おれの散歩

文字数 563文字

いっつも暇だから、ふとした瞬間にイライラし、とつぜん怒りの沸点にたっすれば、たとえそれだけは定時のトイレ中であろうと、玄関を荒々しく開け、サンダル片足のこともある忙(せわ)しない散歩である。
この間などは、そんな出かけ方だからズリ落ちたままのズボンが足首に絡まり、顔面から転び、砂に血のまじる散歩であった。
それでも10キロメートルあたりは歩きつづけないと、気がすまぬらしく、火事はまだならないものの、土鍋などは何個も台無しにした。
散歩途中に誰彼かまわず話しかけるので、家につれかえって男女の仲になることも、間々あるが、関係を構築することには最初から興味がなく、日々世間がせまくなる次第だ。
引っ越すにも、カネが惜しいし、そんなことに割く時間があれば最初から苦労しないのだ。おれが生きる場所とは暇なのだ。暇こそが、おれなのだ。

ああ
生きてはいたいが
忌まわしい
ああ
もどりたい
もどりたい
なぜ便所を去ったのか
広すぎる空
だれがここで
糞(ふん)するものぞ

怒り宥(なだ)まりしころ
家に着き
糞は顔をみせぬ
わが糞
わが糞!
どこにいきしものぞ

ああ
家につくころには
おまえは顔をみせぬ
それを知っていながら、、、

鍋を買いつづけるのもバカらしく、買い替えぬ鍋の焦げた味に慣れることもなく、足腰は更に頑健に、衝動連れ去る散歩に日々さからえず。おれは暇に生きている。
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