極道とダークエルフの森
文字数 3,873文字
「おいっ」
「お前に、聞きたいことがあるっ」
椅子に座るユダンの前に、銃口を向けて、立っている石動。
「返答によっちゃあ、もしかしたら、生き残れるかもしれないぜ?」
銃を知らないユダンだが、それがどれぐらい危険な物なのかは、今日、嫌と言うほど見せつけられた。
「なっ、なにを、聞きたいってえのっ?」
「お前等の元締めは、どこのどいつだっ?」
「そっ、そんなこと知って、どうすんのっ?」
「ぶっ潰すに、決まってるじゃねえかっ」
「そっ、それは、さすがに、無理ってもんじゃねえのっ!?」
「やられたら、徹底的にやり返す、その根本にある元凶も含めてなっ」
「それが、俺達の流儀ってやつだっ」
「もう一度言うぜっ?」
「お前の元締めは、どこにいるんだっ!?」
「……」
頭を抱えて、髪を掻きむしるユダン。これまで、元締めのことを誰かに話して、生き残った奴隷商人はいない。みんな、見せしめのために消されてしまっている。
「早いとこ、口を割っちまった方が、身のためだぜっ?」
「まぁ、別に、答えたくないなら、答えなくてもいいけどよっ」
「ただ、お前の頭には、風穴が開いちまうけどなっ」
銃のトリガーにかけた指を、ゆっくり動かす石動。
「わっ、わっ、わかった……」
覚悟を決めたユダンは、元締めについて知っていることを、喋りはじめる。
「どこに居るのかは、誰にも分からねえ……連絡が来るのは、いつも一方的に向こうからだ……」
「名前はっ?」
「本当の名前は知らねえが、みんなからは『クレイジーデーモン』と呼ばれている……」
「なんでも、数年前に、こことは違う、異世界からやって来たとかって噂だ……」
「数年前に、当時、奴隷商人達を仕切ってた組織の連中を皆殺しにして、自分が総元締めになりやがった……」
「もちろん、最初は、みんな猛反発したが、楯突 いた奴等は、一族郎等まで、みんな殺されちまった……」
驚いた顔をしている石動。
「てか、お前、普通に喋れんだなっ」
「で、どんな奴なんだっ?」
そう言いかけた時、背後に殺気を感じる石動。
大きな左手で、ユダンのこめかみを鷲掴 みにすると、そのまま体を持ち上げた。
「うっ!!」
ユダンの背中に、矢が刺さる。
石動は、ユダンの体を盾代わりにしていた。
ユダンの体の影に、身を隠している石動。
さらに、二の矢、三の矢が、次々とユダンの体に突き刺さる。
「いっ、痛えっ!!」
「……ちょ、ちょっと、約束が、違うんじゃあねえのっ?」
「あぁ、悪りぃなっ、
ついうっかり、肉の盾にしちまったっ」
「つい、うっかり、なの?」
「お前等、好きだろっ?
