第5話 アリサを知る者

文字数 4,999文字

「え? 何で知ってるの?」

「昨日、運動場の天井のバレーボールを取ってあげた筈よ?」
 
「もしかして……早乙女さん?」

「覚えていてくれたんだね? 嬉しいね」
会った時は練習着の為、パッと見ただけでは気付けなかったが、この女性は、前日ホテルで会った事があるのだ。
名前は早乙女と言い、500人の中でも最も筋肉の発達が進行しており、攻撃力は650以上ありそうだ。
西洋の重騎士が装備している様な甲冑が動いて喋っている。そんな風貌の女性。
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こんな感じであり、この甲冑の色が肌色であれば、彼女の容姿とほぼ合致する。
「みんな女の子だったんだね……てっきり全員男の人かと……ごめん」

「いいのよ、私は女を捨てこの道を選んだ。そしてそう見える様に鍛えている。
あなたが気にする事ではないよ。しかし、大変だったわ」

「え?」

「あのバレーボールを頭に乗せたのを覚えてる?」

「うん、私、警告したよね? その後に何かあったの?」
アリサはその行為で、後遺症が起きる事を既に知っていたので、何を聞いても驚く事は無いと思っていた。だが……

「そうね、素直にあなたの言う事を聞いていれば良かったわ……死ぬ程後悔してる……
あの後ね、急に両目が顔から飛び出してね……空中浮遊して、右目の眼球の入ってた場所に左目が、左目の所に右目が入ってしまって……大騒ぎだったのよ。
すぐ元の位置に戻ったけど、目玉にも帰巣本能ってあるのねー。死ぬかと思ったわ」

「え? どういう事?」

「今話した通りよ……信じられないけど事実よ……眼球は、日常生活を過ごす中で、顔からは絶対に飛び出す訳がないって先入観があっただけに目玉が飛び出す程驚いたわ」
 
「早乙女さん……今上手い事言ったつもりだろうけど笑えないよ……」

「あら? あなたのカバンの中にスケッチブックがあるわね? ちょっと貸して貰えないかしら? 後マジックもある?」

「あるけどどうする気?」

「ちょっと抜けるね?」

「あっ、はい」
そう言うと早乙女は、万里の長城の壁から抜け出し、一時的に人間に戻る。
そして、アリサの買って貰ったバッグは、完全にスケッチブックが入る程大きくはなく、少しスケッチブックの頭がはみ出ていたのだ。
それに気づいた早乙女は、半ば強引に鞄ごと借りる。
「あっ、ちゃんと返してよね?」

「分かってる分かってる! ……あら? マジックセットじゃない! これはいい絵が描けそう♪じゃあ、せつ目いするわね」
せつ目いだと? 間違っている様な気もするが……まあ良い。
そういいつつ早乙女は、カバンの中のマジックセットを取り出し、数色をケースから取り出すと、何かを書き始める。

「うん」
キュキュキュキュキュ
(私、まだキャップも取る前だったのになあ。おニューのマジック早乙女さんに一番初めに使われちゃった……何でだろう? ちょっと悲しいなあ)           
       
             

〇注意〇 実際はカラーマジックでリアルな人間の顔が書かれていますが、※AA処理しています。理由は後程分かります。
※AAとはアスキーアートの事で、記号や文字で絵を描く事を言う。

「これが私の顔ね」

「うん。まあ上手ねー実写みたい♪それにしても鋭角だねー」

「えっ何が? まあいいわ。で……」

  


