第11話

文字数 1,671文字

 目を覚ますと僕はベッドにいた。見覚えがなかったが、おそらく保健室だと思われる。
 右のこめかみに激痛を感じ、悲痛の声をあげると、白衣を着た女性が声をかけてきた。
「大丈夫? 脳震盪(のうしんとう)を起こしているかもしれないから、一応救急車を呼んでおいたわ。もうすぐ着くでしょうから、このまましばらく休んでいなさい」
 救急車? 僕自身、それほど重症だとは思えないが、もし、何かあってからでは遅いと判断されたのだろう。
 目の前の女性は、きっと保健室の先生に違いない。
 芸能人かと見まがうほど理想的な顔立ち。軽くウェーブのかかった茶髪交じりのワンレンをなびかせながら、妖艶な微笑を浮かべている。三橋院こずえも凌駕するほどの大人の色香が漂っていて、胸元が開いた白衣から、谷間がちらちらと覗き、脳内を刺激する。もし、脳出血でなかったとしても、別の意味でおかしくなりそうだ。
 ここでラッキーなどと思ってはいけない。
 間もなく予想だにしなかったピンチを迎えることになるからだ。
 ワンレンの女教師は僕の顔を覗き込見ながら、小声でこう告げた。
「あら、お盛んだこと。でも、今は安静にしてないとダメよ」
 何のことだがさっぱりわからない。
 だが、冷静になってみると、とんでもないことに気が付いた。
 股間がもっこりと勃起していたのだ。
 制服を脱がされてTシャツとトランクス姿になっていたのが災いして、アソコの形が薄い毛布に浮き出ていて、円錐状のテントを張っている。
 すぐさま体を横にひねったが、時すでに遅し。今の発言によると、しっかり見られたのは確実だった。
 ベッドから起き出るわけにもいかず、ひとり悶々としていると、例のごとくあの男が現れた。
「風見、今回ばかりは同情するよ。お前は悪くない。ただタイミングが悪かっただけだ」
 高田先生は慰めの言葉をかけてきた。
 僕は気分が悪いふりをしながら、毛布を頭まで被る。
 それにしても五日連続で災難に見舞われるとは、ほとほと悪運の下(もと)に生まれたに違いない。
 自分の運命を呪いつつ、僕は毛布にくるまりながら、今日までの出来事を振り返ることにした。

 転校初日の月曜日。
 この日は笠原のパンティーを目撃して、その結果、ゲーム部へと入部させられた。
 パンティーを見せてとジョークを言おうとしたら、グーで殴られたが、不思議と後悔はない。 
 退部させないところを見ると、それほど怒ってはいないようだ。

 翌日の火曜日は、関根海荷との対面を果たした。
 彼女は一年生で、僕がパンティーを盗んだと誤解され、エアガンで撃たれた上に、この教師にしこたま説教を喰らった。

 水曜日は三橋院こずえ。
 彼女は部長でプライドが高く、負けん気は人一倍の印象だった。
 つんのめった際に胸を掴んでしまい、おかげでアソコが腫れあがってドえらい目にあってしまったが、あの感触は決して悪くない。

 昨日の木曜は眼鏡の少女。名前は確か福永杏奈だったっけ?
 どことなく大人しめの印象だったが、あのパンティーは笠原と互角。いや、どっちかと言えば――などと思い出に浸っている場合ではない。

 そして金曜の今日は言わずもがな。
 確認したわけではないが、部室にいたのは林麻利絵だ。
 あのプロポーションには正直参った。
 出るところはきっちりと出ていて、くびれもしっかりとある。モデル並みの顔とスタイルを持ち合わせていた。
 まさか着替えをしているとは思わず、僕としても見たくて見たわけではないが、それでもハイキックをまともに極(き)められて意識を失い、今に至るというわけだ。

 妄想が膨らんでいくうちに、再びアソコも膨らんでいった。
「どうした風見。まだ痛むのか?」
 ベッドに横になったまま、股間を隠すように丸くなっていると、心配した高田先生が、背中をさすりだしてきた。
 同じさすってくれるのならば、ワンレンの方がよかったが、そこまで望むのは贅沢といえた。
 そうこうしているうちに救急車が到着し、僕は近くの総合病院へと搬送されると、CTスキャンと呼ばれるドーナツ型の医療装置で脳内検査を受けた。
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