肉の盾とか、そういうのっ」
はじめから、ユダンを生かしておく気など、微塵もなかったのだ。
「……オイラが、肉の盾にされちまったじゃあねえの」
ガクンと首をうなだれて、絶命する、奴隷商人のユダン。
手にしていた銃で、石動が反撃すると、暗殺者の影は、また姿を消し去った。
「やれやれ、随分と、しつけえ狩人 だな、あいつも」
――もうこれで、四回目か……
しかも、一回は助けられたしな
執拗に石動を狙う、謎の暗殺者。超遠距離、ロングレンジからの、毒矢での狙撃は、石動をもってしても、相当に厄介だ。
さらには、ユダンが言っていた元締めの話が、石動には、どうにも気になる。
「クレイジーデーモンねえっ」
「なんか、どっかで、聞いたことがあるような名前だなっ」
-
コツコツコツコツ……
ヒールの音が、部屋まで聞こえて来る。扉を開けて入って来たのは、スリムな脚がよく見える、ミニのタイトスカートを履いた、スーツ姿の女。
そして、金ピカの、一見露悪的な成金趣味のような部屋で、机の上に足を乗せて組んでいる人間の男。
シャツの胸元を大きく開け、首からは純金製の極太ネックレスをジャラジャラとぶら下げ、口には葉巻きらしきものを咥えている。
入って来た女は、その男の秘書で、魔女のイリサ。衣装はボスである、この男の趣味なのだろう。
「クレイジーデーモン様」
秘書に、自らをクレイジーデーモンと呼ばせるその男が、まともな人間のはずはない。
「ユダンの奴隷即売会に、上半身裸の男が乱入して、拳銃を乱射しまくったそうです」
「おいっおいっ、随分とヤベエど変態がいたもんだなっ」
「現場に居た者達は、奴隷以外、ほぼみな殺し、とのこと」
「そりゃ、もう、カタギじゃあねえなっ
……まるで極道みてえじゃねえかっ」
「一体何もんだよっ?そいつはっ」
「使い魔の報告によれば、おそらく、勇者ではないかと」
「おいっおいっ、勇者かよっ!?」
クレイジーデーモンは、思わず身を乗り出した。
「ついに来やがったかっ、勇者がっ」
「俺は、ずっと待ってたんだぜっ、この時をよぉっ」
歓喜に沸いて、悪そうな笑みを浮かべるクレイジーデーモン。
「こりゃあ、また、面白くなりそうだなっ」
-
難民キャンプ跡地 への帰還は、思いもよらない豪勢なものとなっていた。
富裕層が乗って来ていた馬車を奪い、イベントで提供される予定であったのだろう、食料や水などを可能な限り積み込んだからだ。
そして、帰る場所の無い奴隷達は、石動達に、一緒について来ていた。
「はえーっ、ワイらが乗ってた馬車とは偉い違いやなっ」
「あれでやすね、新しい家を建てるより、場所の中で寝泊まりした方がいいかもしれやせんね」
本来の所有者は、みんな死んでいるのだから、文句を言われることもない。
外見だけであれば、まるで貴族の馬車が、何十台も行進していようにしか見えなかっただろう。
-
教えてもらった川で水を確保して、難民キャンプ跡地を出立することにした、石動、マサ、アイゼンと二十人の女達。
元奴隷であった三人の獣人達に、御者要員として、ダークエルフの森まで同行してもらうように頼んで、ここからは五台の馬車で移動して行く予定だ。
サブは、やることがあるため、ヤスと共に、しばしこの地に残ることになった。
グレードアップされた馬車が連なって、平原地帯を走り抜けて行く。
砂漠地帯周辺から、ダークエルフの森に近づくにつれて、砂地から比較的走りやすい路面に変わり、ちらほら草木も見られるようになって来ていた。
石動が、豪華で頑丈な車輌の客室に乗るようなってからは、暗殺者に襲撃されることもなくなった。矢で貫けるようなものではないと、弓矢の暗殺者も理解していたのだろう。
そして、馬車の旅が数日続くと、ようやくダークエルフの森が見えて来る。
「ほらっ、ほらっ、あれよっ、あれあれっ」
再びダークエルフの森へと戻って来たアイゼンは、明らかにテンションが高かった。
「なんだか、懐かしいわねえ」
「つい最近のことなのに、なんだか、遠い昔のことみたい」
-
「ここから先は、もう歩くしかないですね」
森の中を、馬車がギリギリで入れる所まで進むと、その先はもう自力で歩いて行くしかなかった。
「また、こりゃ、すごい森だな」
「我々の世界のビルよりも、高い木ばかりですね」
幾星霜 を経 て、太い幹となった老樹が、高い密度で立ち並び、天へと伸びて、空を覆い隠している。
木々が太陽の光を遮っているため、森の中はやや暗く、少しばかりじめじめしているようだ。
「神秘的で、素敵よねえっ」
相変わらずはしゃいでいるアイゼン。
しかし、石動には、どこか違和感が拭えない。
――何か、妙だな……
どこか、空気がピリピリしている
石動の野生の勘が、そう告げていた。
