18. 助っ人
文字数 2,294文字
夜の
エミリオ、リューイ、カイル、ミーア、キース、ディオマルク王子とファライア王女、そして、二人の戦士である。
その二人は無論セルニコワ王国からの助っ人で、事前に聞いていた話によると、ファライア王女の婚約者であるイスディル王子が、自ら指名して寄越してくれた
やがて彼らは、道を折れて川のせせらぎが聞こえる方へ向かった。砂漠地帯ゆえ緑よりも砂地や岩石の方が目立つが、水源があるダルアバスの王都でもそうであるように、どこまでも砂丘が続くような過酷な環境ではない。大きな川も流れていて、その周辺では植物も育つこのような緑が集まる場所がある。巨大な岩山の水源から湧き出す水が川となり、そこに沿って形成されたオアシスの一つだ。
「セルニコワ(王国)のイアンさんもアルフさんもこっち側だし、あっち二人で大丈夫かなあ。」
そう言いながら振り返ったせいで、カイルは地面から突き出している岩石につまずいて悲鳴をあげた。
助っ人の二人は気づかわし気な表情でほほ笑んだ。装備から見ると共に片手剣の使い手らしく腰に剣を帯び、戦闘服からはほかに短剣の
「二人じゃないだろう、カイル。心強い部隊もついているのだから。」
エミリオは振り向いて、またカイルが引っかかりそうな出っ張りに注意を
「でも、確かダルアバス王国は守備力を
その国の王子や王女がいるというのに、気にすることなく普通にそう言ったカイルに対して、エミリオの方は声をひそめる。
「私も詳しいわけではないが・・・。知恵と技術が優れているダルアバス王国は、そのうえ兵器の製造に必要な資源が豊富であることから、そこを領土としたがる国も少なくはない。しかし、戦いにおいては、上手く判断や指導ができる有能な武人が乏しいらしい。一方、アルバドル王国(帝国)はその昔、財力は
そう小声で代弁してくれるエミリオのそばで、聞き耳をすましているディオマルクは静かにうなずいている。
「そういうこと。でも、じゃあやっぱり、
「カイル、もう一人剣の達人を忘れてるぜ。」
慣れた足取りで意気揚々と先頭を務めるリューイが、振り返らずに言った。
「え・・・。」
「シャナイアも一流の戦士だよ。」と、エミリオ。
「あ、そっか。」
「そういえば、彼女は女戦士だと聞いたが・・・ギルベルトの話では確かな腕前らしいと。」
「でも、僕も戦ってるところは実際に見たことってないし。ちゃんと知ってるのは、レッドだけなんだ。」
「シャナイアは、女戦士養成所リアラステール出身の一流戦士だそうです。レッドの話では、一国の王女の用心棒として雇われるほどの実力だと。」
「彼女の剣の舞か。それは美しいのだろうな。一度手合わせ願いたいものだ。実は実戦経験はないのだが、軍の指導者だけでなく、
エミリオとリューイは、顔を見合って苦笑いを交わした。正直、王子も守らなければという使命感と緊張があった。本来の理由以外にも、実際に今、油断ならない状況にあるからだ。そのことに王子自身も気付いているのだと、二人は
「それにしても、こっちのメンバーって・・・ほんとバラバラだよね。子供に剣士に獣に格闘家に精霊使い・・・。ファライア王女もディオマルク王子も、変装して歩いてるし。これなら――」
「カイル、俺とお前は見た目じゃ分からねえだろ。」
「そっか。」
「お前は精霊使いじゃなくて、
子供
だと思われるんじゃないか。」「だから普通に言うのやめてっ。」
リューイに言われると余計に傷つく、とカイルは思う。
「カイル、王女と王子は禁句よ。」
二人の軽快なやりとりに上品な笑い声を上げながら、ファライアが言った。
「ところで、我々は確かに彼らのあとを追っているのだろうな。それも、笛の音が聞こえる範囲内で。」
ディオマルクが不安そうな顔できく。
「キースに任せておけば、大丈夫だって。」
自信満々に答えてみせたリューイは、迷うことなく先導してくれる森の相棒に目を向けた。