「え? お目目取れちゃったの?」

「そうそう。でね」
キュキュキュ



「あっ!! お目目空中浮いてるよ!!」

「そう。これは周りのみんなが見ていて、後で教えて貰った事だから間違いないわ。でね」
キュキュキュのキュ


       
「わぁ! お目目が喋ったあああぁぁぁあああ!」

「ふふふw」

「え? 何で笑ってるのよ?」

「このお話をしたら、お医者様とか看護師、それに待合室にいた方とかも皆同じリアクションだったから、思わずねww」

「確かに誰もがこうなるわね! で、どんな声だったの?」

「多分私の声だと思うわ。でも、気が動転していて、私含めて周りの人全部が冷静じゃなかったから、真実は分からないけどね」

「そうか! 早乙女さんのお目目だから、早乙女ボイスなんだ!!」
因みに彼女の声はとても美しく、声優で言うと釘宮理恵さんの声が最も近い。そして、偶然であるがあの冒頭で紹介した甲冑のモデルのキャラも声を担当していた事もある為、姿形が似ているよしみでこのお話が万が一アニメ化された時には声を当ててくれる筈である。

「そうね、でも今どさくさに紛れて呼び捨てしなかった?」

「あっ早乙女さんボイスだったわ。ごめんね」
普段はこんな事では謝らないアリサだが、それ程に早乙女は威圧感が半端ない。

「あ……語呂が悪いわね……やっぱり早乙女ボイスでいいわ」  
 
「でも早乙女さんって可愛い声よね」

「……声の事は言わないで?」

「え? なんで?」

「なんでもよ!」
            
「はいっ!!」
             

                 ↓
             
            左目complete!右目

            

 

                  
 

〇注意〇 実際はカラーマジックでリアルな人間の顔が書かれていますが、AA処理しています。

          

「でも……お目目達悩んでるよ?」

「そうみたいね。これは、他人の家に入って始目の内はテンション高くてはしゃいでいても、ずっとともなると落ち着かなくなるあの現象によく似ているわね」

「あー分かるー!」
               

「しかし、ずっときゃあああああって言っているわね……ちょっとしつこい気がするし、五月蠅いかも……悲鳴なんて一回書けばわかる事だと思うのよねー。これじゃ読者さんに文字数稼ぎだと疑われちゃうよ?」
子供は冷徹。

「ああごめんね……でも、読者ってなあに? 後私が無知なだけかもしれないけど、文字数稼ぎって言う言葉の意味も教えて欲しいわ」

「知らないわ」

「へえ……でも仕方ないわよ。コピペする度に消そうかどうか迷ったけども、まあ別に残してもいいやって思っちゃてw」

「まあお目目が飛び出ちゃったらどうしても叫んじゃうよね……仕方ないか……じゃあ私、我慢する!……で、コピペってなあに?」

「忘れたわ」

「ふーん」

              

「あっ! すぐに戻った!!」

「そうよ……すぐに戻ってくれたの……本当に良かったわ。
それに、もしもこれが戻る時も一旦顔から飛び出して入れ替わるだけのあの退屈で地味なシーンを逆回転しただけの物をコピペなんかして、文字数の水増し工作がバレちゃったら、誰も読んでくれなくなるもの……私みたいなモブキャラの目が飛び出したシーンを長々と見せられたせいでこのお話を読んでくれる人が少なくなるなんて私、絶対に耐えられないわ」

「よくぞ言った! で、コピペって何?」

「さっきも言ったけれど知らないわ」

「え? そうなんだ。なら仕方ないね。じゃ、文字数ってなあに?」

「知らない」

「じゃあその次に言っていた、水増し工作っていうのはなあに?」

「知らない」

「じゃあこれは? 早乙女さんはっきりと誰も読んでくれないって言ってたわ? どういう事? 私達の事を読む? そんな事って現実ではありえないよね? その読むって言う意味が今一ピンと来ないんだ……もしかして心を読むなの? でも一体誰が?」

「知らない」

「じゃあモブキャラって?」

「知らない」

「ふーん……私さ、こんなにも自分の言った言葉の意味を知らない人って初めて見たかも。
早乙女さんってかなり無責任な気がするわ……大人なのにさ! ちょっとがっかりだわ」

