第88話 2学期終了

文字数 1,734文字

 2学期も無事に終了して、みんなが教室を出ようとしているときにあたしは昨日の夜、佐藤さんとLINEで話し合った計画をひなちゃんに伝えた。
「ひなちゃん、2年参りに大鳥大社へ一緒に行かへん?」
するとひなちゃんは「うーん、俺は無神論者やからお参りはせえへんねんけどな~」と答えた。
「佐藤さんも行くって言ってるし、一緒に行こうや」
「そやな、俺はお参りせえへんけどついて行くくらいならええか」
「やったー。夜中に家族以外で一緒にいるってなんかわくわくせえへん?」
「まあ、確かに新太が泊まりに来たときは楽しかったしな」
そう言うとひなちゃんは近くにいた西野君に声をかけた。
「新太も一緒に行かへんか?」
「えっ、どこに?」
「大鳥大社へ2年参り。鹿渡も佐藤も行くそうやで」
「そうか。1人で家おっても暇やし、俺も行くわ。でもひなちゃん、そういうの嫌やなかったけ」
「まあ、俺はついて行くだけや。お参りはせえへん。新太がええなら決まりやな」
その言葉を聞くと佐藤さんが笑顔になり「た、た、楽しみ」と嬉しそうに言った。すると西野君の後ろにいた前川君が突然「俺も一緒に行ってもいい?」と言いだした。みんながえっとなっていると前川君は「俺だけ仲間外れにせんどいてや。なぁ西野同じ野球部の仲やんか。お前だけかわいい女の子たちに囲まれて俺は仲間外れにするんか?」と西野君に迫る。西野君は困った顔をしながら「鹿渡、佐藤、ひなちゃん。前川も一緒に行ってええかな?」と申しなさげに聞く。あたしはひなちゃんと一緒に年を越せるから問題ないと思ったけど、佐藤さんはどうかなと感じた。いつものメンバーだけで年を越したかったんと違うかなって。あたしは佐藤さんに聞いてみる。
「佐藤さんはええかな? あたしは別にかまへんけど」
「わ、わ、私も、い、いい」
「佐藤さんありがとな。こんなかわいい女の子たちと年越せるって俺、めっちゃ幸せやわ」と前川君が大げさに喜んだ。するとひなちゃんが前川君に聞いた。
「前川、さっきからかわいい女の子たちって言ってるけど、その中に俺も含まれてるんか?」
「もちろんやん。ひなちゃん、めっちゃかわいいもん」
「お前は来るな! 俺は女の子やない。男や」
「そう言っても見た目は完全に女の子やんか。男なのは知ってるけど、俺も西野みたいにかわいい女の子たちに囲まれた気分にさせてや」
「うるさい、お前は来るな!」
「いつも西野だけええ思いして…。俺にも少しくらいおすそ分けしてや」
「あかん。お前は来るな!」
そんなやり取りを見ていたら、あたしと佐藤さんはなんだか可笑しくなり笑ってしまった。なにこの漫才。
「まあまあ、ひなちゃんもそんなに怒らんどって。前川も佐藤みたいなかわいい子と一緒に年越したいねん」と西野君が言うとひなちゃんは、ははんってなんかわかったみたいな表情をして前川君を見た。前川君は一瞬びくっとする。
「まあ、ええわ。でも一緒に行くだけやからな。変な気起こすなよ」
「何言ってるねん、ひなちゃん。俺はいたって紳士や」
「どうだか?」
「そんなん言ったら西野の方が危ないぞ」
「なんで俺に飛び火するねん。やっぱりお前は来るな!」
「冗談やって、本気にするなよ西野」と前川君は笑い「ボディーガードが2人おると思ってな。佐藤さん、鹿渡さん、ひなちゃん」とあたしたちに言った。
「なんで俺が守られる側にいるねん。やっぱりお前は来るな!」とひなちゃんが怒る。話がまた元に戻ってあたしと佐藤さんは顔を合わして大笑いした。これじゃ話が全く進まへんやん。ホンマに可笑しいわ。
「とにかく、楽しみにしてるから」と前川君は教室を出ていった。
「あいつ、いつも一言多いねんなー」と西野君はぼやきながら苦笑いする。すると「詳細が決まったらLINEしてな」とあたしに言い教室を出ていった。
「なんか漫才見てる感じやったね、佐藤さん」
「わ、わ、笑えた。ま、ま、前川君、…あ、あ、あんな感じのひ、ひ、人やったん、や」
「ただのアホや、あいつは」とひなちゃんが吐き捨てるように言った。
「あたしたちも帰ろうか?」と教室を出る。外に出ると12月というのに日差しが暖かかった。暖かな日差しを浴びて、今日もおりいぶ公園でひなちゃんと2人きりになれるなってあたしは思った。
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