第31話 ベスト6決定

文字数 7,295文字



先程の神獣の怒虎である……が……なんと! 少し成長しているな……神獣から真の神へと進化した姿か……神々しいな……そして当然の如く自動車の運転席で運転をしているではないか! しかしでっけえ車であるな。
強靭な肉体と共に知性も有しているというのか? その神獣が、前にいる何かに怒りを露にしている様な画像だ。
最早追われている者の人生は終わったも同然であるな。少々早いがご冥福をお祈りしよう。
一体どう言えばこのシリアスな画像を面白く出来るのだろうか?

「はい!」

3番が手を挙げる。

「3番の方どうぞ!」

『待てー! ルニャーン!!』
ドッ
「一見猫だけどノレパン3世に登場する小判型刑事だったんだね? 猫に変装しているのかあ? ポインツは……6500か、いい感じだね」

「はいっ」

「おっ4番か。頑張るね! どうぞ!!」

『猫夜間高速バスの試験に落ちた若者のやけっぱちの暴走行為が収まらない』
ドドッ

「猫夜間高速バスって、映画の怒鳴りのトトロに出てくる猫の顔をした乗り物だよね? あれって普通の猫が試験を受けて合格した者のみがなれるもんだったのか……初耳だなあ。 で、ポインツは……? おおっ 9000か! 凄いぞ!!」

「はいっ」

「またも4番か? 君の引き出しは一体幾つあるんだ?」

『今度はこっちの番だぜ? サザメさん!!』
ドドッ

「これは……アニメのサザメさんのオープニングの、♪お魚くわえたドラ猫ッ 追いかけて♪裸で、駆けてく、淫らなサザメさん♪ 
って言う歌詞の、追いかけられたドラ猫が復讐のために運転免許を取得し、逆に車に乗って追い掛け回しているシーンなのか? すごい執念深い猫だぜ! ポインツは……8000か、いいねえ」

「はいっ」

「おお8番の火村さんどうぞ」

『適当に部品組んでボタン押したら突然走りだしちゃったよー! お願いー止まってー』
ドッ

「天才猫現るぅ! ポインツは7000か」
ピピピピー

「ああ時間が来てしまった様ですぅ。取り敢えず1回戦は終わりだ! 画像班の方! 選手達の累計ポインツを集計してくれ!」

「はいっ!!!!」
マイクはつけていない筈だが、観客にも届かんばかりの大きい返事をする元気一杯の画像班。

1 6500  8
2 17000 6
3 29600 3
4 34700 2
5 20700 5
6 45700 1
7 7777  7
8 25100 4
スクリーンに、1番から順に得点とそれぞれの選手の順位の書かれた表が映し出される。

「という事は? 上位6名の 6番 4番 3番 8番 5番 2番の英雄達が、見事次の戦場へと進出だぁーおめでとう!」

「アリサ! アリサが残ったわー! 凄いー」

「アリサちゃんおめでとうー」
ケイトも心の底から喜んでいる……美しき笑顔……だが……その笑顔が何故か寂しいのだ……何故だろう? あの女神の笑顔は、鬱で地べたに突っ伏している人間ですらその笑顔を見ずとも鬱が完全回復する程に効果の高い笑顔の筈なのだが……アリサはその笑顔を引き出す事が出来た。いとも容易く!! それに引き換え私と来たら……こんなにも愛しているのに、彼女を喜ばせた事は一度たりとも無いと言う事。
その事実が重くのしかかっている……はあ……何故か素直に喜べず、更にはアリサに小さい嫉妬心を感じてしまう……いけない男である……

「フンガー!!!」
フンガーもアリサが勝った事は理解出来ていて、喜色満面の笑顔で咆哮している。

「ば、かな……そんな馬鹿な……俺が、この俺様が……こ、この広大な宇宙の中で、世界一面白い筈、な、のに……通信教育で1ヵ月もの長い間お笑いを猛勉強したこの俺様が? 一回戦で? 一回戦でぇ……?」
そして、ここで初の脱落者が……そう、周様が膝から崩れ落ち、頭を抱える。
現在の周様は、伸ばす量も過去最低で、最早一般人と大差ない程に退化してしまわれた。
だがこれで、自信と語尾を伸ばす量の関係性がリアルでもはっきりと証明された訳だ。
そして、最下位が信じられない様子だ。だが、彼以外の選手は順当な結果と思っている。と言う事は内緒にしておこう。 
ああ、そしてそれと同時に、最後の砦であった周様が脱落。そう、伸ばせる男性陣がこの瞬間をもって絶滅したのだ。
もう文字数稼ぎ出来る者は、ニューフェイスで唯一の女性である蘇我子様しか残っていないのだ。
ぬ? まだ一人残っているのだからいいではないか? であるだと? そう仰る方の気持ちも分からぬではない。だが、蘇我子様は齢90。現代の日本人女性の平均寿命は2018年度の調査によると、84歳と言われていて、彼女はそれをとうに過ぎてしまっている。故に、末永く稼いでくれるのか? と問われれば、それを自信をもってイエスとは言えない。
いわばこの小説は、風前の灯火に等しいのだ。お願い……誰か……助けて……

