第22話

文字数 549文字

 大会まで、あと一週間に迫り、ゲーム部は合宿することとなった。
 合宿先は既に決まっていて、山奥にある『温泉リゾートホテル 珊瑚(さんご)区(く)夢(む)荘(そう)』という名の宿泊施設だそうだ。
 珊瑚がつく割には、海沿いではなく山の中にあるらしい。
 なんでも『ゲームの館』と呼ばれるほど、マニアには定番の宿らしく、我がゲーム部でも恒例になっている……らしい。

 電車とバスを乗り継いで、辿り着いた先は、猛(もう)高山(こうさん)という名の山岳の中腹。
 そこは木々の生い茂った森の中の建物だった。
 珊瑚区夢荘は年季の入った木造建築の旅館で、周りに他の建物は見当たらなかった。
 立ち込める硫黄の匂いが、かろうじて温泉を感じさせるが、とてもゲームの館の雰囲気を得ることはできなかった。
 この旅館に、二泊三日の予約を入れてある。
 僕を含む六人のメンバーは、僕が入部して以来、初めて全員が顔をそろえた。
 ちなみに顧問の高田先生は、季節外れのインフルエンザにかかり、合宿には参加していない。
 ラッキー……などと思ってはいけない。
 男性が僕一人ということは、雑用を一手に担うことになるのだ。
 ――高田のヤツ、ホントは仮病なんじゃないか?
 などと、よこしまな考えが頭をよぎるが、来てしまった以上は覚悟するしかなかった。
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