「そういう人だって探せば居るのよ。誰もがあなたみたいに頭が良くは出来ていないの。色々な人がいる。だからこそ人生って楽しいのよ?」

「そっか。でも全く知らない単語を初めて話す割には、スラスラと話していたような気もするわね。どうして?」

「乙女の秘密よ、早乙女だけにね……!!」

「上手い!! 天才! 今からでも遅くはないわ! 選手としてエントリーしてきて!!」

「残念だけど無理よ」

「ちぇっ。ところで目はちゃんと見えるの? 視力とか落ちていない?」

「そうね、凄腕の先生で、神経もしっかり繋げて貰って、前より良く見える様になったかもね。
それにね、以前は見えなかった浮遊霊とかも見えるのよ? あっ、今目が合って両手でお顔を隠しているわw意外と可愛い幽霊さんねふふふw」

「すごーいテレサやん……あっ……間違えた! 照屋さんね!」
折れた骨は治った時にそこだけ強度を増すと言う話を聞いた事があるが、目の周囲の筋肉も、一度外れた事でその周りが強化されるのかもしれないな。そして新たな力、【霊視】を会得した早乙女。

「私、今まで色々な敵と戦ってきたけど、幽霊だけは苦手でね……だって、どんなに頑張っても私の攻撃が通用しなかったの。でもね、この力を得てからは霊の居場所がわかるから、そこに岩をぶつければ倒せるようになったのよ!」

「すごーいもう無敵だね♪そっか霊に格闘タイプは無効だけど、岩は等倍だもんねー」

「そうそうw変な話よねww」

「え? 常識だよ?」

「そう? まあいいわ。でも、また色々な敵を倒してもっと強くなれる。そう思えるだけで今も幸せよ」

「恋愛とか興味ないの? かっこいい男の人とデートとかさあ。折角こうして生きのびたんだし……修羅の道は虚しいよ?」

「そっか……そういう人生も真由美の時だったら歩めたかもね。
でも今私は真琴! 私の心はもう男なのよ! 修様みたいな男! いいえ漢!! だからデートするなら女の子と行くわ」
ここにも松谷修造のファンがいた様だ。

「修ちゃんのファンなんだね?(真由美の時? 真琴? まっいいか)」

「そうね。でもアリサちゃん? 修ちゃんは失礼ね。ちょっとばかり馴れ馴れしすぎるわ。二度と言わないで? 貴女ってまだ親に養って貰っている身分でしょう?」

「そりゃ一応ね」
 
「だったら身の程を(わきま)えて? 最低でも修様よ? で、気が向いた時は、尊敬の意味も込めて修大統領様って言う様にして? これは命令よ?」
厳格な女、早乙女。

「えー、やだ。じゃあマジック返してね」

「そう言えばそうね。はい」
そう言いつつ、マジックとスケッチブックを受け取る。
そして、アリサはスケッチブックを受け取った時、急に展示室のあの光景を思い出す。

「あっ、じゃあ早乙女さんは、展示室には来ていなかったんだ!」

「ああ、その時は多分病院で集中治療を受けていた筈よ。展示室に行こうよって話になって、そこに向かう途中で飛び出したんで……でも、あっちでも大変だったのよね? 後で目ンバーから聞いた時は、目玉が飛び出す所だったわ」

「一度飛び出すと飛び出しやすくなるって言うから気を付けてね? ビックリしたらとりあえず顔を両手で抑えて、飛び出さない様にしてね?」

「分かってるって♪」

「展示室で石像とかを鑑賞してたら突然大暴れして、私がたこ焼きあげるって言っても全く無視……でも……あの暴走のお陰で展示室のゴミがみんな消えちゃったのよね。不思議な光景だったわ」

「そう言えば響いてたのよね」

「え?」

「感謝の言葉が」

「ああそうだったわ。誰かは分からないけど沢山の感謝の言葉が心に届いた。だから私は悪い事はしていないって思ってる」

「私もよ」

「あの……ちょっといい?」
アリサは急に力が戻った気がしたのだ。今なら見れる……! とな。

「え?」

「私ヒーリングの力があるの。だから今破れている瞼治せるかもしれない」

「本当?」
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