第45話 決着?

文字数 4,562文字

「アリサさん巻き返しました! 4対4のイーブンですね。では第9問で、ラスト問題となります! もう他の画像は用意しておりません。
すなわち、これが泣いても笑っても最後の問題、ファイナルラストフィニッシュバトルとなります。では行きます! その画像とはこちらです!」


これはまたしても怒虎か? そしてその下には怒虎よりも大きな巨大亀……成程。これは中国で北を司る四神の【玄武】であるな? 因みに玄天上帝とも言う。
怒虎はこの様な霊獣とも交友関係があるらしいな。かなりのコミャニャケーション能力だ。否、友好ではない。この画像内には間違いない主従関係が映し出されているな。そう、怒虎が玄武の上に乗っているという事実がそれを物語っている。玄武よりも身分が上だという事だ。あの巨大な霊獣までも配下にしてしまったのだろうな。スゲエ……それも強制した訳ではなく、そのカリスマ性の高さを知った玄武の方から

「さあ、わたくしめの無骨な背ですが、もしよろしければお乗り下さい」

と、目が合った瞬間に彼の意思に反し自然と口から出てしまったのだろうな。怒虎にはそう言う不思議な魅力がある。
しかし、この問題を最後に持ってくるとは運営もなかなかやるな……そう言えば……思い出してほしい。決勝戦の1回戦目の一問目のネタも怒虎であったな。



朦朧とした意識の中再会した彼らがぶつかり合い雌雄を決そうとする悲しすぎるシーンだ。そう、この大会は、怒虎で始まり、怒虎で終わっている。奇遇な巡り会わせだ。この運営は、怒虎を崇拝する信者の集まりなのだろうか? それとも他に何か理由が? む、そんな事はどうでもよかったな。
そうだ、最後、そうなのだ、これが最後の問題なのだ……行け、アリサよ……勝利は後、

【たった一つ】

なのだ……! 

「最後のサイコロタイムです。やあ! 6ですね。アリサさん先攻です」

「……よしあれで行ってみるか」

「どうぞ」

『えーと、ここから東ニャンアジアのニャンボジアのニャンコ―ルキャットまでお願いします』

『はい! 本日は水陸両用タートルタクシー亀江恵絵柄得ゑ餌(カメエエエエエエエ)! クスデス協会をご利用いただき誠にありがとうございます。私共は安全第一で、無事故無違反無頓着で頑張っております!
この度運転手を勤めさせていただく亀梨一哉(かめなしかずや)と申します。因みに私の座右の銘は、3歩進んで2歩下がるです! その思いを胸に抱き、目的地にゆっくりと、じっくりと、まったりと、のんびりと、のったりと、のらりくらりと、ノロノロと、自分のペースで出来る限り遠回りし、時折朝寝、昼寝、3時のおやつ寝、夕方寝、夜寝、深夜寝、明け方寝を挟みつつ、確実にお届けさせていただきます! ここからニャンボジアですか……現在地が、かにゃ川県のネコハマですから、陸路12年と4ケ月。海路23年と3ケ月の合計35年と7ケ月後には到着しますねー』
                  
