第35話 期末テスト

文字数 1,700文字

 とうとう期末テストの結果が帰ってきた。あたしは385人中298位だった。自己最高の順位にひなちゃんと勉強したおかげだとすごく嬉しくなった。そして隣のひなちゃんに聞く。
「なあ、ひなちゃん。あたしめっちゃ順位あがっていたわ。ひなちゃんは何位やった?」
「1」とだけひなちゃんは答えた。あたしは初め意味がわからずしばらく考えたけど、もしかしてと思って思わず声が大きくなった。
「もしかして1位なん! すごいな、ひなちゃん」
「鹿渡、声がでかい」
周りのみんなが騒ぎ出したので、あたしはひなちゃんに「ごめん」とだけ言った。
「筆記試験だけやからな。音楽みたいな実技があれば、成績も落ちるわ。プールも出てへんし」
「それでもすごいよ。学年1位だよ」
「それはここだけの話や。上には上がおるねん。俺よりもっとすごいやつなんて、そこら辺にごろごろいるわ」
「それにしてもすごいよ。ひなちゃんめっちゃ頭いいやん」
するとひなちゃんは冷静に「もうこの話は終わり」と言ったので、あたしは話を打ち切ったけど、なんか視線を感じるなぁって思って後ろを振り返ると清水亜季がひなちゃんをジッと睨んでいた。そうだ昔からプライドが高いもんね清水亜季って。ひなちゃんにテストで負けたことが許せないのかな。そういう子だったもんね。あたしみたいにひなちゃんすごいって素直にならないのかな? 何だかあたしは清水亜季のそういうところも苦手だ。

 休み時間になるといつものメンバーと西野君がやってきて、自分の成績を発表し始めた。「私は188位やな。だいたい真ん中や」と山崎が言えば佐竹は「私は153位」と言う。そしてまあまああがったやんかと二人で言い合う。だけど松本は西野君がいるためかなかなか自分の順位を言おうとしない。「松本は何位やったん?」と山崎が強引に聞き出そうとすると「私は100位ちょうど」と小さな声で答えた。すると西野君が「ジャストやん。俺も50位ジャストやで」と言い松本に握手を求めた。松本はもじもじしながらも西野君の手を控えめに軽く握る。見ていて何だかあたしはイライラしてきて松本に「はっきりしろよ」と言いたくなる。ホンマはめっちゃ嬉しいくせに。
「まあ、ひなちゃんの1位は納得やけど、それにしても鹿渡。よう頑張ったな」と山崎があたしに言う。
「ホンマ頑張ってんから。それにひなちゃんが勉強教えてくれたし」
「そやな、ひなちゃんとの勉強会は大きかったな」
「あれがなかったら、あたしまたビリ近くにおったよ。ひなちゃんありがとうな」とあたしはひなちゃんにお辞儀をした。
「俺は大したことしてへんから。鹿渡が頑張った成果やで」と微笑みながら言うひなちゃんがとてもかわいいく見えて、あたしは思わずひなちゃんにハグして「ありがとな~」と泣きつく。ひなちゃんは前みたいにあたしを引き離すことなく「ホンマ頑張ったな」とあたしの頭を優しく撫でた。すると「鹿渡もひなちゃんもやり過ぎ」と西野君が言って軽くひなちゃんの頭を叩いた。ひなちゃんから離れたあたしは「これくらい当たり前のスキンシップやんか」と西野君に文句を言う。西野君は「鹿渡は忘れているかもしれんけど、ひなちゃんは男やで」と言ったが、女子メンバーからは「私たちにとってひなちゃんは女の子やねん。西野~むきになるなよ~」と山崎がからかい気味に援護する。続けて佐竹が「西野はひなちゃんが鹿渡にとられて悔しんやね」と笑った。西野君は少し照れながら「ちげーよ」と答えたけど、あたしにはなんとなく西野君の気持ちがわかる気がする。西野君とひなちゃんが過ごしてきた時間は西野君にとってとても大切な時間だし、これからもその時間を大切にしたい。だけどごめんね西野君、ひなちゃんはあたしのものなの。これだけは絶対譲れないから。

 その日の夜、松本からLINEがあった。
「西野君が学年50位だったら、私がすごく頑張れば同じ高校に行けるかな?」
「行けるんとちゃう」とあたしはもの凄い適当な返信をして、ふと考えてしまった。あたしとひなちゃんが同じ高校に行けることなんて絶対ないよね。そう考えるとあたしは今という時間を大切にしようと決心した。
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