第40話

文字数 478文字

僕は満足していた。
こんなにかわいい彼女と寝食を共にする。
バンドにも加入してもらって、仕事以外はいつも一緒。
近所のスーパー銭湯に歩いて行って、酒のんで。
休みが合った日は、少し遠くの日帰り温泉巡り。
帰って来たその足でスタジオへ。
終わったらメンバーを部屋に上げて、酒のんで。
あきが作った油揚げ焼いたやつ。
今も、いちばん美味しかった料理。
仕事の日は少し遅い時間にマルエツで買い物。
良くスルメイカ買った。
本当に、あきが来る前とはガラっと世界が変わった。
だから僕には彼女が見えなくなっていたのかもしれない。
「優しくない」
と言われた。
そんなつもりはなかった。
今思えば、手紙そのままの言葉を期待してたんだろう。
言えなかった。
態度でわかるだろ?とか思っちゃった。
あきが押入れにレディコミを隠しているのを見つけてしまった。
読んだ。
セックスの時、「わたしだって、イキたいんだよ!」と怒られた。
そんな事が、後々まで響いた。
最初のすれ違い。
その時僕は、彼女が過去の男と僕を比べて、物足りないんだろう。
そう思った。
そしてそれは、僕がずっと引きずってきた気持ちと見事に一致してしまった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み