第38話

文字数 515文字

来たわよ、はるちゃん。
最低限の荷物を車に詰め込んで。
仕事も、友達も、元旦那も、ぜんぶきれいさっぱり。
わたし、はるちゃんだけと生きてくんだ。
あの夏、わたしたち夕方にはお家に帰らなきゃならなかった。
わたしたちまだ子供だったから。
でも、もううちには帰らない。
帰るうちは、ふたりのもの。
あの夏が、ずーっと続くんだ。
ふたりずっとお外に居て、熱風を感じて、汗かいて、脱いで、抱きしめ合う。
そのうちにかわいい子供たち。
わたしたち、永遠の夏を外で過ごすんだ。
薄暗いお部屋に電気を灯すんじゃなくてさ。
おひさま浴びて。
ふたりで居たら、何にも怖くない。
何でも出来るし、何にでもなれるんだ。
ね、はるちゃん?
はるちゃんの実家にしばらく厄介になって、お部屋探し。
あの、ふたりの場所は今どうなってるかな?
あそこに行ったら、はるちゃん思い出すかな?
案外その近くに、不気味な深緑の壁した安アパートを見つけて、わたしたち引っ越したんだ。
夢に見た生活が始まる。
足りない家具や家電を探しにリサイクルショップ廻るのも、近所のスーパー銭湯行くのも、マルエツでお買い物するのも、ぜんぶはるちゃんと一緒だ。
いちいち手を繋いで。
ああ、生きてて、この世界が続いてて良かった!
でもね、
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