『そうですか……じゃあお願いします……って……これじゃ着く頃には寿命で死んじゃうニャン♡』

『そんなに早く死んでしまうなんて。あなた方猫って生き物は短命なんですねw』
       
『普通ニャン♡♡』
ドドッ

「ニャンコ―ルキャットですかあ……とてもかわいい響きですね。名前から推測するに猫が沢山いる世界遺産なんでしょうね? 私も行ってみたいです♡では白川さんです」

「くそー分かんねえ」

「時間はありますので」

「大丈夫だ。今降りて来たぜ!」

「そうですか? ではどうぞ!」

『地面が動いている? やはり私の仮説は正しかったんにゃ。ん? 私か? 私の名前は、ニャリレオ
 △△
(=^ω^=)ニャリレイだ』
ドドッ

「亀が地球と見立て、それが動いていると思ってしまったんですね? 狭い世界ですね。うーん……歓声もどちらとも言えない様な。また正直分かりませんね」

「クッこれは俺でいいだろ?」

「私だって負けたくないわ!」

「うーむ少し考えさせて下さい……」

「またかよ……」

「優柔不断ねえ」

「決めました! またも皆さんの力を借りようと思います」

「またかよぉ……もういいよ……」

「申し訳ございません。ですが、最後の最後なんです。しっかりと白黒付けたいのです。アリサさんも良かったですが、白川さんの猫の顔文字も可愛かったですし……」

「え? 顔文字ってなあに?」

「知りませんけど?」

「えっそうなの? 今あなたが言った言葉だよ? ちょっと良く考えてみてよ?」

「忘れました」

「ならしょうがないかぁ。でもでもネタでなくて顔文字が可愛いからってそこを評価するのは違うと思うよ? 最後だからこそネタのみで勝負すべきでしょ? 後さ、それってどこにあった物なの? 私には見えなかったよ? 台詞の間にあったの? それとも最後?」

「だから知りませんってww」

「そっかwwwww」

「では、アリサさんが面白かったと思う方々拍手お願いいたします」
パチパチパチ

「ありがとうございます。では、白川さんが面白かったと言う方々拍手お願いいたします」
パチパチパチ

「全く同じですね……」

「そうか? 俺死ぬほど耳がいいけどさ明らかに俺の方が1デシベル位上だったぜ?」

「嘘突くなー!!」

「決めました! この問題では決着が着かなかったという事にします!」

「うそーん」

「結局こうなるのか……」
下唇を噛み、悔しそうにする白川。

「では、特別にもう一問挑戦して頂きます」

「くっ まあいい。やってやるぜ!」

「次こそは圧倒的な差をつけて勝つ!!!」

「しかし問題が一枚もありません……どうしましょうか? こんな時、先輩ならどうするんでしょう? うーん」

「うーん、あんたに任せるぜ」

「わかんないよ! そっちで考えて?」
 二人も考える事を放棄した。両者共に脳が疲弊している筈だ。少しでも休みたいと考えたのだろうな。

「ですよね……じゃあこうしましょう! 過去に出たお題をシャッフルして、選ばれた一枚でもう一度戦うってのはいかがでしょうか?」

「ああ、これがいいんじゃない?」

「いや、それだけは絶対に駄目だ。既に見た事がある物は絶対NGだ。やはり初見のリアクションを楽しみたい」
こんな時でも白川は完全に初見で出て来るお題を心から楽しみにしている。お笑い芸人とはこうでなくてはいけない。

「別にそれいいのに……どんだけ自分に厳しいのよ……疲れてる筈なのに……」

「多分死ぬまでこんな感じかもな……おめえだって内心そうなんじゃねえか?」

「う、言われてみればつまんないわね……あ、あれ? 白川さんがちょっとかっこよく見えて来るじゃない? (私には竜牙さんが居ると言うのに……敵なのに……何かドキドキしてくる……正気に戻れアリサ!!)」

「ん? 何だよその目は? 気持ちわりいな」

「知らない!!」

「あっ、閃きました!」 

「なんだ?」

「お客様の中で、面白画像を持っている方いらっしゃいましたら、提供お願いします! それが見つかればその問題で争っていただこうと思いますが、いかがでしょうか? これは私のアドリブです。もし他の案がありましたら、そっちに変更する準備も出来ています」

「それでいいと思う」

「俺もだ」

「そうですか? じゃあ皆様の中でお題に出来そうな画像をお持ちの方! 挙手お願いいたします!」
シーン

「誰も居ない?」

「もう少し待ちましょう!」

「むぃんぬぁだすぁぬぁいのぬぇ? ……ふぁっ! あつぁるぁすぃスィヌァルィオがうくぁんだうぁwヒロウィンうぁぬぉくぅお。……すぁあ……えぐぁいたとぅうるぃぬぃうぐぉいつぇくるぇるくぁすぃら?」
む! この喋り方は蘇我子であるな? また仕事か……
訳「みんな出さないのね? ……ハッ! 新しいシナリオが浮かんだわwヒロインはあの子。……さあ……描いた通りに動いてくれるかしら?」
そう言いつつ蘇我子は、スマホで画像検索を始める。

