第19話

文字数 721文字

 木曜日になると、眼鏡っ娘の福永杏奈が教官として僕にレッスンを施すことになった。
 あんなことがあったとはいえ、ゲーム部の中では、一番大人しそうで、よく言えば控えめ、悪く言うと陰キャラという印象だった。
「せ、先週はごめんなさい。わたし、ビビりだから、つい……」
 頬を赤く染めて、何ともいじらしい。眼鏡の奥の大きな瞳が潤んでいるのもプラスポイント。もしかしたらイケるかもしれいないという予感がした――――――何が?
「いや、僕の方こそもっと気を遣うべきだった」
 あの場合、僕に罪はないはずだが、それでも、もっと他にやりようがあったはず。例えばゲームが終わるのを待つとか、ゲームが終わるのを待つとか、ゲームが……。
「そういえば、ボンバーマンはもう慣れました? わたし、あまり得意じゃないの」
 そう言いながらセッティングを終えると、杏奈は僕にコントローラーを渡した。一瞬だけ指先が触れ合うと、彼女の顔はさらに赤く染まり、顔をモニターに向ける。
「……自分で言うのもアレだけど、そこそこ上手くなったと思う。もしかしたら一勝ぐらいできるかもな」
 ゲーマー相手に少々イキり過ぎたかもしれないが、あまり得意ではないと言っていたし、僕だってこの二日間の自主練で、そこそこスキルが上がったという自負もあった。一勝どころか勝ち越すくらいの気構えで挑むことにした。

 YOU LOSE!
 モニターには、百回連続でこの文字が躍った。もちろんWINは一度も表示されていない。
「……やっぱり調子悪いみたい。ごめんなさいね」
 嫌味かよ!
 これは後から聞いた話だが、彼女はゲーム部の中でも一番のテクニシャン(もちろんエロい意味ではない)らしい。人は見かけによらないものだと痛感した。
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