いくら森の中を進んでも、人の姿らしき者はまったく見られない。
「おかしいわねえっ……前はこの辺りには、誰かいたように思うんだけどっ」
「あたし、迷っちゃったのかしらっ」
広大な森なので、確かに迷ったとしても不思議ではない。
むしろ、ここは神秘の、幻想の世界なのではないのかと、そんな気にすらなって来る。
-
さらに森の奥まで進むと、ようやくそこで、少し遠くに、人の姿が見られた。
「あらっ、三老のお爺ちゃん達じゃないっ!」
再会を喜ぶアイゼンは、走って駆けて行く。
「お元気にしてたかしらっ!?」
アイゼンが三老と呼んだ、三人の老人達、その傍らにも一人、ダークエルフの女が居る。
褐色の肌に、尖った耳、銀色の短い髪で、赤い目をした、美しいダークエルフの女。
石動には、その女が、一瞬で目についた。
「長老様に、お願いがあって来たんだけど、会わせてもらえないかしらっ?」
「……うむっ」
「……うーん」
「……それがなあ」
ダークエルフの三人の老人達は、曖昧な返事ばかりで、どうにも歯切れが悪い。
石動達が、先行したアイゼンに追いついた時だった。
ダークエルフの女が、突然上を向いて、指笛を鳴らして合図をする。
森の木々、その高所から、一斉に降りて来る、数十人のダークエルフ達。
石動達は、一瞬で取り囲まれた。
接近戦を警戒して、一定の距離を取りつつ、彼等はすでに、弓の弦 を引き絞り、矢を構えている。
あっという間に、全方位、三百六十度から、矢尻を向けられているという事態になったのだ。
「ちょっとっ!! どういうことなのっ!?」
アイゼンにとっては、俄 かには信じられないことだったろう。
「すまないね、アイゼンさん……」
「仕方がないんだ……」
「許してくれ……」
申し訳なさそうにしている三老達。
強い目力をしているダークエルフの女、その赤い瞳を、石動は終始、ずっと見つめ続けていた。
そして今、女もまた、石動の目をじっと見つめ返している。
しばし見つめ合っていた二人だったが、先に口を開いたの石動だった。
「お前だなっ?」
女の目に、より一層の力がこもる。
「あぁ、よく分かったな」
そして、ダークエルフの女は、ハッキリと明言した。
「あたしの名は、ストヤ」
「あたしが、ずっとお前の命を狙っていた、暗殺者だ」
「お前に、聞きたいことがあるっ」
椅子に座るユダンの前に、銃口を向けて、立っている石動。
「返答によっちゃあ、もしかしたら、生き残れるかもしれないぜ?」
銃を知らないユダンだが、それがどれぐらい危険な物なのかは、今日、嫌と言うほど見せつけられた。
「なっ、なにを、聞きたいってえのっ?」
「お前等の元締めは、どこのどいつだっ?」
「そっ、そんなこと知って、どうすんのっ?」
「ぶっ潰すに、決まってるじゃねえかっ」
「そっ、それは、さすがに、無理ってもんじゃねえのっ!?」
「やられたら、徹底的にやり返す、その根本にある元凶も含めてなっ」
「それが、俺達の流儀ってやつだっ」
「もう一度言うぜっ?」
「お前の元締めは、どこにいるんだっ!?」
「……」
頭を抱えて、髪を掻きむしるユダン。これまで、元締めのことを誰かに話して、生き残った奴隷商人はいない。みんな、見せしめのために消されてしまっている。
「早いとこ、口を割っちまった方が、身のためだぜっ?」
「まぁ、別に、答えたくないなら、答えなくてもいいけどよっ」
「ただ、お前の頭には、風穴が開いちまうけどなっ」
銃のトリガーにかけた指を、ゆっくり動かす石動。
「わっ、わっ、わかった……」
覚悟を決めたユダンは、元締めについて知っていることを、喋りはじめる。
「どこに居るのかは、誰にも分からねえ……連絡が来るのは、いつも一方的に向こうからだ……」
「名前はっ?」
「本当の名前は知らねえが、みんなからは『クレイジーデーモン』と呼ばれている……」
「なんでも、数年前に、こことは違う、異世界からやって来たとかって噂だ……」
「数年前に、当時、奴隷商人達を仕切ってた組織の連中を皆殺しにして、自分が総元締めになりやがった……」
「もちろん、最初は、みんな猛反発したが、
驚いた顔をしている石動。
「てか、お前、普通に喋れんだなっ」
「で、どんな奴なんだっ?」
そう言いかけた時、背後に殺気を感じる石動。
大きな左手で、ユダンのこめかみを
「うっ!!」
ユダンの背中に、矢が刺さる。
石動は、ユダンの体を盾代わりにしていた。
ユダンの体の影に、身を隠している石動。
さらに、二の矢、三の矢が、次々とユダンの体に突き刺さる。
「いっ、痛えっ!!」
「……ちょ、ちょっと、約束が、違うんじゃあねえのっ?」
「あぁ、悪りぃなっ、
ついうっかり、肉の盾にしちまったっ」
「つい、うっかり、なの?」
「お前等、好きだろっ?
