第10話

文字数 792文字

 一日経った金曜日。
「見上げた根性じゃねえか。今日は僕も連れてってくれよな!」
 半ば予想通りの言葉を発した宮川は、昨日の様子を事細かに質問してきた。やはりパンチラだけしか耳にしていないらしく、股間を蹴られたことまでは伝わっていない。
 メンドクサイと突き返すと、彼は不満たらたらで、自分の席に腰を据えた。
 厄介ごとはこれだけではない。
 クラスメートの女子たちには、既にうわさが広まっているらしく、昨日まであんなに興味津々だったはずが、今は汚物を見るような目で見下している。
 一方の男子どもには逆に関心を持たれたようで、これまでの経緯を尋ねてきた。
 しかし、かたくなに黙秘を続けていると、やがて諦めたらしく、露骨に舌打ちをしながらそれぞれの席に帰っていった。

 あっという間に放課後となり、渋々ゲーム部へと向かった。今日は金曜だから、これですべての部員と対面することとなる。
 今日こそはトラブルにならないよう、気を引き締めて、慎重に行動することを心がける。
 ガラガラガラ。
 ひと呼吸おいてから扉を開けると、目が釘付けとなった。
 そこには一人の女子がいた。
 おそらく林麻利絵で間違いないだろう。これまでの部員とは違うタイプだが、美人に間違いはなく、小麦色に日焼けした健康的な肌に、クリリとした大きな瞳。何よりちょうどいい鼻と唇の形が、整えられた顔立ちをより一層際立たせている。昨日の杏奈とは真逆で、コケティッシュというよりは、キュートといった印象だ。
 だが、目を引いたのはそんなことではない。
 彼女は着替えの途中らしく、両腕にブラウスの袖を通し、ブラジャーとパンティーだけの下着姿だったのである。
「…………」
 {…………}
 あまりの衝撃に目が点になると、麻利絵は氷の表情。
 突如、左足を垂直に振り上げて――、
「チェストー!!!」
 こめかみに衝撃を受けると、一瞬で記憶がぶっつりと途切れた……。
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