「まあ、こういう事もあるよw来年もあるから頑張りさないwww」
落ち込む周様を励ます心優しいアリサ。……

「うう……おチビちゃんも、俺のガンバレネタで頑張れよ」

「いいわ。あんたの意思は私が受け継ぐから安心して!」
Alisa job level up!  learning anime laughter

アリサは職業レベルが上昇し、アニメのネタを習得した様だ。
白川の懸念通り、アリサはどんどん成長している。アリサは周様からガンバレネタの極意を引き継いだ。

「アリサちゃんおめでとう! 奇跡的に最下位に7らずに済んだよ。7位で7777ポイントか。偶然とはいえ恐ろしいよ7。
それにしてもみん7切りがいい点数7のに、僕だけ一桁まで細かく採点されていたのは7んでだろうね?」

「記憶に残るわね」

「こん7んだから一生一位は取れそうに7い7」

「辛いところね。あ、でも1万人位で争う大きい大会に出て、7位に7れればか7りの順位よ? あっ伝染っちゃった!」

「えっ? 伝染った? 7にが? まあいいや。そうだね。でも、そん7大規模7大会あるか7あ? でももしそこに出場したとしても7777位で終わりそうだけどね。
じゃあ僕は舞台袖の特等席で応援してるよ」

「七瀬さん?」

「え? 7に?」

「……あの」
ジー
アリサは突然七瀬に興味が沸き彼を凝視する。一体どんな人物なのか? 今の自分なら調べる事が出来るかもしれない。そう、あの万物調査を使えば……今すぐにでもわかる。見たい!! 知りたい!!! そんな気持ちを抑えきれずにいた。

「ど、どうしたんだい? 目が怖いよ?」

「え……と、ちょっとおでこにゴミが付いているみたいで……背の高い私が取ってあげる」

「え? そう7の? 多分自分でも取れるけどまあいいや」

「はいっ!」
それを聞くや否や背伸びして触ろうとするアリサ。だが……

「あっ、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、あとちょっとなんですが届かないです( ;∀;)」

「全然届いてねえだろww」
満面の笑みの白川。

「確かにw無理しないでw足つっちゃうわよww」
アリサの無謀な挑戦に、周りの皆は笑ってしまう。

「あっごめんごめん」
七瀬は、アリサにおでこを差し出す。
そこはアリサには青白く光って見える。クラスチェンジでMP回復したと表記されていたので使える様になったのだろう。

「お願いします」
ポチッ ブゥン

ナナセブンシチ LV29 ♂ 国家公務員

力 77     
素早さ 177    
体力 77      
賢さ 177 
運 777  
HP 154 
MP 354  
攻撃 77
防御 177

スキル
☆☆☆セブンスセンス 消費MP77 
☆☆☆ 幸運限界突破
☆☆1か7か? 消費MP7
☆☆強運散布

満腹値   77/100

状態異常 7し

E,しろいTシャツ               
ジーパン 7イクのシューズ ラピスラズリの指輪
好き7もの バ7777777マン ラピスラズリ 77つの習慣

嫌い7もの ブラックダイア 77つの大罪  77フシ

「わーきれーい。虹色だあ。しかもところどころに数字の7があるわww初めてかも♡へえ、国家公務員で、ブラックダイアが嫌いなんだ」
ぬ? 虹色とは? まさか枠の色の事を言っているのか? 現在私のスカウタァは故障中、いつもは最後に付ける解説が出来ていない。申し訳ない……

「え? 7,7んでその事を?」

「ん? 何言ってんだこのチビ? どこ見て話してるんだww寝ぼけるにはまだ早えぞww」
白川も明後日の方向を見ながら話すアリサを見て反応する。

「ひみつーww」

「で、でもそうだよ。ブラックダイアは、幸運を低下させる力があるから嫌い7んだ」

「え? ま、まっさかー」
前回訳あってアリサは黒い宝石を入手している。それの名前は分からないが、アリサの幸運は奇遇にも1だ。
だがアリサは、今持っている宝石が、ブラックダイアという事には気付いた。