肉の盾とか、そういうのっ」
はじめから、ユダンを生かしておく気など、微塵もなかったのだ。
「……オイラが、肉の盾にされちまったじゃあねえの」
ガクンと首をうなだれて、絶命する、奴隷商人のユダン。
手にしていた銃で、石動が反撃すると、暗殺者の影は、また姿を消し去った。
「やれやれ、随分と、しつけえ
――もうこれで、四回目か……
しかも、一回は助けられたしな
執拗に石動を狙う、謎の暗殺者。超遠距離、ロングレンジからの、毒矢での狙撃は、石動をもってしても、相当に厄介だ。
さらには、ユダンが言っていた元締めの話が、石動には、どうにも気になる。
「クレイジーデーモンねえっ」
「なんか、どっかで、聞いたことがあるような名前だなっ」
-
コツコツコツコツ……
ヒールの音が、部屋まで聞こえて来る。扉を開けて入って来たのは、スリムな脚がよく見える、ミニのタイトスカートを履いた、スーツ姿の女。
そして、金ピカの、一見露悪的な成金趣味のような部屋で、机の上に足を乗せて組んでいる人間の男。
シャツの胸元を大きく開け、首からは純金製の極太ネックレスをジャラジャラとぶら下げ、口には葉巻きらしきものを咥えている。
入って来た女は、その男の秘書で、魔女のイリサ。衣装はボスである、この男の趣味なのだろう。
「クレイジーデーモン様」
秘書に、自らをクレイジーデーモンと呼ばせるその男が、まともな人間のはずはない。
「ユダンの奴隷即売会に、上半身裸の男が乱入して、拳銃を乱射しまくったそうです」
「おいっおいっ、随分とヤベエど変態がいたもんだなっ」
「現場に居た者達は、奴隷以外、ほぼみな殺し、とのこと」
「そりゃ、もう、カタギじゃあねえなっ
……まるで極道みてえじゃねえかっ」
「一体何もんだよっ?そいつはっ」
「使い魔の報告によれば、おそらく、勇者ではないかと」
「おいっおいっ、勇者かよっ!?」
クレイジーデーモンは、思わず身を乗り出した。
「ついに来やがったかっ、勇者がっ」
「俺は、ずっと待ってたんだぜっ、この時をよぉっ」
歓喜に沸いて、悪そうな笑みを浮かべるクレイジーデーモン。
「こりゃあ、また、面白くなりそうだなっ」
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難民キャンプ
富裕層が乗って来ていた馬車を奪い、イベントで提供される予定であったのだろう、食料や水などを可能な限り積み込んだからだ。
そして、帰る場所の無い奴隷達は、石動達に、一緒について来ていた。
「はえーっ、ワイらが乗ってた馬車とは偉い違いやなっ」
「あれでやすね、新しい家を建てるより、場所の中で寝泊まりした方がいいかもしれやせんね」
本来の所有者は、みんな死んでいるのだから、文句を言われることもない。
外見だけであれば、まるで貴族の馬車が、何十台も行進していようにしか見えなかっただろう。
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教えてもらった川で水を確保して、難民キャンプ跡地を出立することにした、石動、マサ、アイゼンと二十人の女達。
元奴隷であった三人の獣人達に、御者要員として、ダークエルフの森まで同行してもらうように頼んで、ここからは五台の馬車で移動して行く予定だ。
サブは、やることがあるため、ヤスと共に、しばしこの地に残ることになった。
グレードアップされた馬車が連なって、平原地帯を走り抜けて行く。
