第48話

文字数 464文字

夏のある日、仕事中会社に電話。
いよいよだ。
あまり気が進まないけど、あきの希望で出産に付き添った。
初めての事で大変ではあったが、初産としては軽い方だったと思う。
僕は終始他人事みたいで、あきはがっかりしたかも知れない。
優しくない。
どうしても、わからない事をわかったふりが出来ない。
それが最愛の人の為だとしても。
嘘をついて傷付く事から自分を守る方が大事。
冷血。
人でなし。
自分を責めてもそれは、なかなか変わらなかった。
母子共に順調。
あきの両親の助けも借りて長男は育っていった。
僕は真っ直ぐ家に帰れなくなっていて、仕事が早く終わるとスーパー銭湯に立ち寄ったりしていた。
お義父さんに合わせて飲むビールが苦痛で、いつも風呂でえづいた。
しかし、赤ちゃんの存在は僕に居場所を与えてくれた。
身勝手な愛情。
自分かわいさ。
この頃から、子供のおかげで生きていられた。
仕事帰りには毎日書店に立ち寄り知育玩具を買って来た。
泣き止まない時散歩に出ると、線路沿い、電車を見ると泣き止んだ。
新幹線とか、貨物列車とか、長い方が良かった。
それで長男は鉄道好きになった。
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