若者/ラクダちゃん / 疲労
文字数 1,396文字
ファミリーが、…ファミリーとはここ〖響乃森 ハウス〗に入所している老人達のことである。ちなみにここ〖響乃森 ハウス〗で働いている従業員をチームメンバーと呼んでいる。これはどうやらこの施設運用を任されている花井 のアイデアらしいのだが、当のチームメンバー達からはあまり賛意を得られていないようだ。
ファミリーが朝食を終えた後、チームメンバーが順番に交代で手早く朝食を済ませた。ここにきてようやく顔合わせのときにいた残りの二人が合流した。中里 と左久間 だ。若い男女である。自己紹介の時に苗字しか名乗らなかったのは、業務以外では、或いは業務に関することでもあまり親しげに接したくない、という気持ちの表れ、と紗和 は考えていたので、挨拶は丁寧にしたものの、こちらから話しかけたりはしなかった。
*
その後はごく一般的な家事であった。が、兎に角量が多い。ファミリーが使用する寝巻、シーツ、肌着類は毎日回収し、洗い立ての物と交換していく。
紗和 が大量の洗濯物の入ったカゴを持ってフロアを歩いていると、
「わ!?」
何かに躓 きそうになり洗濯カゴを落としかけた。
「な、何ですかコレ!?」
動く変な物体を見た。
「ラクダちゃんよ、可愛いでしょ?掃き掃除も拭き掃除もやってくれるのよ。」
と帆奈美 は説明してくれた。
――お、お掃除ロボットか…
ラクダちゃんは吸引音を静かに唸らせてフロアをゆっくりと進んで行く。
紗和 はキャラメル色の半球体を伏せて二つ並べたような形状のそのフォルムをしげしげと眺めた。
――…可愛い…かなぁ…
*
ファミリーの昼食時間となった。朝食のときもそうだったが、殆ど補助が要らない。紗和 はてっきり食べ物やスープをを匙 でお年寄りの口に運んだり、ストローマグで水を飲ませたりするのだろうと思っていたので拍子抜けした。食卓の準備が整えば、あとは見守るだけだった。
「お年寄りはね、嚥下 機能がとても弱くなっているの。だからね、どんなに平気そうに見えても〖見守り〗を怠 っちゃいけないの。」
とは、ファミリーの朝食の後片付けをしているときに帆奈美 が紗和 に言ったことであった。
*
「乾燥室の洗濯物たたんだら夕食まで休憩してていいよ。」
チームメンバーの昼食時に帆奈美 が言った。
「はい、分かりました。」
6人揃っての昼食だが、席を空けてふたりずつ座る恰好になっていた。調理担当の清水 と山口 、若者同士の中里 と左久間 、そして紗和 と帆奈美 。
紗和 と帆奈美 は仕事を教える人と教わる人、という関係だからともかくとして、やはり年齢が近いほうが話しやすいのだろう。
「で、夕食が終わったら今日はもういいよ。」
今日はいいよ、とは今日の仕事は終わりでいいよ、ということだろうか…
「上がっていいんですか?」
誤解のないように簡単なことも確認する。
「うん、明日から入浴も手伝ってもらうから。」
「分かりました。」
と言って紗和 は昼食を続けた。
*
夜、チームメンバー用のバスルームでシャワーを浴びて自室に戻って就寝の準備をしている。労働自体の身体への負荷は大したことはないだろうが、兎に角慣れていないので適度に疲労していた。それに結局、休憩中もハウス内をいろいろ見て回ったり、ファミリーの年寄り達を眺めたり、他のチームメンバーの仕事を邪魔にならないように観察したりしてしまった。
――なんか前の職場の癖が出ちゃったか…
もっと楽にやろう、と自分に言い聞かせながら紗和 は眠りについた。
ファミリーが朝食を終えた後、チームメンバーが順番に交代で手早く朝食を済ませた。ここにきてようやく顔合わせのときにいた残りの二人が合流した。
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その後はごく一般的な家事であった。が、兎に角量が多い。ファミリーが使用する寝巻、シーツ、肌着類は毎日回収し、洗い立ての物と交換していく。
「わ!?」
何かに
「な、何ですかコレ!?」
動く変な物体を見た。
「ラクダちゃんよ、可愛いでしょ?掃き掃除も拭き掃除もやってくれるのよ。」
と
――お、お掃除ロボットか…
ラクダちゃんは吸引音を静かに唸らせてフロアをゆっくりと進んで行く。
――…可愛い…かなぁ…
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ファミリーの昼食時間となった。朝食のときもそうだったが、殆ど補助が要らない。
「お年寄りはね、
とは、ファミリーの朝食の後片付けをしているときに
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「乾燥室の洗濯物たたんだら夕食まで休憩してていいよ。」
チームメンバーの昼食時に
「はい、分かりました。」
6人揃っての昼食だが、席を空けてふたりずつ座る恰好になっていた。調理担当の
「で、夕食が終わったら今日はもういいよ。」
今日はいいよ、とは今日の仕事は終わりでいいよ、ということだろうか…
「上がっていいんですか?」
誤解のないように簡単なことも確認する。
「うん、明日から入浴も手伝ってもらうから。」
「分かりました。」
と言って
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夜、チームメンバー用のバスルームでシャワーを浴びて自室に戻って就寝の準備をしている。労働自体の身体への負荷は大したことはないだろうが、兎に角慣れていないので適度に疲労していた。それに結局、休憩中もハウス内をいろいろ見て回ったり、ファミリーの年寄り達を眺めたり、他のチームメンバーの仕事を邪魔にならないように観察したりしてしまった。
――なんか前の職場の癖が出ちゃったか…
もっと楽にやろう、と自分に言い聞かせながら