砂漠地帯周辺から、ダークエルフの森に近づくにつれて、砂地から比較的走りやすい路面に変わり、ちらほら草木も見られるようになって来ていた。
石動が、豪華で頑丈な車輌の客室に乗るようなってからは、暗殺者に襲撃されることもなくなった。矢で貫けるようなものではないと、弓矢の暗殺者も理解していたのだろう。
そして、馬車の旅が数日続くと、ようやくダークエルフの森が見えて来る。
「ほらっ、ほらっ、あれよっ、あれあれっ」
再びダークエルフの森へと戻って来たアイゼンは、明らかにテンションが高かった。
「なんだか、懐かしいわねえ」
「つい最近のことなのに、なんだか、遠い昔のことみたい」
-
「ここから先は、もう歩くしかないですね」
森の中を、馬車がギリギリで入れる所まで進むと、その先はもう自力で歩いて行くしかなかった。
「また、こりゃ、すごい森だな」
「我々の世界のビルよりも、高い木ばかりですね」
木々が太陽の光を遮っているため、森の中はやや暗く、少しばかりじめじめしているようだ。
「神秘的で、素敵よねえっ」
相変わらずはしゃいでいるアイゼン。
しかし、石動には、どこか違和感が拭えない。
――何か、妙だな……
どこか、空気がピリピリしている
石動の野生の勘が、そう告げていた。
いくら森の中を進んでも、人の姿らしき者はまったく見られない。
「おかしいわねえっ……前はこの辺りには、誰かいたように思うんだけどっ」
「あたし、迷っちゃったのかしらっ」
広大な森なので、確かに迷ったとしても不思議ではない。
むしろ、ここは神秘の、幻想の世界なのではないのかと、そんな気にすらなって来る。
-
さらに森の奥まで進むと、ようやくそこで、少し遠くに、人の姿が見られた。
「あらっ、三老のお爺ちゃん達じゃないっ!」
再会を喜ぶアイゼンは、走って駆けて行く。
「お元気にしてたかしらっ!?」
アイゼンが三老と呼んだ、三人の老人達、その傍らにも一人、ダークエルフの女が居る。
褐色の肌に、尖った耳、銀色の短い髪で、赤い目をした、美しいダークエルフの女。
石動には、その女が、一瞬で目についた。
「長老様に、お願いがあって来たんだけど、会わせてもらえないかしらっ?」
「……うむっ」
「……うーん」
「……それがなあ」
ダークエルフの三人の老人達は、曖昧な返事ばかりで、どうにも歯切れが悪い。
石動達が、先行したアイゼンに追いついた時だった。
ダークエルフの女が、突然上を向いて、指笛を鳴らして合図をする。
森の木々、その高所から、一斉に降りて来る、数十人のダークエルフ達。
石動達は、一瞬で取り囲まれた。
接近戦を警戒して、一定の距離を取りつつ、彼等はすでに、弓の
あっという間に、全方位、三百六十度から、矢尻を向けられているという事態になったのだ。
「ちょっとっ!! どういうことなのっ!?」
アイゼンにとっては、
「すまないね、アイゼンさん……」
「仕方がないんだ……」
「許してくれ……」
申し訳なさそうにしている三老達。
強い目力をしているダークエルフの女、その赤い瞳を、石動は終始、ずっと見つめ続けていた。
そして今、女もまた、石動の目をじっと見つめ返している。
しばし見つめ合っていた二人だったが、先に口を開いたの石動だった。
「お前だなっ?」
女の目に、より一層の力がこもる。
「あぁ、よく分かったな」
そして、ダークエルフの女は、ハッキリと明言した。
「あたしの名は、ストヤ」
「あたしが、ずっとお前の命を狙っていた、暗殺者だ」