第5話 何かしら付いてきました? (4)

文字数 2,039文字

「じゃ、あなた、(わたし)に"あの人"の元にまた戻って、性奴隷に(おもちゃに)なれと申すのですか! えぇ、ええええええっ! あぁ、ああああああっ! はぁ、ああああああっ! どうなんですかぁ、ああああああっ!」

 まあ、家のカミさんに注意をしたら。こんな感じで逆切れしてきたよ。特にさ、口には出さないけれど。俺自身が一番気にしてる、主神オーディン(あのジジイ)の事を述べてきたんだよ。だからさ、本当に頭にくるじゃない。だから売り言葉に買い言葉だよ。

「はぁ、ああああああっ! お前、ええ加減にせぇよ。わりゃ、そんなに主神オーディン(あのくそジジイ)の、"なに"がいいんか"なに"が……。あああ、もう分かった──別れたるけぇ、はよう、出ていけぇ、ええええええっ!わりゃ、ああああああっ! ……そして主神オーディン(あのくのジジイ)の所に行くんなら、行けぇやぁ、ああああああっ! もう、別れちゃるけぇ、とっとと、出ていけぇ、ええええええっ!」

 くそ……。直ぐに主神オーディン(あのジジイ)の事を"あの人"と、呼びやがるんだよ、(うち)のカミさんは……。そんな言葉を聞いたらね、いくらフレイヤにしてみたら哀しい過去だと聞いていても。お前本当は、俺なんかよりも、主神オーディン(あのジジイ)の方がいいんじゃ、ねえのか?
 と、俺自身も嫉妬心もあるから、錯覚して思うじゃない……。

 ねえ、こればかりは、俺が怒るのも仕方がないよね?

『"あの人" "あの人"って!』女性が特別な男性を呼ぶ時の言い方だと俺も思うから……。

「いや、いや、出ていきません、別れません、絶対にあなたから離れません……あんな男は嫌です……許してください、あなた……それにあなたは、(わたくし)と離婚する事は不可能ですから」

 するとさ、こんな感じで泣き始めたよ。許してくださいと。今度はマゾモードに突入始めた……。と、思っていたら、両手で涙を拭きながら、今度は訳分からない事を述べ始めた。

 だから俺は、気になるから。「はぁ、お前、どういう意味やぁ?」と、尋ねたんだよね。

「……えええ、天界のアースガルズに行けば……。女神フリッグの所に(わたくし)達夫婦の、戸籍と住民票──それと結婚届がちゃんと保管してありますから。何度逃げても駄目ですよ。(わたくし)が拇印押すまでは、離婚も成立しませんからね……」

 (うち)にカミさん、今度はね。わぞとらしく、両手で涙を拭っているよ。それにさ、時々指の間から俺の顔色を見て、様子を確認までしている。

 そんなに、俺が怒るのが嫌なら、言うなよ、"あの人" と、主神オーディン(あのくそジジイ)の事を。俺はその言葉を聞くだけで本当に腹が立つし、煮えくり返るから。
 それにね、(うち)のカミさん……直ぐに"あの人"と呼び合うという事は余程、主神オーディン(あのくそジジイ)に、摺り込まれたというか、可愛がられた…と、いうか、面倒を見てもらったのだろうと思うと。俺は本当に悔しいし……。涙がこぼれてきそうだよ。

 もう、どう述べたらいいかな……。

 でもさ、俺自身、それも全部含めてフレイヤを愛するし、守ると決めたから。
 俺自身の頭を左右に振って気を取り直して、カミさんに話し掛け始めた。

「あのな、じゃ、フレイヤ、言うぞ?」
「はっ、はい、あなた……」
「もう、二度というなよ?」
「えっ? 何をですか?」
「な、"何を" じゃないだろ、"何"をじゃ、主神オーディン(あのくそジジイ)の事を"あの人"と呼ぶな、"あの人"と……俺はお前のその台詞を聞く度に本当に頭にくるし、主神オーディン(あのくそジジイ)と、刺し違えでもいいから殺したくなるぐらい悔しい……。だから俺の事を本当に想うのなら。二度と"あの人"と口にしないでくれ、お願いだから……」

 まあ、こんな感じでね、最初は憤怒しながら述べたけど。後は優しく、(うち)のカミさんに述べたよ。

「ううう……もう二度と口にしませんから許してください……それに、(わたくし)が愛しているのは、あなただけですから……」

 その後はね、又、凝りもせずに二人で抱き合って唇を重ねて。愛を確かめあった。まあ、新婚みたいなモノだから、みなさん許しておくれよ。直ぐにラブラブモードになるのは、本当に悪いんだけど……。

 と、思っていたら、骨のオジサン達が町の有力者達を連れてきたよ。
 だから俺も仕方がないかと諦めて、悪事に手を染める魔王になる覚悟を決めて、カミさんの行動を横で見ていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み