プラスチック・サージャリィ

文字数 718文字

石畳のスクエア(広場)に、鉛のように重い巨大な球体が落下してきて、45人死んだ。
球体は意思をもつかのように、人に直接あたることを回避したのだが、それらの人々は、体がほどけてしまって、魂が露出してしまったのだった。
魂は、じっさいに目にしてみれば、人類がイメージしてきたような、ふわふわした影のようなものではなくて、性器そのものの姿をしていて、手に負えなかった。
初めは姿をかくし、人の目にふれれば逃げ回って、しだいに性器は巨大化し、ビルを倒すか、包み込むかする、人類にとっての悪夢となった。
神出鬼没となり、地球上のどこにでも出現するのだ。もちろん夢魔としても。

45人は、肉体的に死亡したとみなされ、そのように実名とともに報道されたのだが、魂はそのように姿を現して、荒れ狂ったのだ。
天才過ぎてノーベル賞圏外だった者たちが、アンダーワールドから初めて陽の照りつける世俗へと出てきて、「魂にプラスチック・サージャリィ」を施術することを宣言した。彼らにその権限を与えなければ「世界は滅びないが、人類は滅亡するだろう」と、彼らはプラクティカルな予言をした。
なにしろ人類が魂を目の当たりにしたのは初めてのことであり、また、実害が急速かつ苛烈に展開されていた折も折であるから、権威筋からは怪しげな者とみなされた彼らに、魂への「プラスチック・サージャリィ」を許可するほか、人類に選択肢はなかった。
事を治めたのち、施術にあたった者たちを幽閉もしくは殺害によって除去すればよいと、各国の統治者たちは思惟したのである。
施術には、45人同数の「献体=生体」が必要であったが、各国、各コミュニティの思惑によって、それを強制される者、また、自ら希望する者たちもいて――
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