第4話

文字数 916文字

 翌日の火曜日。
 顔の腫れが引かないまま、僕は教室へ一番乗りをした。
 昨日は勢いで入部したものの、気が重くてしょうがない。
 今さら断ることなど、できようもないようなので、仕方なく続けるほかなかった。
 家族からは腫れあがった左頬を散々突っ込まれたが、真実を伝えられるわけもなく、何でもないと突っぱねた。妹の彩乃は何かを察したらしく、目を細めながら口をへの字に曲げていた。
「よう、昨日はあれから……」声の正体は宮川だった。彼は目ざとく僕の左頬を指し示すと、「どうしたんだよ、その頬っぺた?」
 慌てて隠すが、すでに時遅し。僕は諦めてゲーム部のことを打ち明けた。
「……ふ~ん。羨ましいな風見」
 どこが羨ましいのか訊いてみると……、
「あそこは女子部員しかいなくて、しかも美人ぞろいで有名なんだ。まさにハーレム状態だな!」
「だったら宮川も入部しなよ。僕もそのほうがやり易いし」
 正直に伝えたが、彼の返事はNoであった。
「……それができれば苦労しないよ。実は何度か入部届を申請したことがあるんだ。他の男子もな。でも、誰一人として受け付けてはくれなかった。もちろん僕もな」
「だったらどうして僕が……」
 当然の疑問だったが、彼の返事はあいまいなものだった。
「さあな。もしかしたら僕たちと違って、お前は人畜無害と判断されたからじゃねーの? 知らんけど」
 もしそうだとすると、喜んでいいものやら、悲しんでいいものやら判断がつかない。僕だって女子には興味があるし、かさはらに至っては、ひとめぼれと言っても過言じゃない。かといってモーションをかけるほどの度胸もなく、人畜無害と思われてもしょうがないといえた。
 仮にそうだとして、問題なのは、どうして転校初日にそれが分かったということ。
 かさはらとは初対面だし、ましてや声をかけられるまで一言も口を利いていない。まさか僕が覚えていないだけで、以前どこかで会ったことがあるのだろうか? 
 昨日、パンティーの件で視力が良いことをスカウトの理由に挙げられたが、他に目の良いヤツは大勢いる。果たして本当にそれだけなのだろうか……?
 いずれ真相を聞き出すことにして、早々に話を切り上げると、授業の準備に取り掛かった……。
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