第34話

文字数 889文字

 大会は順調に勝ち進んだ。
 我がゲーム部のメンバーは意外と(?)万能らしく、苦戦しながらも負けることはなかった。
 もちろん僕は毎回早々に離脱したが、相手チームも不得手らしく、初歩的なミスを繰り返している。
 今回のルールは、どちらかが全滅するまで続く。つまり、ひとりでも生き残った方のチームがWINNERというわけだ。

 いよいよ決勝の舞台に上がることになった僕たち小村崎高校ゲーム部は、全員緊張の色を隠せないでいる。
 相手は当然のごとく、寺塚率いる沼平西校チーム。
 コイツらだけには負けたくなかった。
「姑息な手段を使ってまで優勝したとしても、あなたたちはそれで満足なのかしら?」
 こずえ先輩の嫌味が飛ぶ。
「何のことだい? 僕たちは正々堂々とプレイしているだけさ」
 お互い笑顔で話してるが、互いの目は笑っていない。
 アナウンスが鳴り響き、それぞれスタンバイに入った。
 観覧席を見ると、宮川の姿も見える。あいつがゲームに興味があるはずないのだから、おそらくゲーム部の女子たちが目当てに違いない。
 気合の表れなのか、下ろしたてと思われるスーツを着込み、髪型も綺麗に整えられていた。
 宮川のことだ。もしかしたら、ナンパでもするつもりなのかもしれない。
 
 いよいよ最後の戦いだ。こんな卑怯者相手に僕たちが負けるはずがない。
 これまで無様な戦いぶりを見せてきたが、せめて最後だけは一矢報いたいものだ。
「いい? これまで通り援護に徹して。わかっているとは思うけど、決して攻撃しようなんて思わないこと! 判った?」
 萌恵に釘を刺され、若干意気消沈になった。言われてみれば確かにそうで、僕はあくまでも補給係に過ぎない。敵を倒すのではなく、弾丸や回復薬を届けるのが任務だ。一応武器も装備しているが、これまで一度足りとも使ったことはない。
 それとて、これまでは開始数分で離脱し、補給すらままならなかった。それどころか囮としても役に立っていない。
 にわか仕込みの僕にできること。
 それはできるだけみんなの邪魔をせず、足を引っ張らないことだ。
 一矢報いるだなんて百年早い。おごり高ぶるのもいい加減にしろよ!
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