「持ち続けていると不幸7最期を遂げるって噂だよ」

「へえー。ま、いっか綺麗だし」
だが、彼女は七瀬の話を信じずに保持する事を選択した様だ……

「え? 綺麗だしって? まるで実物を見た事があるみたい7言い方だね。まさかアリサちゃんが持っているの?」

「え? ううん? 一つも持ってないよ?」
平気で嘘を突くアリサ。

「そうか。7らいいんだ。応援してるよ! じゃあね」

「じゃあね!」

「勝ち抜いた皆様! これより10分の休憩を挟みます! 控室へどうぞ!」
係に案内される。これがテレビならCMを挟んですぐ再開なのだが、当然リアルタイムで行われている訳だから休み時間は必要。
先程と同じ大きさだが、人数が2人減った事もありやけに広く感じる控室。 

「勝ち残った皆様おめでとうございます。では、ゆっくりお休み下さい。お菓子をテーブルの上に用意いたしましたのでどうぞお召し上がり下さい」
そう言って出て行く案内係。

「あー緊張したわ」

「お? これイカ墨泥鰌スナックじゃねえか! 旨そうだなあ!! よし、これでも食べて落ち着くか」
色が真っ黒なスナック菓子が置いてあるが、躊躇う事無く食べる金賀。

「フー、人前に出るのって草臥れるなあ……でもあの拍手喝采よかったなあ」
しみじみ
 
 2万ポイントを叩き出した面白い☆☆☆3連星のネタを思い返すアリサ。
周とのガンバレトーク、そして白川に教えて貰って調べたサイトでのサイアの癖、そして彼から貰った芸人の帽子によるお笑いのスキルなどをミックスし、即興で1枚の写真からあそこまでのストーリーを紡ぎ出す力。
大勢の観客の中で、リハーサルも無しにやってのけたのだから末恐ろしい娘である。

控室は少し寂しい。というのも選手が2人も減ってしまい、8つのイスが残ったまま。どうしても2つの空席が気になる。そしてその席に勝ち上がりまた戻ってこれる事が出来るのか? と言う不安も当然残っている。

現在残った選手を紹介しよう。
2番の元モデルでメルヘンネタの女ピン芸人の梓。

3番の男。

コンビ結成10周年記念で参加した4番の白川。

貧乏ネタの5番の金賀。

バナナナナナナナマンのボケのファンタジー漫才の使い手8番火村。

そして、一番仲の良かった七瀬が居なくなり少し寂しさを感じる6番の腕章のアリサ。
だが、さっき彼がやっていた事を思い出し、マインドフルネス瞑想を始める。

「ちょっとトイレ行ってくる」
緊張が続いたのか? 白川が出ていく。

「アリサちゃん……まさか君にこんな才能があったとは……本当に刑事の娘なのかい? お笑いに相当精通している様に見えるよ」
鎌瀬が初めて話した時とは全く違う目でアリサを見ながら言う。

「今マインドフルネス瞑想中よ? 邪魔しないで! さっきは緊張してたから上手く出来なかったけどもう慣れたわ。
瞑想(これ)が終れば全力で行けるわ? 逃げるなら……今の内よ?」
抑揚はなく落ち着き払った声で鎌瀬に伝える。

「何を言って……うっ」
鎌瀬だけでなく8番の火村も気づいてしまった。彼女の背中に何かがいる。
鎌瀬どころか身長190を超える火村よりも遥かに大きい何かが……

「神……さま? 何か……暖かい……」
冷房が効きすぎた部屋に爽やかな温かさが包み込む気がする。

「へえ、見えるのね。【彼】が、ずっと見守ってくれる。だから……負けようがない」
【彼】とは松谷修造の事だ。1話からちょいちょい出てきてはアリサのやる気の起爆剤となっていた彼だが
最早近くで応援するだけでは飽き足らず、彼の鋼の意思は、アリサの脳内にまで浸食していると言う事なのだろうか? その存在を隠し切れずに表面化する程に溢れ出してしまっている様な形で、アリサの背に浮かんでいるのだ。

「……何だあれは? いや錯覚だ。疲れているんだね。そうだ僕もトイレに行こうっと。
多分このままじゃ司会みたいに漏らすかもしれないし」
 そう言い、控室を出る。そして、アリサも控室の外の廊下に座布団を敷き瞑想の続きを始める。
大衆に見守られる内に疲弊した心を、最高の状態まで持っていく為の行為。
マインドフルネス瞑想は、他の事を一切考えず自分の呼吸に意識を集中する瞑想の事だ。
自分の鼻から出た生暖かい空気を感じた後に、吸い込んだ冷たい空気が、鼻から喉を通り、肺に届いたな。
と、今自分に起こっている事に集中しながら、実況する。そして、なるべくゆっくりとした呼吸を意識し瞑想するのだ。
多くの成功者達も実践している。アリサも周や七瀬がやっていたのを見て、学習したのだ。

 瞑想には脳が疲れにくくなり、その機能を上昇させたり、意志力、集中力、記憶力を上げる。
更に心を落ち着かせ、ストレスに強くなり尚且つ免疫力まで上がったり、とくこうととくぼうを一段階上げたり、HPが500回復する効果まであると言う。
しかも毎回ぴったり500である。これは凄い事だと思わないか? このお陰で……

ホワンホワンホワンホワーン
ぬ? 何だそれはですって? 今はそれどころではないのだ! これからあなたは異世界へと転生する。
今喋ったら舌をかみ切るぞ? 転送中に噛切った舌は、異次元空間に取り残され、永遠にその空間を彷徨う事になる。
異次元空間移動中に空中を漂う舌の切れ端を見る事が出来る! と言う噂が立ってしまう。そんなのは嫌でないか? さあ、頼むから黙ってくれ。む? そろそろ着くようだな。それでは準備は良いな?

