世界線

文字数 524文字

納品書には

大福5個5,500万円(消費税が含まれます)
原則返品不可
支払期限:2秒後
お支払いが確認できない場合
1,000%の違約金が生じます
3個食べれば50%オフ
※ 5個の内、3個毒入り

目が醒めると部屋が、家中が蝙蝠だらけだった。
彼らの鳴き声が、ぼくを目醒めさせたのだった。多くは、ぼくに警告を発するように飛びまわっていた。
家人の気配のないのを感じながら、中間的な時間(時空なのだろう)を階下に下りていった。(両親も姉もいない。なぜだろう?)
つきまとい、飛びまわる無数の蝙蝠。
大福は、箱の蓋があいていて、空だった。
白雪姫のように美しい女の子の死体が、箱をおいたダイニング・テーブルの下にあり、ぼくは判断に迷っていた。
見たことのない女の子だ。なにが起きているのか、ぼくにはわからない。
蝙蝠が大福を食べるのか、ぼくは知らない。特殊な蝙蝠なら、そんなこともあるのかもしれない。
女の子のかたわらに膝をつき、彼女が身代わりになってしまったのかもしれないともおもった。
「キスするなよ」と、蝙蝠のうちのどれかがいった。いまや嵐のように飛びまわる、息苦しい鳴き声のなかにクッキリときこえた。

迷いをすてられないぼくを、すてるべき時だということが、ぼくにはわかっていた。
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