双生児

文字数 452文字

A4版の封書がとどいた。
ぼくの母はタバコばかり吸い、仕事をしない人だった。ぼくも血を受け継ぎ、収入はすくなく、仕送りするような気概はなかった。
封書を送りに外にでただけ、奇跡だった。いったいどうやって生活できているのが最後まで謎の母だったから。
そう母は死んだのだ。
「たく、なんだよ」と、わずかな着払い金額に怒りがわいたぼくだが、同封された手紙には、
「これがとどいたということは、わたしは死んだんだね」という書き出しがあり、「もう隠さないことにした。あなたの兄さんを封書で送るよ。あなたは双生児だったんだ」で終わっていた。
というか、それが手紙の全文だった。
ぼくは震えた。わなわなと。
膝がくずれそうだった。
「兄がいた」
「封書で送る」という奇妙な文言は、他人には奇怪なジョークとおもえようが、母はそんなことをするガラではない。
同封されていたのは人型の紙風船だった。緑や黄色やピンク、白の紙をつぎはぎしたようなものだ。
封筒から出すと、それは自らふくらみ立ち上がると、素材と色をべつにすれば、身長も同じ、ぼくだった。
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