 あなたは今、強敵と戦っていると想像して欲しい。
あなたの最大HPが950としよう。そして、あなたには体力は少ないが、強力な魔力を持つ美人女魔導士がパーティーに居るとしよう。
彼女は、その強敵の攻撃を一回受けただけで死んでしまう。だが、2回だけ彼女の魔法が命中すれば倒せる状況だ。
彼女の魔法は精巧で、どんなに逃げ回っても当たるまで追いかけ回す蛇の様な炎を飛ばせる。
なのでミスはあり得ない。そしてあなたはとても優れた戦士で、役割で言ったらタンクだ。
味方を守る為、前衛で戦い、全ての攻撃を受け止めるパーティーの壁だ。
そして観察眼が異様に高く、どんなにテクニカルな敵の動きも把握できてしまう為、痛紺の一撃は絶対に喰らわないものとする。
そしてあなたは初期装備でヘイトを高める、【ドヤ顔の仮面】を装備している為、あなたが存在する限り100%攻撃があなたに来るものとして考える。
この状況で、仮に敵から固定で700のダメージ喰らうとしよう。ここで瞑想でぴったり500回復すれば、確実に750残る為、次の敵の攻撃で落とされる事がない。この時点で美女魔法使いの魔法は一回ヒットしている。もう一息である。
これが低乱数を引き420とかしか回復せず、現体力670で無残にもやられてしまい、プンスカスカプンチュッキンプリプリィ♪と怒り狂う事も無くなるのだ。
そう、回復技は毎回同じ量回復する。という安心感はとても大切な事なのだ。
このお陰で残り体力50で見事敵を打ち倒し、その美人女魔導士とハッピーエンドを迎える事が出来たのだ。めでたいはないか! 

ンーワホンワホンワホンワホ
ぬ? 何だそれはですって? 知りません。

「でも、そんな事言ってもどのRPGにも体力を完全回復する呪文があるよ?」 

であるだとぉ? だ、だが瞑想はMP消費も0なのだ! 回復の泉の一つも設置されていない厳しい設計のダンジョンの奥深くまで行った後の戦闘で、当然魔力もほぼすっからかんでも消費0で使えるのは非常に助かる。安心感と大量回復を得る事が約束されている瞑想。
乱数で高かったり低かったりする場合もある上にMP を消費するポイミやぺポイミを使うのが馬鹿馬鹿しくなるな。
皆さんも一日5分でいいので挑戦してみよう! これを毎日やっていれば、美人女魔導士がその安心感を求め、君の元にやってくるに違いない!

アリサは瞑想中に今までの事を思い返す。そう、無心で瞑想をする事は初心者には難しい。
だが、一旦別の事を考えても再び無心になる。これの繰り返しでもよいのだ。
むしろそちらの方が、無心状態とそうでない状態の区別を体得し、次第に無心で瞑想出来る時間が増えていく。それも意識した上そう、マインドフルネス状態でな。
(フンガーごめんね……乗り捨てちゃって……必ず次も勝つ! 約束は果たすよ。
そういえば……早乙女さん何であんな所にいたんだろう?
昨日ホテルで一緒だったからビックリしたわ。ここに来てたって事は仕事かな?
それに七瀬さんとある公務員って言ってたけど一体どんな仕事してるのかな? 警察官には見えないし……まあこれ位にしておこっと)

 アリサは気になった事を頭の中で整理する。
気になる全ての事を一度思い直し、納得して頭をフラットにする。
暫くすると、トイレに行っていた2人は戻ってきて、アリサの前を通り部屋に入る。

「よし、機は熟した」

「選手の皆さん。決勝2回戦開始します」
10分の休憩はあっという間に終わり、係の者が知らせにくる。
「いくぜ」

「はあ~また行くのかあ」

「おっと、 誰も居なくなるし冷房止めとくか」
ピッ
「余裕ですねえ」

「よし! 行くわ!!」

6人に絞られ、その中で勝ち残った唯一の小学生のアリサは観客に注目されるだろう。その重圧に耐えられるか?
そして、二回戦。一体どんなお題が出るのだろうか?
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