Beauty and

文字数 419文字

というわけで、花見には僕の場合、悪い思い出が多いようである。思い出すと胸苦しくなるという程度ならよいほうで、具体的な体験を個々に思い出すと、真っ暗な気分にとっぷり落ちてしまう内容のものが多い。

それほど個人的な体験としてクソマジメに回想しなくとも、だいたいにおいて、花見は寒いものである。花冷えなどという風雅な言葉もあるが、ぶるぶる震えちゃって、夜なんか桜が満開なら枝に降りつもった雪にみえるというものである。

まだ咲き始めの桜の枝に
雪だるまがのっていた
しかし近づいてみれば
胴体がない
それもそのはず
桜に狂った瘋癲が
とおりすがりの女の首を刃に
酔いに任せた酔狂で
枝に飾ったもの
今年の春は寒くて
満開になるのがおそかった
爛漫のころには首は白骨に近づき
花びらにまじった
蛆がポロリポロリ


葉桜のころには骨が白く光を輝かせる瞬間もあり、公園でみかけた女のなかで一番うつくしかった。
明るい陽射しと楽しげな声につままれながら、ゆれて儚い影ばかりが目につく自分に。
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