「どなたかー?」

「シーンとしてるね。こんなに沢山お客さん居るのに……」

「ゆっくり待とうぜ。みんな真剣に選んでくれているんだ。客の立場になって考えても見ろ! 自分の出したお題がラスト問題になるんだぞ? お題のせいで盛り上がらなくなる危険性もある。そして、俺達の未来もそのお題に掛かっているんだ」

「そうかもしれないけどさ……誰かが出してくれるんじゃね? って、みんな思っていて誰も出さないパターンじゃなきゃいいけど」

「うるせえ! 信じろ!!」

「はいっ!」
だが、客は静まり返ったまま。誰一人手を挙げようとしない……そして、5分程の静寂が続く……それも仕方のない事。客も楽しむ為に来ていたのだ。そして、まさかこのラストバトルのタイミングで画像の協力を求めて来るとは思いもしなかったのだろう。
「ゆぉすぃ、くぅをるぇぐぁいいうぁ」

訳「よし、これがいいわ」
ぬ? ……何かを見つけたのか? もしや蘇我子はお題の写真を考えてくれていたという事なのか? 何故だ?

「ふぁい」
訳「はい」
すると? VIP席から手が挙がる。

「はい? ……あ、あなたは!!」

「わつぁすぃぬぉむぁぐぉぬぉしゃすぃんぬぁんどぅえすけるぁど、むぉすぃよくぇるぇヴぁくぉるぇをつくぁとぅえ?」
訳「私の孫の写真なんですけど、もしよければこれを使って?」

「あっ? まさか? 橋田蘇我子さん!?」

「はくるぃょくぬぉあるつぁつぁくぁいよぬぇ。こつぉすぃうぁはつぉくぬぃ……くぉんぬぁむぉぬぉどぅえおゆぁくぬぃにつぁつぇるくぁうぁくぁるぁぬぁいくぇどぅ……」

訳「迫力のある戦いよね。今年は特に……こんな物でお役に立てるか分からないけど……」
ニィッ
口では笑っているが、目が一切笑っていない。

「助かるわ!」
アリサが親指を立てて蘇我子に向ける。しかし、それには反応していない様だ。

「あれ? ノーリアクション? 耳が遠かったのかしら? 老人だし」

「何と何と何と! 橋田蘇我子さんからお題を提供頂きました! 感謝です! これは盛り上がりそうです!!」

「いぅえいぅえ。すつぅえくぃぬぁすぃあぅいをむぃすぇつぅうえくるぅえつぅあおるぅぇいゆぉお」」

訳「いえいえ。素敵な試合を見せてくれたお礼よ」

「他に提供してくれる準備をして下さったお客様には大変申し訳ありませんが、いつまでも待っていては終了時刻が遅れてしまいますので、私の独断ですがこのお題に勝るものは無いと判断いたしました! では、これこそが正真正銘の最後の最後。ファイナル最終フィニッシュジ、エンド問題です! この記念すべき素敵なお題を頂いたので、特別ルールとして、最終問題は勝者にはなななななんんと9京ポイントを贈呈します!!」

「うおおおおおお」

「やったあああああ」

「すごーおおおおおい!」

「超エキサイティィィィィンンンンングゥ」

「蘇我子さんナイスうううううう」

「9京! 9京!!」

「フンガーフンガー!!」
会場内の観客達は大盛り上がりだ!

「……おいおい、1でも9京でも変わらんだろ! 下らねえ事で盛り上がりやがって! バラエティ番組に染まってんじゃねえ!」
冷めた目で見る白川。

「私は9京ポイントよりも、休憩ポイントで一休みしたいわ」
こんなところでも上手い事を言うアリサ。脳が疲弊していないのか? 本番で力が出せなくならぬよう気を付けるのだ!

「ノリが悪いですよ白川さん。では、皆さま! スクリーンにご注目下さい! どうぞ!」
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