りなのかもしれない。でも俺は人間不信だ。彼にいくらやらせない事情があったとしても、まだ味方になったわけでもない。もしかしたら演技が上手い暴走族のスパイの可能性も捨てきれない。だからこそ、暴走族に舐められたら終わりだという危機意識から、いつもの強がりが前面に出てしまう。
「それはできない。早くそこを退いてもらおうか。」
「それはできねえな。お前が哀子の場所にたどり着くこと即ち、俺がお前に負けたことになる。この際、勝ち負けにこだわる気はないが、俺は強さを買われて暴走族に身を置いている。もし一度でも敗北したら俺の家族はまた殺される。」
自分が無茶をしようとしているのはわかっている。だが、ここで舐められて他人の話にコロコロと流されるリーダーになりたくない。だからこそ、我を突き通すのである。俺は、結夏のナイフを勝手に取ると、両手で握って構えた。
「どけよ。」
しかし、足がやけに震えていた。アドレナリンが落ち着いてきたのであろうか。俺の中に少しづつ不良に対する恐怖心が戻り始めていた。
龍二は、イキリ立つ俺に対して、ドスの聞いた声で言い放つ。
「さっきは見逃したが、2回目はねえぞ。」
「上等だよ。」
張り詰めた空気が再び漂いだす。そんな時、灯恵が俺の腕を引っ張った。
「もうやめろよ。ここで戦っても死ぬだけだぞ。」
その手は思ったよりも力強く、彼女の熱い想いと比例しているかのようだ。正直振り払うという選択肢もあった。でも、心のどこかで闘争を求める一方、龍二への恐怖心から逃げ出したいという自分もいた。彼や彼女の言葉は、その弱い自分の言い訳になっていく。
ナイフを収め、目の前の彼を睨みつける。彼は、特に警戒することもなく、冷めた目つきでこちらの様子を伺っていた。
「そのガキの判断は正しい。」
俺は、気持ちを落ち着かせてから、灯恵の腕をどける。そして一歩前へ踏み出し、最後の粋がりを彼にぶつけた。
「今回は退いてやる。けど、俺は必ずお前達を滅ぼしにまた現れるだろう。」
「その時は楽しみにしている。」
「必ず哀子と大崎蔦馬を討ち取りに戻ってくる。その時まで死ぬなよ。」
龍二が薄ら笑った。俺は続けて尋ねる。
「人質さえ助けることができれば、お前は暴走天使を抜けるのか?」
龍二は、天に浮かぶ月を見つめながらこう答えた。
「果たしてそんな日が来るかな。」
彼が見逃してやるよとばかりに、俺たちから背を向けた。俺は、それ以上何も言わず、バイクの後ろへズミールを乗せる。そして、結夏がズミールのバイクにまたがり、その後ろに灯恵が乗った。それから4人は、数キロ離れた先生達のいる本陣へ、夜道を颯爽と駆け抜けて戻ったのである。
その道中で思ったことがある。それは、隣で2ケツをしながら並走する義母娘のことだ。結夏は、二輪の免許は持っていない。しかし、少し運転しただけでそれなりに乗りこなしていた。そんな姿は、また俺を感心させてくれた。そしてまた思うのだった。きっと昔、無免許運転していたんだなと。
◇
俺たちが去ったことを確認すると、龍二率いる哀子親衛隊もその場を退いた。
そして、俺たちが本陣に戻る頃には戦いが収束していて、何人か死傷者を出してしまったものの、錦ケ丘市民の勝利で幕を閉じていた。戦いも終わり一息つきたいところであるが、本当の戦いはまだ終わりが見えていない。俺は、明るくなり始めた空を見上げながら、次の戦いの事を考えていた。
(第二十一幕.完)